冨安 隆徳

愛知県豊川市在住。ルアーで四季折々の魚を求め釣り歩く、アウトドアが大好きなサラリーマン。

主なターゲットは、九頭龍川の桜鱒、天竜川水系遠山川のアマゴ・イワナ等。


《 2018 飛騨川釣行記 》


【厳しかった夏】

 夏はいつも本流アマゴを狙うのだが、今年は酷暑と度重なる増水で釣行回数が極端に減った。この夏、飛騨に現れた線状降水帯と呼ばれる雨雲は、局地的な豪雨でこの地域に大きな災害をもたらした。濁流と化した川の水位はいつまでも下がらず、あの雨雲がまたどこで発生するのだろう?と考えると釣りをする気分にはなれなかった。そのため今季の本流釣行は、この水害の前後に2日程竿を出す程度で、今年は夏の本流アマゴの手掛かりすら得られず終ってしまいそうな状況である。まだ諦めてはいませんが・・・。


【仲間の存在】

 今季のアマゴを狙った釣行を開始したのは6月中旬。まずは本流域で鮎を飽食して大きくなっているであろう本流アマゴを狙った。昨年から狙い始めたのだが、広大な本流の流れの中から一尾を探し当てようというのだから、自分で言うのも何だが気の遠くなりそうな釣りである。サクラマスも同じ本流釣りなのだが、一定の時期にまとまって遡上してくる魚とは考えにくい。またこの魚を狙っている釣り人の数も極端に少ないために、かつてはこの釣りの情報を入手することも困難だった。しかしSNSと言う文明の利器は、同じ魚を狙う仲間との出会わせてく、去年から親しくしてもらっている。


【Dコンタクト85】

 少ない本流釣行ではあったが、約束したわけでもなく偶然釣り場で釣友と再会し、今年も一緒に釣りをすることができた。彼は私より一回り以上も若いと思われるが、この川で鍛えられた本流釣りのスタイルは参考になることも多く、なにより情熱溢れる釣り人との釣行は、いい刺激を私に与えてくれる。
 彼が得意としているのが、D−コンタクト。今年は私の目の前で魚を掛けてみせてくれた。
 その模様はこうだった。まずは私が水深のある明確な芯をチェリーブラッドDEEP70で探った。その時岩の上から眺めていた釣友が声をあげた。「追ってる!」私からは見えなかった魚の姿を彼は確認していた。その後トレースラインを変えて何度か流したが、私のルアーを魚が追うことはなく、選手交代。

 彼はいきなりD-コンタクト85を、流芯ではなく遥か下流に打ち込み、それほど沈めることなくリトリ−ブを始めた。ボトムを取ることなく泳がせ始めた彼のD−コンに、すぐに反応があった。ロッドが曲がり、合わせを入れながらやりとりを始めて間もなく、彼のロッドのテンションが抜けた。魚に首を振られてルアーが外れたようだった。しかし真夏の日中に流芯ではなく流れのぼやけて開けた淵で、いきなり尺上の本流アマゴを、それもD−コンの85mmでバイトを取ってみせた。恐らく彼は、私のアプローチに対する魚の反応と、追ってきた魚の位置を考え、中層のレンジキープのために敢えてD−コン85を使ったと思われる。

 ヒラ打ち系の動きと水押しで先行者とは異なるアプローチで攻めるのは理解できるのだが、いきなり開きにD−コンを打ち込み、沈めることなくリトリーブしていくアプローチは私の選択肢にはなかった。また本流アマゴに85mmのD−コンを使うのはさらに驚きで、尋ねると「いつもの選択だ!」と言う。「う〜ん!」私は驚きを隠しきれなかった。本流アマゴの攻略に躊躇なくこのサイズを使っていく、発想の柔軟さとスタイルが新鮮で、今年も非常に参考になった。


【8月 ランドロック調査】

 6月中旬の釣友との本流釣行後、本流アマゴを狙っての釣行は悪天候が重なり、行く機会を失っていた。現地からの情報では水温は20度まで上昇したようで、これでは本流や里川釣りは厳しいと判断したためだった。そして次に釣り場に入ったのは盆明けの週末だった。ダム遡上のランドロックを狙うには少し早いのかもしれないが、度重なる増水で流れがどのように変わったのか早く確認したかった。早速狙いのポイントに入り釣りを始めると、やはり豪雨の影響による釣り場の変化に驚かされた。

 夏の上流域。遊んでくれるのはイワナが中心であった。上流部では珍しいアマゴが相手をしてくれたのだが、期待の遡上鱒の姿を確認することはきなかった。やはり少し早かったようで、午前中に上流部から里川エリアに戻ることにした。








【里川】

 8月も中旬を過ぎたのだが、引き続き酷暑の続く日中は、釣りをしようという気分にならなかった。この里川での狙い処は、落ち込みの絡む淵。この時期大型の個体は、居心地のいい淵のボトム附近に潜んでいることが多く、このディープエリアをジェイドMD、DD−パニッシュ65SP、チェリーブラッドDEEP70で狙い撃ちしていく。ロッドはインターボロンXX IBXX-60MT。遡上魚狙いには充分なバットパワーを備え、ミノーイングはもちろん、DEEPのハイパートゥイッチングも難なくこなす適度な張りのあるバランスのとれたロッド。本流以外のアマゴ狙いには、ほぼこのロッドを持ち込んでいる。
 最初の淵ではまだ日が高かったのか?全く反応は得られず、オーバーハングした木々の枝が垂れ下がった、水深のある流れに魚たちが着いていた。ウェイビー50SやジェイドMDSを上流に沈め、手前の早い流れにラインを乗せて木々の下に流し込んでいく。すると木陰に潜んでいた25cmほどのアマゴがルアーを追うのだが、追い切れず喰わせるまでには至らなかった。ここにも狙いの秋鱒はいなかった。


【日没直前】

 いよいよ5時半近くになり、西の空は徐々に赤く染まりはじめ日没が近くなってきた。今日最後のポイントは、大岩と岩盤、落ち込みが絡む淵。ここでは最初からDDパニッシュ65SPで広く探りながら魚の反応を確認し、反応が無ければチェリーブラッドDEEP70を投入していく。
 落差のある流れが下流の岩盤と沖に沈んだ岩に当たり、流れに変化が生まれている。対岸の岩の手前の還流帯にルアーを打ち込み、流れの芯を横切らせるイメージで徐々にその弧を大きく描いてポイントを探っていく。DD−パニッシュ65SPは表層か1m位までを引くMDのイメージで使っている。激しくトゥイッチを加えてルアーを動かし、時に喰わせの間を与えるストップ&ゴー。これがこの時期の秋鱒には効果的だと私は考えており、これまでも結果を出してきた。この日DD−パニッシュ65SPで反応が無いので、もう少し沈めようとチェリーブラッドDEEP70を結んだ。
 数投めだった。ダウンクロスで潜らせたチェリーブラッドDEEP70が流れを切り、テンションが緩んだ瞬間に少し誘いを入れると、下から突き上げるように勢いよく尺クラスのアマゴがルアーを襲った。ルアーを咥えて反転すると、流れに戻ろうと激しく抵抗した。この時残念ながらルアーが外れ、魚は流れの中に消え、その後再び口を使う事はなかった。「やはり居たか。」増水の影響で流れは変わったが、魚が足を止めるポイントが変わってはいなかった。手にすることは出来なかったが、今年もこの淵の魚を確認でき、少し安心してすぐ上の流れに向った。


【トロ瀬】

 いよいよ今日最後の流れ。ここはいつも夕方にいい魚が着く瀬。2つの落ち込みが岩盤の前の深瀬で合流している。落ち込む寸前に大岩に当たる淀みと、その下流のヒラキに良型が着いている。日中はブッシュの足元や木陰に潜んでいるのだろう。夕マズメで警戒心が薄れ、夕方になって流れに出てくると考えている。
 パニッシュ55Fかウェイビー50Sが、この流れの規模や水深からちょうどいい。先ずは水深のある岩盤前のトロ瀬にウェイビー50Sを流していく。川底附近をゆっくり流していくと、岩盤の陰に隠れていたアマゴが追ってきたが、喰わせることはできなかった。次に落ち込みを狙おうとパニシュ55Fヒメカラーで、落ち込みの上流にロングキャスト。流れに任せてドリフトさせて水泡の中に落下させた。馴染んだところでラインを張って水を掴ませ、少しドリフトさせた後にアクションを加えると、良型のアマゴが喰ってきた。「ここにも居たね。」汗ばむ夕暮れの沢で思い通りに渓魚からの反応が得られ、楽しい時間を過していたのだが、すぐに冷や水を浴びせられるような現実が待っていた。
 ゆっくり合わせを入れながら魚の動きを確認すると、「ふっ」とテンションが抜けた。「あれ?切れた!」PEラインがまさかの高切れ。それも残り少なくなったお気に入りのヒメカラー。渓流釣りでは岩の上にラインが乗ったり、木々に絡んだりしてラインに傷が入ることが多い。しかしこんな時に切れなくても・・・
 時は既に6時近くになり、薄暗いこの渓で老眼鏡もなしにラインシステムを組む気力は残っておらず、ここで夕マズメの釣りは終了することした。
 いつもと変わらず渓魚たちが迎えてくくれたのは嬉しかったが、渇水の影響なのか?日暮近くになって姿を見せてくれたが、総じてあまり活性は高くはなかった。


【これから】

 いよいよ酷暑も峠を越え、これから徐々に秋めいてくるだろう。里川エリアの稲穂はまだ青々しているものの赤とんぼが飛び交い、山里には少しずつ秋の足音が聞こえ始めていた。水の中でも同様だろう。静かな淵や穏やかな流れの中で木々や岩盤に寄り添い、渓魚たちは恋の季節を迎える準備を進めているに違いない。
 今回秋鱒と呼べる魚の気配は感じられなかったが、酷暑や増水といった厳しい今年の自然環境の中でも魚たちは姿を見せてくれた。秋も深まってくれば、いよいよ大型の個体も流れに再び姿を見せてくれるはずだ。ほんの少しでいいから私たちに時間をもらえないだろうか?今年も出会いたい。いよいよ待ちに待ったシーズンがやってくる。そんな気持ちにさせられた、お盆明けの渓であった。
 帰宅後、ロッドを確認するとやはりトップガイドのSICに欠けが発生していた。この欠けがレインブレイクの原因だったようだ。みなさん高切れが連発するようであれば、念のためガイドのチェックをしてみてはいかがですか。まさかの大物を掛けてラインブレイクにならないためにも、普段から心掛けたいメンテナンスですね。


● マイタックル

◇ロッド スミス インターボロンXX IBXX-60MT IBXX-66MT
マジカルトラウトULフラシュ MT-S56ULM/3
◇リール シマノ ステラ C2500HGS  C3000
◇ライン  よつあみ G-Soul WX-8 0.6〜0.8号
DUEL HARDCORE X-FOUR PE 0.6号
◇リーダー フロロカーボン 1.5〜2.5号
◇ルアー スミス  パニッシュ70F 70SP
DDパニッシュ65 65SP トラウティンウェイビー50S 65S
チェリーブラッドDEEP70 MD82S MD82 MD75 MD70
ジェイドMD-F MD-SP MD-S MD-Sシェル
ボトムノックスイマーU ライト 35 
バルサハンドメイドミノー 50〜65mm F・SP・S
D−コンセプト48MD  D−コンタクト50・63 D−コンパクト48 D−インサイト44・53  D-ダイレクト55
F−セレクト 51 64
バック&フォース 7g  バック&フォース ダイヤ 4・5g
ドロップダイヤ 5.5g  ピュア5g日本アワビ
◇スナップ スミス SP♯0



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