■「ぶらり一人釣り」で思うこと

深夜から早朝に及ぶオリンピックの観戦疲れで、
日長まったりとしていたある日、
急に思い立ったように釣りに出かけた。
このところ、とんとご無沙汰だったバス釣りだ。

家を出たのが夕方の5時だったので、
一時間ほどキャストの練習のつもりで霞ヶ浦の湖畔に向かった。
途中でバギーに乗り換え、タックルをセレクトする。
グラスのクランキングロッドに、TD-Zの103H、
DUELの16ポンドラインだ。タックルはこれ一つ。

 

えーと、ルアーは・・・ン! 今日は紅龍(ホンロン)だ。
それもホットタイガー一つで行くぞっ!
重いコンダラ・・・これはローラーのことで、
正しくは思い込んだら・・である。
そう、思い込んだら試練の道を行くのが、
漢(男)のど根性バスフィッシングだ。

もし、数投でこのルアーを失うようだったら、
それはオレの負けだから潔く帰路につく。
しかし、万が一釣れたら・・・それはオレの勝ちだ。
狙い定めたスポットで、選び抜いたタックルで、
さらにたった一つのルアーでバスと勝負が始まった!

水位がだいぶ減っている。
普段は水をかぶっているゴロタ石がすっかり顔を出している。
あれに引っ掛けたら終わりだな。
幾重にも重なったゴロタ石は、難攻不落の要塞のようで、
その攻略の難解さは見る者を圧倒させた。
しかし、その分甲殻類やハゼ類の隠れ家も提供してくれる。
そう、餌が豊富なのである。

第一投目はゴロタ石の上流側を狙った。
久しぶりのキャストにもかかわらず、
狙いすました場所にルアーが飛んでいくのは、
日々の鍛錬のお陰である。
筋トレは相変わらず続けているからね。
ルアーをキャストし始めて、あることに気が付いた。
今年は水の色がいい。
昨年に比べると、いんやっ、ここ数年で一番良いと思える。
脳裏に釣れる予感が走った。

しかし、良い予感に反してコンクリート護岸の上には、
相も変わらずにゴミが散乱しているので、
キャスティングをいったん中止してゴミ拾いをはじめた。
最近は、タナゴ釣りの人やコイ釣りの人のゴミが目立つ。
本日も釣り具店のレジ袋に仕掛け巻き、空になったハリパック、
餌の箱(ピンクボックスとあった。なんじゃ!)、空き缶、
ペットボトル、弁当カスと言うゴミが落ちていた。
バス釣りのゴミはワーム一本だった。

 

さらに、在来魚狙いの釣り人の悪いところは、
キャットフィッシュなどの外来魚を陸上に放置していく点である。
在来魚を狙った釣り人の全員ではないけれど、
自分の釣りの対象魚以外は、
在来魚も外来魚も軒並み殺してしまうのはいただけない。
釣り上げた魚の放置プレーは、確実に霞ヶ浦の水を汚していく。
それに、対象魚種は違っても同じ魚じゃーないか。
魚がいなくなれば、魚釣りは楽しめないと言うことを、
もう一度再認識するべきだ。

 汝 無益な殺生をするなかれ 

一頻りコンクリート護岸のゴミ拾いをしてから、
第二ラウンドを開始した。
開始間もなく、紅龍(ホンロン)を奮わすようなアタリが届いた。
思わずナマズか?
と思えるほどに引きが強かったが、思いっきりロッドをあおった。
すると、水面を割って魚が飛び出した。
その姿は紛うこともなきブラックバスである。
25〜26cmの小型バスなれど、やはり思い通りに釣れたときは嬉しい。
オレは思わず「よっしゃぁー!」と叫んだね。

バスは何度もジャンプをした。
弱々しい獲物と思った相手が、予想以上に力強いものだから、
その手から逃れようと必死のジャンプを繰り返す。
これが楽しい。これが面白い。
「ジャンプしてハリを外したらお前の勝ちだ」
心の中でそう呟きながら、久々にバスとのファイトを堪能した。
そして、今回はオレが勝った。

 

ゴミ拾いのご利益だろうか、アッと云う間にバスが釣れた。
キャスティングの練習や、
手慰みのつもりのバスフィッシングだったのだが、
ゴミ拾いのパワーは衰えることを知らない。
見事バスに遭遇させてくれた。
こうなると、欲が出る。
釣り人てぇーもんはスケベェーだからね。
もう少し大きいの、もう少し重々しいのを・・・と欲をかくんだ。
帰りゃーいいものを、キャスティングを再開した。

ゴロタ石とコンクリート護岸の間を
ゆったりのったら紅龍(ホンロン)をリトリーブしていると、
今度はグッと押さえ込むようなアタリ。
エッ! 少しばかり驚きだった。
まさかヤナギの木の下に二匹目のドジョウがいるとは・・・。

先ほどのよりは少しばかり大きいけれど、やっぱり小型バスだ。
しかし、一つも傷がない。
濃いグリーンのきれいな魚体のバスである。
美しい魚体に出会えるのは、とても嬉しいことだし、
オレまで元気なれるような気がする。
そして、バス釣りをやっていて良かったな、を実感する。

  

「次、また会おうな。それまでは誰にも釣られるなよ。
世の中にはオレのように、
逃がしてくれる釣り人ばかりじゃーないからな」。
そんなことを心の中で呟きながらバスを霞ヶ浦の水に戻した。
世間では外来魚駆除なんてぇことを真顔で言っているけれど、
人間が自然環境に手ぇだしたらアカンてっ!
それよりも、もっと一生懸命に水辺のゴミ駆除について考えようよ。

オレたちがバスにしてあげられることは、
水辺からゴミを除去し、棲みよい環境を作り上げてやることだ。
ゴミの除去は釣り場環境の保全だけでなく、
より多くの人に水質浄化活動を訴えることができるんだ。
外来魚の駆除よりも外来ゴミの駆除が先決だ。

今秋の霞ヶ浦のバスフィッシングは、
きっときっちりみんなの期待に応えてくれる、と思う。
この第一の原因は、釣れる場所巡りばかりを繰り返す、
やらずブッタクリのバスアングラーが減ったからだ。
バスを沢山釣りたい人は釣れる釣り場や管理釣り場に行けばいいよ。
「今こそ霞ヶ浦を大切に育てよう」
そう考えてくれるバスアングラーだけに来て欲しい。

ゴミを残していくなんて言語道断である、二度と来るな。
バス以外の魚が釣れたら放置プレーをするようなバスアングラーにも、
霞ヶ浦へのご来釣を遠慮願いたい。
出来れば、たった一つでも釣り場に落ちているゴミを拾って行くような、
そんな心優しいバスアングラーたちで、
霞ヶ浦のバス釣りを守って行きたいのである。
そして、『ゴミを拾えば、バスが釣れる』と信じるバスアングラーで、
日本のバスフィッシングを守っていこうよ。