『1/3 水郷各所釣行』


  池島 竜一(SMITH STAFF、NBC)



 もう10年以上昔の話になるが、まだ冬のバス釣りが一般的でなかった頃の水郷。一部の場所を除いては、週末でさえも釣り場は閑散としており他のアングラーとのバッティングなんてほとんどなかった。
 私自身も実にノンビリと構えていて、10時頃から釣りを始めるなんてことも多かったが、それでも充分な釣果を出せていた。そして当時は水温が上がった時間帯から喰いが良くなるとも言われていた。確かにそれは今でも決して間違いではない。

 だが現在は当時と状況が大きく異なる。メディアによって容赦なく公にされた場所には所狭しと大勢のアングラーが押しかけるようになった。かつてないプレッシャーを受けたことにより、魚の個体数や越冬場所への着き具合、さらには行動パターンさえも変化してきている。

 こうした現状の下でも着実な釣果を残していくためには、プレッシャーや魚の行動も加味した上で最善策を練り、試していくしかない。例えば、水郷の冬バスは大きく以下のタイプに分けられる。

  1. 目の前にルアーを落とせばイージーに釣れる魚
  2. 水温が上昇してから行動を始める魚
  3. 夕マヅメにフィーディング活動する魚
  4. ロングシェイク&フォーミュラ効果でようやく口を使う魚

1は初冬に多いタイプで、先にルアーを入れた者勝ちとなる。よってポイントに一番に入る努力が要求される。先行者が居た場合、釣り方にもよるが先に抜かれてしまう可能性が高い。

2はタイミング命。タイミングが早いと魚が口を使わないし、遅すぎると先行者に抜かれてしまう可能性がある。フィールドの人出を見ながら臨機応変に狙っていくしかない。

3はプレッシャーの高まりと共に近年増加傾向にある。狙い場所と釣り方にはややクセがある。

4は難易度の高い魚だが、先行者にも釣られず残っている可能性が高いため、私が最もアテにする魚だ。

 時期や着き場のタイプにより1〜4それぞれの魚の存在比率は異なるが、朝から夕方まで釣りをするとして、どの魚を真っ先に狙い、どの魚に対して時間を掛け、どの魚でラストチャンスに賭けるのかはおおよそ御理解いただけることと思う。

 あくまで一例だが、これくらいの戦略性は持ち合わせていないとなかなかコンスタントな結果を出すのは難しい時代になってきている。週末の水郷の冬のオカッパリは、今や日本有数のハイプレッシャーな状況下にあるといっても過言ではない。


12月29日 茨城県某川

 水郷の冬バス釣りは年末年始頃を境に厳寒期に突入し、難易度が格段にアップする。水温も5度台にまで下がってきた。こうなってくると小場所の方が確実性が高いのだが、この日はまだ可能性があると見て、中規模河川である茨城県某川にやってきた。12月10日にはまずまずの結果が出せていたことから、良い印象を持ったままのポジティブな釣りで2011年の釣り納めを飾りたいところだ。

 この日は2箇所のテトラ帯に全ての時間を費やした。1箇所目のテトラ帯ではダウンショットリグでじっくりと探ったにも関わらずノーバイトで終わり、コンディションの厳しさを痛感することとなった。

 続く2箇所目のテトラ帯。ここは攻めるアングラーも比較的多く、プレッシャーも高い場所といえる。この日もかなり多くのアングラーと場所をシェアしつつ釣りをすることとなった。但し、自分にはスパイニーシャッドのダウンショットリグ、スパイニーアックスのワッキーリグを駆使すれば、先行者が反応させられなかったバスも喰わせることが出来るという自信がある。最近あまり使う人がいないフィッシュフォーミュラも私の冬の釣りにおける大きな武器だ。
 ただでさえバイトの遠い冬の釣り、さらに先行者に撃たれた後という悪状況下においても心折れることなく釣りを遂行するには自信のあるタックル・釣り方が絶対に必要だ。

 この日は水の透明度が上がっていたことから、スパイニーアックスのライトシナモン/グリーンフレークをチョイス。これをワッキーリグにセットして落としていき、テトラの隙間から33cmを抜くことが出来た。その後、やはり同じ色のスパイニーシャッドのダウンショットリグにもバイトがあったものの、それは魚に離されてしまった。

 この日は2バイト1フィッシュ。想像以上に状況が厳しかったとはいえ、釣り納めにおいてノーフィッシュを回避できたのは幸いだったかもしれない。


1月3日 外浪逆浦、北利根川

 2012年の初釣り。ちなみに私は三賀日のうちにその年の初バスを必ず釣ろうと心に決めている。今年は1/3に初釣りに行くことが出来た。

 水郷の冬は絶対的にボートよりもオカッパリの方が釣れると思っているのだが、冒頭に記したようにオカッパリでは他のアングラーとのバッティングが激しく、(対:魚)よりも(対:人)を重視した戦略をとらねばならないケースが増えてきている。だからこの冬はバスボートを駆り、(対:魚)に主眼を置いてバスを追いかけたい気持ちがあった。晩秋以降にバスボートを走らせては真冬の釣りに使えそうな場所を探し回っていたのはそのためだ。

 そしてこの日、自分は3箇所のポイントを事前に選んでいた。それ以外の場所は眼中に無い。自分が選んだ場所で結果が出せるかどうか、それが全て。

 朝8:00、V6マリンさんから愛艇を出した。さすがにこの時期の駐艇場にシーズン中の喧騒はなかった。目指すは外浪逆浦にある、とあるドック先端の石積である。ここは晩秋に魚の反応を確認しており、ミオ筋の入り方やブレイクの絡み方も実に理想的な場所で、この日の大本命場所と目していた場所でもある。

 だが冬の魚はそう簡単に釣れはしない。魚は絶対に居るとの確信から、しつこく3往復も攻め続けたが反応が返ってこない。一旦時間を置こうと思い次のスポットへと移動する。

 次のスポットはあえて明確に記すのを避けさせていただくが、とある沈みモノがある場所である。その沈みモノがいいのに加えて、西風がプロテクトできる風裏にあり底荒れしにくいのがいい。ここではスパイニーシャッドのダウンショットリグで丹念に探っていく。

 この時期にバイトが遠いのは当たり前、不意を突いて訪れる微かなバイトをいかに逃さず対処できるかが大事なのだが、唐突に訪れたバイトはこの時期にしては珍しく、力強くティップを引き込んでいく明確なものだった。フッキング直後も一気に走り回るスピード感ある魚。水温5度という状況下においてこんな元気な魚がいるのかと驚いた。

 その引きの強さに手こずったが最後は無事にネットイン。今年の初バスはコンディションの良い39cmだった。

 その後、同スポットでは反応がなく、3箇所目のエリアに移動。向かった先はあまりにもメジャーだが北利根川出口のテトラ帯。この日、他のアングラーとのバッティングがあったのはこの場所だけだった。

 なるべくプレッシャーが掛かっていない場所をと思い、やや沖合いに沈んでいる隠れテトラを偏光グラスで探しながら撃っていったがノーバイト。最後に、本命場所でもあった外浪逆浦ドック石積を再度チェックしたが反応は得られなかった。

 1バイト1フィッシュ、やはり厳寒期の釣りだけあって容易ではなかったが、三賀日中に初バスをキャッチするという目標だけは辛うじて達成できた。


 今後、2月中旬頃までは同様に厳寒期の修行釣りとなり、ボートでもオカッパリでも厳しい展開を余儀なくされるだろう。一年のうちでも最も難易度の高い季節である。裏を返せば、この最高難易度を克服することはこれ以上無い自信にも繋がる訳で、着実にレベルアップには繋げられる。難易度が高いから出掛けないというのは勿体無い、難易度が高いからこそ修行釣りに励むという一案も選択肢にあっていい。


【使用タックル】

ロッド ツアラー STS-63改
リール ABUMATIC PREMIER706
ライン FCスナイパー 5lb.
ルアー スパイニーアックス4インチ(ワッキーリグ) タングステンネイルシンカー1/64oz、ガード付マスバリ#5
スパイニーシャッド2.5インチ(ダウンショットリグ) ダウンショットシンカー各種、キールバランスフック#2

偏光グラス α-sight 50 シューティングレッド



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