ビッグフィッシュ・ハンターの
大久保幸三さん。
スミスKOZシリーズをプロデュースする
世界でも指折りの大物釣り師。
ネット番組アピスTV
「SUPER STRIKE」では、
豪快な釣りスタイルと
軽快なトークが人気です。

そんな大久保さんが
どのような釣り人生を歩んできたのか、
ビッグフィッシュ・ハンター
大久保幸三の起源を
お聞きしようと
大阪までやってきました。

同行者はスミスの玉越和夫さん。
大久保さんとは
アピスTV「SUPER STRIKE」で
度々コンビを組んでいます。
スーパーストライクシリーズの
プロデューサーでもあります。

最初は、大久保さんのタックルについて
取材する予定だったのですが、
「規則正しい動きをしないルアー」とか
「カジキからバスまで使えるスピニングロッド」とか、
他所ではあまり聞いたことのない仕様が続々。
そんなタックルを生み出す
大久保さん自身を取材する方が、
ビッグフィッシュに
近づけるのでは無いかと思ったのです。

大阪生まれ大阪育ちの少年が
ビッグフィッシュ・ハンターに
なるまでの道のり。
どんなスタンスで
大物と向き合っているのか。
大久保さんの流儀が
作られるまでのストーリー。
全4回でお届けします。

魅せられたのは湖上の花火

40年ほど前、
日本のバスフィッシング・シーンは
まだ発展途上でした。
ひとつひとつのメソッドが
手探り状態。
だからこそ、
どんなルアーも新鮮でした。

トップウォーターというスタイルが、
新たな様式として
広がりつつあったのもこの頃です。

トップに躍り出る魚は、
開高健の言葉を借りると、
まさに
湖上で炸裂する花火そのものでした。

大久保幸三さんのスタイルの基本が
トップウォーターである理由は、
意外な人の影響からでした。

ー 大久保さんは
トップウォーターを投げることが多いですね。

高1の頃はトップウォーターが
釣れるなんて思ってなかったんです。
憧れ・・ですらなかった。
ルアーは何でも釣れればいいやん。
ワームで釣れるんやからそれでいいやん。
ワーム投げてアタったら30秒待って、
そんな釣りをしていた頃や。

ー トップウォーターに
まったく興味が無かったんですね。

そんな時、
僕が通っている釣り具屋さんに
スミスの営業さんが来てて、
「スーパーストライクバッシング」という
非売品のビデオを見せてくれたんです。
羽鳥さん達が
ハッピーモール、コッキービートル、
ブッシュペッカー、バブルダンサーの
4つを使って七川ダムを釣るというビデオです。
トップウォーターでバンバン、
楽しそうに釣ってる映像見せられて、
うわ!これはすごいわ!思て。

それから
お昼御飯にもらっていた
¥500を毎日貯めて、
4種類のルアーと
ハトリーズスティック買うたんです。
その竿で、
東条湖とか加西とか琵琶湖で
メッチャ釣って、
トップウォーターの世界に引き込まれた。
今の僕のメインの釣りが
トップウォーターなんは、
その「スーパーストライクバッシング」の
影響なんです。


ー それでアピスTVの「SUPER STRIKE」
100回記念は七川ダムだったんですね。

そうなんです。
トップに目覚めたきっかけの場所です。

ー しかし意外ですね。
大久保さんのスタイルの起源は
羽鳥静夫さんだったなんて。

トップウォーターで
カッコ良く釣ってる羽鳥さんに憧れたから。
「スーパーストライク」を
僕が引き継いで番組にして、
それを観て僕に憧れて
この世界に入ってくるモンがおったら、
釣りってものを繋げていけるんやないかと。
僕がかっこエエ釣りを続けて行けば、
次のジェネレーションに
バトンを渡せるんやないかと。
そんな思いは正直ありますね。

大久保さんの口から
そんなこと初めて聞いた
(と玉越さん)

スミス愛ハンパ無いんですよ!
あ、でも今日はスミスの取材なのに
スミスの帽子被ってないわ(笑)

ー 影響を受けた本で、
開高健の名前が上がってましたね。

大物釣りといったら
開高健さんの影響はでかいですね。
僕は開高さんが歩んだ
軌跡をぜんぶ辿ってきてて、
開高さんが実現できなかったことも
成し遂げてるんです。

例えば、
アラスカキーナイリバーのキングサーモンです。
開高さんはイクラ餌を使った
バックトロールという釣法で釣ったんだけど、
僕はルアーキャスティングで釣りたかったんです。


ー 開高さんが餌釣りだったので、
キングはルアーじゃ釣りにくいのかと思ってました。

当時アラスカの釣りは
ガイド料と宿で1泊500ドルくらい。
キングサーモンは特別な魚だったから、
釣れたらガイドに100ドルのチップを渡すんですよ。
で、彼らは効率よく稼ぎたい。
バックトロールなら
一艘の船に8人乗せられるんです。
8人全員釣れれば
800ドル入るんです。エエ稼ぎ。

ー あ、効率の良さなんだ。

キングサーモンのポイントは、
そんなバックトロールの船が
たくさん入ってるんです。
そんなところで
キャスティングがしたいなんて言ったら、
メッチャ嫌がるわけです。
岸からのポイントは限られてるし、
1~2週間の滞在中じゃ
雲をつかむような話になる。

ー そうなるとキャスティングは難しいですね。

だからまず、
現地ガイドの信用を高めようとしたんです。
キングサーモンのシーズンが終わって
シルバーサーモンになると客が減ってきます。
シルバーはチップが安いので、 ガイドは効率よく釣るのを求めるんです。
そこで僕は日本製ミノーを出す。
「そんなのは釣れない。こっちを使え。」
とガイドがスピナーを指定する。
でも僕は日本製ミノーで
たくさん釣って見せる。
毎年行って、毎年釣って見せる。


ー 客が減る時期に
日本製をアピールするんですね。

そう。
それと、僕は
キャスティングに自信があるんだと
ガイドに言うんです。
するとガイドは、
考えられんような距離のポイントを指さすんですが、
僕は正確なキャスティングをしてみせるんです。
そのためのロッドを、
スミスの小笠原さんにお願いしました。 開高さんの言う「マンサイズのキングサーモン」と闘える竿。
その上で、ルアーを入れたいポイントに、
手で持っていって
そっと置くイメージのコンセプトの竿を。

ー なるほど。

海外に釣り行って
効率よく釣り上げるためには、
やっぱりガイドに信用されることなんです。
そういうのを見せて、
魚をいっぱい釣って見せる。

そうして8年がかりで、ついに、
ルアーキャスティングで
キングサーモンをキャッチしたんです。
27kg。スミスのブローショット11ftのプロトでした。
これが、開高さんが
成し遂げられなかったルアーキャスティングで
マンサイズのキングサーモンを釣った話です。


ー 開高健「河は眠らない」の撮影現場ですね。

そうです。そうです。
開高さんは文章上手いから、
キングのアタリはちっちゃいとか、
自分の釣りがどんだけ難しかったか
あれこれ言うてんですけど、
ホントはメッチャ簡単に釣れます(笑)
ま、それが開高さんの
かわいいとこやなと思てるんですけど。
(一同笑)

[続く]

大久保幸三さんのビッグフィッシュ・ファイトが観られるのはこちら!