2026 九頭龍川釣行記

冨安 隆徳

愛知県豊川市在住。ルアーで四季折々の魚を求め釣り歩く、アウトドアが大好きなサラリーマン。主なターゲットは、九頭龍川の桜鱒、天竜川水系遠山川のアマゴ・イワナ等。

【気持ちも新たに】


 今季の九頭龍川は解禁から釣果が報告され、まずまずのスタートが切れたようだ。
しかし
「近年その釣果に変化が出始めた。」
と地元釣具店 越前フィッシングセンターの山田店長は語っていた。
「これまでなら下流部の高屋橋周辺から釣れ始めるのだが、新幹線周辺の中流域が多くなった。
河川改修で変化が乏しく直線的になった下流域は、川底が土砂で埋まり、サクラマスが止まる場所が減ったからではないか?」
と考えているようだ。
魚たちは気象や自然環境に加え、人間の都合による河川環境の変化にも対応させられるのだが、私自身はどうだろう?過去の釣果や先入観が先行し、これらの変化に対応できていただろうか?
年券を購入する際の他愛もない話から、この釣りについて少し考えてみた。
この川を取り巻く環境は変化し続けている。果たして私の対応は充分だっただろうか?
振り返れば昨シーズンは残念な結果に終わってしまった。
これまで積み上げたものをここで棚卸する必要があるのではないか?
そこで今季は経験や周囲の情報に振り回されることなく、この目で見て確認した新たな情報と、これまでの経験を上手く融合させ、この釣りの情報を書き換えるシーズンにしよう。


【手始めに】


 まずはポイントの棚卸から始めることにした。これまで実釣と仲間からの情報で攻めるべきポイントを絞り込んできた。しかし釣り人にはそれぞれのスタイルがあり、流れの評価は様々だ。シーズン終盤で思わぬ好ポイントに出逢うこともあり、全域を俯瞰しその時々で最適な釣り場に入ることの必要性を常々感じていた。変化が少なくなってしまったこの川で、どれだけの引き出しを持ち合わせているかは魚との距離に直結する。そこで今季はシーズン前半に川全体を歩き、ルアーを流して感触を確かめ、ポイントの特徴と水位との親和性、攻略スポットを整理していくことにした。 今季2度目の釣行で上流部の幼稚園までの流域の多くを廻ることができた。すると流れの強弱や流心の位置など細かな変化はあったが、あまり大きな変化は感じなかった。
素直な感想を言えば、直線的でメリハリがなくなり、心ときめく釣り場は少なくなった。
この状況で如何にサクラマスのつき場となる流れの変化に出逢えるか?
それがこの川を攻略するための最大の楽しさであり、課題なのだろう。


【釣行記 初回(2月末から3月始め)】


 中角水位計は90cm台を示していた。2月とは思えぬ陽気に小雨が重なり、一時的な水位の上昇から下げ水に転じる最高のコンディション。やはり魚の活性は高まり、数尾のサクラマスの釣果が報告された。遡上の早い群れは上流部の五松橋まで達しており、解禁に中流域で報告された群れはさらに上流に差しているだろう。
釣行のタイミングは悪くなかった。しかし私は何の手掛かりを得られぬまま、最初の釣行を終えることとなった。唯一の収穫は、高水から適水位と考える60cm台のポイントの状況をこの目で確認できたことだった。 また気になることもあった。またも下流部の中角で工事が始まったのだ。右岸の堤防を含む大規模なもので、今後どうなっていくのだろうか?


【釣行記 2回目(3月上旬)】


 北日本を中心に寒波と雨模様の天候が予想されていた。そのため釣り人の数も少ない週末であった。しかし懸念された雨も思ったほどではなく、一時的な増水はプラスに働き、寒さを除けばコンディションはそれほど悪くなかった。
初回の釣行でリストアップした釣り場を中心に下流域で数時間釣りをしたが、残る時間のほとんどを中流から上流部で過ごした。理由は明確だった。変化の薄れた下流部と高めの水位により、群れは一気に中流域まで遡上しているだろう。これは今季の釣果にも表れており、地元ショップの見解とも一致している。
次に前回から大きな増水もないことから、河口からの新たな遡上が期待できなかった。少ないながらも中上流部のプレッシャーの低い個体を狙う方が有利だと考えたのだ。
私のスタイルにあった釣り場も一部を除けば中上流部に集中しており、流れに変化のある中上流部に軸足を置き、自身の釣りを貫く方が気持ちよく釣りができるだろう。
そして釣行2日目の午後 魚からのコンタクトがあった。


【2日目午後】


 午後から上流部の五松橋下流から釣りを再開した。橋脚で分かれたふた筋の流れは、早瀬で交わり川幅を増しながらトロ瀬、開きへと続いていく。橋脚周辺の流れも昨年からの大きな変化は感じられなかったが、左岸の分流には遡上に充分な流れがあり、桜並木も視野に入れておく必要を感じた。
この瀬は九頭龍川を代表するフライポイントの一つ。明確な流れの筋は下流にむかって穏やかな表情に変化し、五松のプールと呼ばれる人気ポイントを形成している。トロ瀬は年々浅くなってきたが大きな岩やテトラは今も点在し、サクラマスの恰好の隠れ家となっている。
続く広大な開きは馬の背やミオ筋などに地形や水深に変化が見られ、その時々でサクラマスのつき場をイメージしながらの釣りを楽しむことが出来る。またこの開きは下流の長い瀬を遡上してきた新しい魚が一息つく場所なので、プレシャーの下がったタイミングで攻めてみたいポイントだ。

 まずは橋脚周辺の落ち込みと岸際のかけあがりをチェリーブラッド MD90Sのヤマメカラーで攻めたのち、日差しが弱まるタイミングでトロ瀬に移動し、開きに続く流れを釣り下っていった。
ロッドはイルフロッソ83 TILF-83TR。しなやかで感度のいいティップは、ミノーのドリフトの釣りには丁度いい。トロ瀬もそのままMD90Sで流し込んでいく。水深と流れのあるこのポイントは、地形変化や沈み岩をイメージしながらシンキングで中層を探り、流れの変化を丁寧に刻みながら流していった。そして反応のないまま開きまで釣り下ると、リップで底石を叩く事が多くなってきた。ここでフローティングのMD90 TS(テネシーシャッド)に変え、緩み始めた流れと水深の変化に対応していく。


【ナチュラルドリフト】


 流し方はいつものナチュラルドリフト。トロ瀬も開きも私の流し方の基本は同じ。川の正面にルアーをキャストし、ロッドを立てて流れを掴むと、そのまま流れに同調させてポイントを扇状にダウンクロスで探っていく。リトリーブはフケを取る程度で、竿先にルアーの潜行力を感じた時は積極的にラインを送り込み、表層の早い流れの下をトレースすることを意識して流し切る。
狙いのレンジに送り込んだ後もリトリーブはフケを取るだけ。ドリフトで流しても、流れの変化を受けながらルアーは僅かにアクションをしながら流下していく。この僅かな動きを保つのがこの釣りの肝。その後は流れの変化でターンをさせ、最後に足元までダウンでゆっくり引いてくる。気になるポイントはキャストとターンの角度で調整しながらトレースし、ポイント全体を細かく刻みながら釣り下がっていく。
このドリフトの釣りではターンの直後や岸際のかけあがりでも魚の反応はあるが、ドリフトで流している時が最も多く、積極的なアクションで誘いを入れるのはドリフトを試してからがいいだろう。


【動かし過ぎないこと】


 このドリフトの釣りに関しては、動かし過ぎない方がいいと私は考えている。
フライマンもシンクティップというフローティングラインでフライ(毛ばり)の先端だけを沈めるラインシステムでゆっくり流して釣るようで、5月の渇水時の開きでは一緒になることが多い。サクラマスは流れの中で僅かにスイングする動きに反応するようで、彼らも積極的なリトリーブは控え、自然に流すことを意識しているとのこと。ここは私のドリフトの釣りと共通点が多そうだ。かつてはメリハリのある流心にストリーマーで挑むストロングスタイルのフライマンが多かったが、この川の河川環境の変化とともにこのメソッドを試すフライマンが多くなってきたようだ。


【理想のフッキング】


 またこのドリフトの釣りには大きなメリットがある。しっかりルアーを見せて喰わせるため、高確率で腹のフックを喰ってくる。蝶番にしっかり掛かることが多いため、バラシが極端に低いのだ。但しメリットばかりではない。スローな釣りとなることと、リアクションの釣りに比べると当たりは少なくなるだろう。バラシが多いと感じている方は試してみてはいかがだろうか?


【待望の当たり】


 いつもそうだがサクラマスの当たりはいつも突然やってくる。流れと同調していたラインが突然止まり、ドラグが鳴ったのちにヘッドシェイクをするか、走り出すのかのいずれかだ。


 トロ瀬を流し切り、広大な開きに入ったのは15時少し前。夕マズメが近いというのに、遥か上流の早瀬を攻めるフライマンと私だけがこの流れを楽しんでいる。

 ストレスなく自分の釣りを楽しむことができる悦びを感じながらキャストを続けていると、30mほど下流の水面が少し波立つポイントにやってきた。馬の背か大きな底石があるのだろう。ダウンクロスで波紋のある流れにルアーを送り込むと、ゆっくり流下していたラインが急に止まった。その瞬間僅かにドラグが鳴り、次に大きく首を振る魚からの反応がロッドに伝わって来た。
「よし。 喰った!」
そうつぶやきながら魚の次の動きを待った。すぐに走り出すこともなくその場に留まり、底に張り着こうとする動きから、この時既に大型のサクラマスの気配を感じていた。すぐにラインを回収することはせず、ロッドでプレッシャーを掛け続けた。綱引きの状態が続いたが焦ることはなかった。このドリフトの釣りであれば確実に蝶番に腹のフックが掛かっている筈だ。川底に留まるだけならリスクはないため、体力を消耗し浮き上がるのを待ち続けた。


【大型のサクラマス】


 しばらくするとなんの前触れもなく魚は水面を割り、小さなジャンプの後に再び川底に張り付いた。ここでようやく大型のサクラマスであることを確認した。何度か水面に浮き上がろうとするサクラマスをロッドワークで川底へ誘導し、徐々に魚との距離を詰めていった。この魚はルアーをハーモニカのように咥え、外れることは無さそうだ。そこでチェリーネットのサクラのマグネットを外し、ランディングの準備に入っていく。ネットテンダーを剥ぎ取ると、乾いたクレモナ製の糸を水に馴染ませその瞬間に備えていく。幸い周囲に障害物はなく足場もいいため、落ち着いて浮上を待つだけの余裕があった。薄緑色の水中に浮かぶ白銀の魚体を眺めながら、ランディングまでの最高のひとときを楽しんだ。九頭龍川の少し紫がかった白銀の宝石をもうすぐ手にすることが出来る。しかしここで焦ってはいけない。最後の抵抗でクレモナに掛かったフックで悲しい想いをしたことが過去にはあったが、今となっては懐かしい思い出だ。尾鰭を僅かに動かし水面に静かに浮き上がり始めたサクラマスを眺め、その瞬間を待った。
掛けてから5分程経過しただろうか?いよいよ体力を消耗したサクラマスは水面に横になり浮き上がった。抵抗を見せないサクラマスを静かに川上に誘導したのち、頭をこちらに向けて水面に浮かせた。魚の様子を伺いながらネットをゆっくり水中に沈め、魚体の下に送り込むと一気に掬い上げてランディング。
「重っ!」
思わず声を上げてしまった。チェリーブラッドMD90 TS(テネシーシャッド)のフックは、顎の奥の蝶番に掛かり、理想的なフッキングで今季初のサクラマスを仕留めることができた。

【見事な魚体】


 背中が僅かにDコンのように盛り上がった体高のある素晴らしいサクラマスだった。尾鰭の付け根も太く、上から見るとその厚みに改めて驚かされた。鱗の剥がれが少ないことから川に入ってしばらく時間の経過した個体だろう。長さは66cmあった。いいスタートを切ることができた。

【仲間と川に感謝】


 魚を画像に収める広い川原が無かったため、活かし袋に一旦収めて少し上流で撮影を始めた。対岸で一部始終を目撃していた釣友が、わざわざ釣りを切り上げ駆け付けてくれた。撮影を始めると馴染みの仲間が次々現れ、サクラマスを囲みながら情報交換が始まった。久しぶりの再会で旧交を温めながら楽しい時間を過ごすことができた。

 サクラマスは他人の釣果も素直に祝福できる不思議な魅力を持った魚である。私の釣果を自分のことのように喜んでくれた釣友と、この魚を育んでくれた九頭龍川にも改めて感謝した。

【おわりに】


 2026年は解禁から順調な滑り出しでここまで来ている。サイズに関しては小型も混じり、今後の動向を見守る必要があるが、ここにきて徐々にサイズも向上しているように感じている。
懸念材料があるとすれば今後の水位の動向だ。上流域の積雪量が昨年に比べ少ないようなので水位低下が気がかりである。
 コロナと時期を同じくして貧果が続いたこの川も、ここ数年は平年並みの釣果で推移している。内水面で働く友人によると九頭竜川中部漁協とサクラマスレストレーションの放流事業は、今も継続して行われているようだ。産卵床の整備などの環境面の取り組みに加え、地元や行政との連携や情報発信も積極的に進めている。
肝心の放流事業は、他の河川から稚魚を買うのではなく、この川を遡上した大型のサクラマスから採卵・受精・飼育までを手がけ、九頭龍川の大型のDNAを持った稚魚の放流を進めており、単に魚を増やすだけでなく、明確な将来ビジョンを持ち活動を継続していることは素晴らしい。
確かにここ数年のサクラマスは良型のものが多く、70cmを越える超大型も珍しいことでは無くなった。関係者の皆様への敬意を表するとともに、この活動が長く継続されることを願わずにはいられない。日本のサクラマス河川の先頭を走るこの九頭龍川の取り組みを今後も注視しながら、この川のサクラマスをこれからも追い続けていこうと思う。


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