冨安 隆徳

愛知県豊川市在住。ルアーで四季折々の魚を求め釣り歩く、アウトドアが大好きなサラリーマン。

主なターゲットは、九頭龍川の桜鱒、天竜川水系遠山川のアマゴ・イワナ等。


《 2015 飛騨川釣行記(その2) 》


■ 遡上鱒の残像

 何度この斜面を往復しただろうか。この1年、昨年の最終釣行で出会った遡上鱒の残像が私の脳裏から離れることは無かった。

 このエリアには、本流とダムの2種類の遡上鱒がいる。私はこれまでダム遡上の秋鱒を掛けたことはなかった。あの獣のような猛々しい姿に魅了され、何度もあの渓に通ったものの、残念ながらその手がかりさえ掴むことなく禁漁を迎えることとなった。

 今回は遡上鱒について報告したかったのだが、それは来シーズンに持ち越すこととし、夏から禁漁までを振り返えることにした。


■ 厳しかった8月

 今年の夏は支流の調査に精をだしていたため、本格的に通い始めたのは7月末から。猛暑が峠を越え、過ごしやすくなった8月中盤からだった。

 最初の画像は、猛暑と減水傾向にある中での1尾。夕暮れに日差しが和らいだ緩い流れから出てきたアマゴである。パニッシュ55Fヒメマスカラーでのヒット。少し早目に産卵を意識し始めた雄のアマゴではないかと思われる。

 飛騨川では8月後半から川には網が仕掛けられ、渓魚たちはナーバスになっていく。一時的にプレッシャーがピークを迎え、渇水と高水温が重なることで極端に口を使わなくなる。網漁の人々が川から上がり、静けさを取り戻した流れの中に居たのがこのアマゴ。


 渇水や人的プレッシャーなどの外的要因や産卵を控えた魚は、素直にルアーに反応することは少なくなる。流すだけでは反応が薄いと感じたときは、ぜひ送り込むなど積極的に沈めることをお勧めしたい。

 レンジを換え、鼻先に送り込んだルアーを激しく動かすことで口を使わせる。この喰い渋るタフコンディションの中、ウェイビー50Sのハイパートゥイッチングに反応してきたアマゴ。厳しい中での一尾は大きさ以上の歓びを与えてくれた。

 今シーズン大型の魚の気配を最も感じたのは、盆明けから網漁が本格化するまでだった。「流れ」「水深」「日陰」。この3つの要素を満たした場所で、本流遡上系の魚を確認できた。警戒心の強い魚ゆえ、中途半端にルアーを追わせたために喰わせられない。こんな悔しい思いを何度も体験させられた。居場所を予測し、レンジを合わせ、どのコースをどんなアクションで通すか? 大型鱒への課題は尽きることはなかった。


■ 恋の季節 9月

 9月も終盤に入り早朝随分冷え込むようになり、日中との温度差はますます激しく感じられた。アマゴは8月頃から色の入った魚を目にするようになったが、里川のイワナたちはそれほどでもない。まだかわいらしい容姿のこのイワナはパニッシュ55Fの黒金に反応した里のイワナ。


 アマゴは夏を過ぎるころから体全体が飴色や黒に衣替えし、秋の深まりとともに体側が紅葉のように赤く染まっていくものや、オレンジ色の朱点が浮き上がるものなど個体によって様々である。



■ 最後の週末

 ダム遡上を狙いつつ里川エリアの本支流を行き来していたこの釣りも、最後の週末となった。岐阜北部の川は既に禁漁を迎え、この川にも流れてきている。ベースとなる道の駅は未明から釣り人らしき車で溢れ、この日も早朝5時でも有望ポイントには先行者の姿があった。仕方なく予定の本命ポイントは諦め、水深の浅い流れを川通しで探ることにした。後で考えればこれが良かった。

 私の入ったエリアは9月末だがこの時期にしては充分過ぎるほどの流れがあった。水深は深くなく流れがあるうえに河原はボサに覆われていた。恐らくこのボサと浅い水深を嫌い、竿抜けになっていたようだ。

 最初の魚は、流れが当たる岩盤のエグレと沈み石が作り出す流れのヨレについていた。パニッシュ55Fを上流から流すと、岸際に潜んで居た黒いアマゴが素直に口を使ってくれた。

 尺には届かないが、黒いボディーにオレンジ色の朱点が眩しい秋色アマゴ。薄暗い緩い流れの中に潜み、妖艶な姿でパートナーを探していたようだ。


■ 美形アマゴ

 上流には大きな岩が流れの中央に鎮座し、流れを二分していた。上流から落ち込みは真っすぐ岩に当たり、手前には深みがあった。

 手前の分流をチェックしたのち、落ち込みの瀬の白泡にパニッシュ55Fをバックハンドで打ち込み、大岩の前で手前にターンをさせる。すると期待通り岩の足元から大型のアマゴが姿を見せてくれた。一目で尺上であると解るグラマラスなボディーの魚は、そのまま上流に向けて走った。今回新しいリールのドラグの設定に迷いがあり、少し緩めに設定していた。そのためこの魚の力強い走りを止めることができず、随分糸をだされてしまった。あまりにドラグが出るため、スプールを少し押えながらラインをコントロールし、魚が頭を下流に向けた瞬間、強引に手前に寄せてランディング。頭が尖った見事な魚体で、一目で雄だと解る。黒いボディーに白い口が印象的な魚で、今年一番の美形アマゴであった。

 黒々とした姿の魚は静かな淵や深い森の中で出会うことが多く、体の色が周囲の風景と同化し一種の保護色のように見える。秋が深まるにつれて雄は鼻が落ち始め、歯が鋭く頭が尖ってくる。この魚のように赤黒い体と白い口のコントラストは、大型の魚ほど鮮やかだ。




■ 思わぬところから

 美形の秋色アマゴに出会えたことで少し余裕もでてきた。「流れ」「水深」「日蔭」というキーワードで秋の釣りを展開してきたが、どうやら今日の魚たちは、秋よりも夏を思わせるポイントからの反応が多いように感じていた。

 ボサに覆われた河原を歩きながら、勢いよく流れる早瀬を横切ろうとしたとき、対岸のボサと大岩との水深のある早い流れが気になった。試にパニッシュ55Fをボサ際にキャストし大岩の前の鏡を横切らせてみた。すると流れの中から黒い何かがルアーを襲った。

 「え!」まさかこの時期に白泡の流れの中で喰うとは考えていなかった。少し慌てたがその後は冷静に激しい流れを一旦下らせ、下のプールでゆっくりランディング。秋らしい綺麗な色の魚。


 期待のポイントには入れなかったが、そのお蔭で素晴らしい魚達に出会えることができた。プレッシャーの高い禁漁間際の週末に、これほどの楽しい釣りができたことに感謝し、この日は少し早めに岐路に着いた。


■ シーズンを振り返って

 梅雨時は支流のポイント開拓。終盤はダム遡上を狙って挑んだ今シ−ズン。タイミングが合わなかったのか、攻め方が合っていなかったのか?いずれも残念ながら良型との出会いはなかった。

 一方本流遡上は何度か出会いのチャンスはあったものの、こちらも折角のチャンスを生かすことはできなかった。振り返ると攻め方に迷いがあったような気がする。

 狙いの大型遡上鱒に出会うことができなかった今シーズンだったが、何事もなくシーズンを終えたことに満足している。最後の釣行でコンディションのいい魚との出会いがあり、ダム遡上というテーマは来季に持ち越しとなったが、この反省を生かし、記憶に残る一尾との出会いを求め渓に通い続けたいと思う。


● マイタックル

◇ロッド スミス インターボロン IBXX−60MT 53MTH
 マジカルトラウト MT-S56ULM/3
◇リール シマノ ステラC2500HGS ツインパワーC2000HGS
◇ルアー スミス  ウェイビー 50S 65S
 パニッシュ55F 55SP ジェイドMD DDパニッシュ65F 85SP
 D−コンタクト50 D−インサイト44 D−コンパクト
 バック&フォース 4g 5g  ピュア5g日本アワビ
 チェリーブラッド MD70 DEEP70
◇ライン  ヨツアミ PE G-soul WX8 0.6号
◇リーダー フロロカーボン 6LB・8LB
◇スナップ スミス クロスロックスナップ #1
◇フック  シュアーフック ヤマメ #1G
◇ネット  スミス チェリーネット ヤマメ



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