[Pickup SMITH 制作室](以下[P])
次ぎに、フォルムも全く新しいD-インサイトがシリーズに加わりました。
これは後ろ重心ではなく水平でしたっけ?
[平本]
いや、やや後ろ重心になってます。
完全に違うのはピラピラとしたヒラ打ちを狙ってるんです。
これまでのものは、もちろんヒラも打つんですが、慣性スライド重視です。
これはパタンパタンと極端にヒラを打たせるために、
ボディも背もフラットになってるんです。
[P]
あぁホントだ。
[平本]
D-コンタクトの極端なへの字背中もそうですが、
D-インサイトの極端なフラットさもまたルアーの個性だと思うんです。
[P]
釣れるという機能と、ルアーとしての個性を両方追求されているんですね。
そもそもこのピラピラアクションが欲しいと思ったきっかけは何でしょうか?
[平本]
それは、仕事柄取材などで釣りに行くわけですが、
ここはスプーンがいいよな、とか、スピナーだよな、とか、
もっとヒラ打って滞留時間を長くできれば釣れるよな、ってシーンがあるんです。
でも、手札が無いわけなんですよ、Dシリーズの中に。
ルアーローテーションの中に欲しかった、というのがきっかけなんです。
[P]
Dシリーズの取材でスプーンを持ち出すワケにはいきませんものね(笑)
[平本]
でも、こっちの方がルアーとしては王道なんですよ。ヒラ打ち系ですから。
慣性スライドは、普通では気がつかない裏技(笑)
[P]
D-コンタクトの方が変化球なんですね。
[平本]
D-コンタクトは、後ろから忍び寄ってブスっと刺す必殺仕事人。
D-インサイトは真正面から刺す正統派。
…例えが悪いよね(笑)
[P]
(笑)
[平本]
それと、このD-インサイトからルアーの作り込みが変わってきています。
[P]
はい。
[平本]
D-コンタクトが誕生した生産工場というのは技術があまり進んでなかった。
この、ウロコ模様を見てもらうと分かるのですが、
この刻みは手描きなのでスケールが一定では無いんです。
さらにウロコの刻みに対して、ホログラムの転写が部分的に深くまで入っていないんですね。
[P]
確かに。どこかハンドメイドっぽいですね。
タバコの銀紙を貼った様な。
[平本]
D-コンタクト72が出る頃には生産技術も上がってきたんですが、
このシリーズは変更せず古い転写のままで作っています。
[P]
きれいな転写が使える様になったのにですか?
[平本]
それは、D-コンタクトがこれまでのカタチで支持を受けているのだから変えないんです。
この仕上げは不規則に光るゆえ、相応のメリットがありますからね。
[P]
なるほど。
[平本]
D-インサイトの登場時期は、スケールの均一さやホログラムの転写技術が
かなり進んでいてそれを採用しました。
目玉も、単純なドームアイからD-インサイト用に特別なものを作りました。
[P]
D-コンタクトとの差別化…ルアーとしての個性ですね。
[平本]
リップもD-コンタクトと比べたら薄くなってます。
その分落ちる強度は、そう、ここ、見ると分かると思うんだけど…
[P]
あ、つけ根のところが盛り上がってますね。
[平本]
よくある方法は後ろの方を厚くして補強するのですが、
これは前の方に厚みを持たせています。
こっちの方が後ろを厚くするより剥離しにくいと思ってやってます。
[P]
ここは言われなければ気付きませんでした。
[平本]
大したことでは無いんだけど、特長のひとつなんです(笑)
(つづく)