Smith DシリーズDの系譜〜
Smith DシリーズDの系譜〜

[Pickup SMITH 制作室](以下[P])
D-コンタクトが市場に出た時の、最初の反応と言うのは目論見通りでしたか?

[平本]
うん。僕はそこそこいけるんじゃ無いかと思っていた。
だけど、スミスで開発許可が降りた当時、社員のみんなが思っていたのは
「一部のマニアック層には受け入れられるかもしれないよね」って程度(笑)

[P]
あぁそれぐらいの…とても小さな期待(笑)

[平本]
いやもう(笑)そんなもんだと思いますよ。
その当時はね、某社にSというミノーがあって、これがデッドスローでもプリプリプリプリ良く泳ぐんです。
それで、これぞミノーだ。こういうのが良いし、こういうので無いと売れないんだ。と言われていたんですね。

[P]
ありましたね。

[平本]
そんな風潮の時代に、このルアーを提案したら「それはちゃんと動くの?」って聞かれ、
「デッドスローでは動かないけど、ロッドアクションでやれば動かせるんだ」と答えると、
「それは…ダメなんじゃないかな?」と言われ…(笑)

[P]
あの頃では当然そう判断されますね。

Smith DシリーズDの系譜〜 [平本]
それで、今はダメかも知れないけれど、いつかは喜ばれるはずだ!と。
自分の竿でアクションさせたルアーに魚が来る喜び、
ルアーを動かしたのは俺だ!釣ったのは俺だ!感があると。自己満足こそ釣りの妙味だと。
そんな事をしつこく言っていたら「うーん、そんじゃやってみたら」って(笑)

[P]
無理矢理説き伏せちゃったわけですね(笑)
しかし良い意味で会社の期待を裏切って人気ルアーになりました。
そして、次に発売することになったのがD-コンタクト63でした。
これは、なぜ大きなサイズを作ることになったのでしょう?

[平本]
あーそれ(笑)
あのね、フィッシングショーでD-コンタクトを展示していたら、
「使ってますよこれ。次は絶対小さいサイズが出るんですよね。」って声が多かったの。
まぁ普通、市場的にはそうなんですよね。小さいサイズはウケルんですよ。
だけどもね、例えばビートルズのコード進行でね、きっと次はこう行くよな、
って時にリスナーを裏切るじゃない(笑)

[P]
え?いきなりのビートルズですか(笑)

[平本]
D-コンタクトの次のサイズは小さいの…という市場の期待を裏切ったんですよ。
そこに「ん?」という驚きが生まれますからね。
「まさか63だなんて。次こそは小さいサイズ出ますよね」って、
さらに期待値が大きくなって…

[P]
戦略的かと思いきや、かなり気分的なんですね(笑)

[平本]
そして、そんな期待の声には目もくれないで3つ目にはD-ダイレクトを作ったんですよ(笑)
で、その次が本流サクラマス用のD-コンタクト85の発表になりました。
どんどん大きくなっちゃう(笑)

Smith DシリーズDの系譜〜 [P]
冗談みたいです(笑)
でも、D-コンタクト、63、ダイレクトまでは、
40cmクラスの大ヤマメを狙っている方からすると、まあ納得できるサイズ展開だと思うのですが、なぜその次ぎにサクラマスへ行ったのでしょう?

[平本]
あ、それね、
世の中の常識ってどうしてこうも固定的なのかしら?
というアンチテーゼみたいなものなの。

[P]
アンチテーゼですか。

[平本]
サクラマスの世界と言うのは定番ルアーがあって、それはフローティングで、とても強いんです。
そしてシンキングミノーはほとんど使わないのにスプーンは使ってる。
上と下はあるのに、中間を狙うルアーが無いんです。
自分としては、レンジコントロールができる
ヘビーシンキングミノーが渓流では有効だと解っているから、
サクラマスの世界でそれを全くやってないのがどうにも歯がゆくてですね…

[P]
そこに一矢報いたいと。

[平本]
やってみたかったんです(笑)
プロトを作ってみて釣れるだろうとは思っていたんですが、
実際に釣ってみないと事実として伝えられない。
それでテストに出てやってみたら5本も釣れてしまった(笑)

[P]
おぉすごい。
ところでこの85にはクレーンスイベルが採用されてますね。
フックのつけ根がクルクル回ると言うのには、何かヒントがあったのでしょうか?
フッキングした後にバレにくいとか。

[平本]
うん、まぁそれも多少はあると思うんですけど、
それよりも魚がかかる瞬間に、フックが一番いい位置に向いてくれるかなと。
そんな期待を込めてはいるんですが。
ぶっちゃけ言ってしまうと、この製品にお金を払ってくれる人が
「おぉなるほどな」と思ってくれるようなひと工夫が必要だろうと。

[P]
なるほど(笑)
作り手のアイデアに使い手が「なるほど」と感じ入ってくれる、
それはとても大切なことですね。
(つづく)

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