●バスを取り巻く環境をもっと知ろう!

今年の霞ヶ浦、どうやら季節がずれている。
春は寒さがいつまでも残っていて、夏には暑くなり過ぎて……。
知らずのうちに秋が深まっていた。
気温的にはそんな感じだった。
人間がそんな風に感じるのだから、
冷暖房の完備していない自然の生物たちは
もっと強烈に季節のズレを感じたようである。

その証拠? あるよ。
実はテナガエビがたっぷり接岸しているんだ。
ご存じのように霞ヶ浦在住の僕はバス以外の魚釣りもする。
それはただ単に魚釣りが好き! と言うだけでなく、
バスの周辺環境、そしてそこに棲む生物のことを知ることこそが、
バスフィッシングをより深く理解するために必要であると
考えているからだ。

野生の生物たちは生きるために食い、
子孫を残すために生きている。
つまり、食べることこそが、
自らが生き延びるための法則であることを知っているのだ。
故にその水辺(水中、水面にかかわらず)に、
今現在最も多く生息している生き物を知ることは、
バスが食べているであろう生き物を容易に推測できるのである。

では、食べているものが理解できると、どう優位になるのだろう?
まず第一に、バスが食べているであろう餌のサイズや容姿、
色などの判断できるようになる。
これはルアーのサイズやカラーのセレクトを容易にしてくれるだろう。
続いて、それらの餌に合わせたバスの好む水深を予測できる。
餌の種類を知ることによってそれらの好む遊泳層に、
的を絞ることが出来るだろう。
さらに、餌となる生物たちが好む快適な居住地を知ることで、
バスが餌を求めて回遊するスポットを見抜くことが出来るだろう。

例えば、釣りあげたバスの口からテナガエビのひげが出ていることから、
『このバスはエビを食っているよ!』
と結論付けても、その人がエビの習性や生態を理解していないと、
エビから導き出せる答えは「食っていた」と言うことだけである。
しかし、その時期のエビが何を求め、どう行動しているのかを知っていると、
その日の釣りをエビに合わせるべきか、
それともそのエビは偶々食えたものなのかを瞬時に判断できるだろう。
すると、エビに合わせたバスフィッシングの作戦を構築できたり、
逆に排除できたりするのである。

  

このように、バスを取り巻く環境や、
そこに生息している動植物を知ることは、
バスフィッシングを科学的に解明し、
継続的な成功をもたらしてくれるのである。

9月現在の霞ケ浦では、
エビも小魚たちも概ね水深60〜80cmを好んでいるようだ。
さらに、この水深よりも浅いところには、
エビやチチブ、ウキゴリなどがいて、
これよりも深い場所には、タナゴやモロコなどの小魚がいる。
これが朝夕の薄陽のときには、小魚類はより浅い場所を好み、
エビやチチブは少し深い場所に移動する。
日中になるとこれが逆転し、浅い場所にエビやチチブがいて、
小魚たちは少し深い場所に移動する。
そう、時間によって水中の生物たちはその住処を変えているのだ。

  

さらに、今年はスゴモロコが多い。
また、オオタナゴも頻繁に釣れる。
スゴモロコは琵琶湖からの移入種で、オオタナゴは中国からの外来種。
琵琶湖ではこのスゴモロコが、
ブラックバスやブルーギルなどの外来種のせいで激減しているそうだが、
ここ霞ヶ浦ではアメリカナマズも多数生息しているにもかかわらず、
入れ食いで釣れるようになった……これって何故。
水質が白濁時よりも回復しつつある霞ケ浦だからだろう。

 

その一方で、ヒガイが減っている。
15年ほど前はタナゴの代わりにガンガン釣れたのだが、
ここ4〜5年はパッタリとその姿を見ない。
絶滅したわけではないだろうが、タナゴとは産卵期に貝取りで競合するので、
タナゴの勢いに少し後退したのだろう。
が、今後何かの拍子で再び復活することは十分に考えられる。

実はこのタナゴがそうだった。
一時期、霞ヶ浦のタナゴ釣りはカラス貝の絶滅と共に消え去るのか?
と騒がれるぐらいに釣れない時期があったが、
ここ4〜5年は驚くほどに釣れるようになった。
加えて、ちょうどその頃に絶滅したはずのカラス貝が、
古渡で発見されたりして新聞を賑わした。
新利根川でオオタナゴが釣れ始まったのもその頃だった。

 

しかし、琵琶湖からの移入種のカネヒラが釣れ始まったのは、
それよりも少し前だった。
現在ではアカヒレタビラ、マタナゴなどの在来タナゴに交じって、
オオタナゴ、タイリクバラタナゴ、カネヒラなどの移入タナゴなど、
タナゴはコンスタントに釣れている。
しかし、心ない釣り人が不必要なオオタナゴや、
色彩の薄いマタナゴを陸上に捨てて行くのが辛く悲しい。
釣りの基本である「不要な魚は元の水に戻す」を心掛けて欲しい。

 

捨て去られる魚の代表がブルーギルである。
近年ではアメリカナマズに代わりつつあるが。
陸上に放り投げて撲殺したり、干乾びさせたりなどするのだが、
そんな行為をした人はその魚を家に持ち帰ってきちんと処分して欲しい。
そのまま釣り場に放置されると臭くてたまらないし、
ウジがわいて衛生上もよろしくない。
キレイな釣り場で楽しい釣りを……
と言う最低限のルールやマナーを守れない人が多すぎる。
困ったもんだ。

このように、バス以外の魚や生物に目を向けることで、
その釣り場の様々を理解するようになる。
同時に、して欲しくないことやして欲しいことも判断出来るようになる。
この判断の出来る人やつく人が、
将来、釣り場を守るウォーターサイド・キーパー、水辺を守る人になるんだね。
バスアングラーにはこの水辺を守る人になって欲しい。
バスや彼らを取り巻く環境に心配りの出来る人、慈しむ心を持った人、
そんな人になって欲しいのである。

最後に、霞ヶ浦にはまだまだ多くの種類の魚たちがいるが、
全部をここで紹介してしまうと、
釣り人の喜びである「探す」や「探る」を奪ってしまうことになるので、
今回は9月上旬に良く釣れた魚の数種を紹介して筆を置くことにする。

自分たちがよく通う水辺の環境をよく知って、
バスフィッシングを考えるようになると、
もう少しバスフィッシングのヒントが見えてくるよ。
来る秋、そんな楽しみ方はどうだろうか?