【秋鱒に挑む釣り人】
この日は雨模様のコンディションにもかかわらず、秋鱒との出会いを求めて多くの釣り師がポイントに入っていった。年齢は30代後半から50代。還暦を越えていたのは恐らく私と松本からの餌釣り師だけだった。彼らは各々拘りのタックルを手に、マナーよく釣りを楽しんでいる。上流域のため藪沢や細沢が中心で倒木などの障害物も多く、キャスティング性能に優れ趣味性の高いベイトタックルの比率が年々高まっているようだ。長い距離を釣り歩くこの釣りではライントラブルによる釣行不能の事態は避けたいため、私は今もスピニングでこの流れに挑んでいますが・・・。
【支流にチャンスを求め】
先ず早朝に雌ではあったが待望の秋鱒に出逢うことができた。そのまま次を川通しで狙いところだが、先行者もあり思うような釣りを展開することはできなかった。早朝から午前中はどの釣り人も本流筋を目指すだろう。そこで一時的にフッシングプレッシャーが高まる本流を避け、流入する沢筋に遡上する秋鱒の状況を確認することにした。まずは適度な水量と落差の大きな沢筋に向かった。この沢は数百メートル上流に落差のある落ち込みがあり、ここで足を止める大型の秋鱒を過去に何度か確認していた。
早速山中を藪漕ぎしながら川面に下り、遠目から静かに狙いの流れに目をやると、案の定大型の魚が倒木の先の岩の前に定位している。周囲には他の魚の気配がないため単独でパートナーを待っているように見えた。静かに近づきどのように攻めようか考えていると、こちらの気配を察知したのか?この秋鱒はすっと落ち込みの白泡に消えていった。この秋鱒を狙うには倒木の先に如何にキャストし、どのように流すか事前にイメージする必要があった。この僅かな時間に魚に気配を悟られたようだ。
こうなるとお手上げで、魚が流れに出てくるまで待たなければならない。ポイントごとに何処に魚が付き、どの攻めるかイメージできているかいないかで魚との距離は随分違ってくる。今回は秋鱒の居場所が特定できたと前向きに捉え、この勝負は次の機会に持ち越しとした。そう頭を切り替え上流部のポイントに車で移動した。
【上流筋】
午前の部の最後はさらに上流のポイントに入った。雨は上がり時折晴れ間も見えてきた。良かった。これ以上降られては濁りが心配になるし、そもそも川通しで釣りができなくなる。
このポイントは本流がここで幾筋もの支流に分岐し、それぞれは源流の藪沢を思わせるような小規模なものに変わっていく。このあたりまで秋鱒は遡上をしてくるのだ。幾度となく落差のある瀬や小滝を思わせるゴルジュのような渓を遡上し、この上流部までやってくる秋鱒には驚きを隠せない。
今回は林道に近い沢筋を選択したが、乾いた岩には先行者の生々しい踏み跡が残されていた。当然魚の姿を見ることもなく入渓時の期待は徐々に削がれ、結局早々と退渓することになった。時刻は11時を過ぎていた。早めの昼食を取りながら午後からの釣りに備えることにした。
【午後の釣り】
釣りを再開したのは13時過ぎ。早朝からの釣り人もそろそろ休憩に入る時刻だ。そこで上流部の沢を探ろうと準備を始めたところ、4人の釣り人が目指す沢筋に入っていく姿が目に入った。
「なんてことだ!」
午後から再び上流部を攻めるプランは大きな変更を余儀なくされ、止むを得ず早朝に入ったエリアで釣りを再開することにした。しばらく車を走らせ目指す沢筋の駐車場に到着すると、10台程の車が止まっている。本流筋の前後数キロの流れには相当の釣り人が入っているだろう。そこで今回は今回は午前に確認していた沢の秋鱒の様子を確認することにした。
【新たな秋鱒】
目指す秋鱒のポイントまで今回は川通しで静かに進んでいった。すると目指すポイントの下流の小さな落ち込みの深みに魚の気配を感じた。そこは竿抜けになりそうな岸際の小さな落ち込みで、偶然進路をそこに取ったことで発見できた魚であった。すぐに身を屈めて岩に身を隠し、この魚の動きを観察していく。幸い気付かれた様子はない。時折ヒラを打ちながら流れに身を隠し、パートナーを探しているようにも見えた。
穏やかな流れで水深も浅く勝負は早いと判断し、ウェイビー50Sのイカナゴカラーでこの魚にアプローチしていく。落ち込みの上流にルアーをキャストし、流下させながらこの魚が潜むポイントにウェイビーを送り込んでいく。期待に胸膨らませ送り込んだウェイビーであったが、当然のことながら反応はない。ルアーをかわすようにヒラを打ち、これといった反応は見られなかった。ただルアーを嫌って岩の下に逃げ込むことも無かったことはありがたい。
一般に秋鱒は、積極的にルアーを追うことは少ないと言われている。口を使わせるための何か工夫(きっかけ)が必要なのだ。警戒心を与えないよう時間をかけ、アプローチの角度やトゥッチ等に変化を加え魚にルアーを見せていく。
どれほど時間が経過しただろうか?ウェイビー50Sをドリフトさせながら、鼻先で激しくトゥイッチングで誘いを入れた。すると鼻先のウェイビー50Sに秋鱒が僅かに反応し、ロッドに小さな当たりを感じた。すぐに合わせを入れるとフッキングが決まり、小さなバイトをものにすることができた。魚は浅い流れでローリングをしながら激しく抵抗し、その後反転して下流の落ち込みに下っていった。抵抗を見せる秋鱒の顎のフックはいつしか外れ、エラの附近のリアフックが掛かった状態の秋色アマゴが水面に姿を現した。今回も雌だった。落ち込みの脇に魚を誘導し、素早く回り込んで慎重にランディング。薄いサビが入った40cmを少し切るスレンダーな秋鱒。本日二尾目のターゲットに出逢うことができた。午前中は石の裏にでも隠れていたのだろうか?いいタイミングでこの沢に入れたことに感謝した。そしてすぐにすぐ上流の倒木のポイントに向かった。
【雄鱒の争い】
二尾目の興奮が冷めやらぬまま、続く倒木のポイントにゆっくりと向かった。気持ちを落ち着かせて倒木の下に目をやるとなにやら水面が騒がしい。静かに水面を凝視すると2尾の婚姻色の入った雄が流れの中で縄張り争いをしていた。緩い流れを右へ左へ走り回り、時には体をぶつけ合いこの流れを独占しようと争っている。そこで静かに魚との距離を取り、まずはこの争いの行方を見守ることにした。するとしばらく激しいバトルの末に一尾が諦めたように落ち込みの白泡に身を隠した。そこでいよいよこの秋鱒との勝負を開始した。
【粘り強く流し続けて】
水深が浅く穏やかな砂利の流れということもあり、ここでも引き続きウェイビー50Sのイカナゴカラーで攻めていった。まずは秋鱒にルアーを追わせるトレースラインで魚の活性を見ていった。すると無反応。次に鼻先めがけてドリフトで送り込んだがこれも無反応。三度目は口元でルアーにアクションを加えたがこれも全く無視。
しかたなく先ほどの雌同様に、時間をかけて丁寧にトレースコースを変えながら口元にウェイビー50Sを送り込むと、ウェイビーの存在に徐々にストレスを感じたのか?突然ルアーに反応し口を使ってきた。突然の反応に少し慌てたが、しっかり鼻先にウェイビー50Sのフックが掛かったことを確認したのちは、安心してやりとりを続けた。まずは一旦上流に走ったが、ラグレスボロン63のバッドパワーで走りを止めると、すぐに反転してこちらに向かってきた。急いでラインを巻き取ったのちに二つの小さな落ち込みを下らせ、水深のある流れに誘導してランディング。
鼻先は落ちて黒々としていたが、体全体のサビはまだこれからのようだ。長さは40cmには満たないが、体高があり迫力のある秋鱒だ。ようやく三尾目にして雄鱒に出逢うことができた。
【「雨」と「プレッシャー」】
今季の最終釣行で偶然にも3尾の秋鱒を手にすることができた。今回の結果は直前の「雨」がポイントであったと考えている。僅かな水位上昇が魚の活性を上げ、濁りで秋鱒の警戒心が薄れたうえに、人の気配を和らげる役割を果たしてくれたのだろう。
次に「プレッシャー。」状況が良かった本流に釣り人が集中したおかげで沢筋のプレッシャーはあまり高くはなかったようだ。あの時間帯であれば先行者により魚にはプレッシャーがかっているはずだが、この二尾の魚はルアーを嫌がる前に口を使ってくれた。
この「雨」と「プレッシャー」という釣果に大きな影響を及ぼす二つの要因がうまく作用し、この結果に繋がったと考えている。私にとって厳しかった2025トラウトシーズンであったが、シーズン最後にこれまでの苦労が報われた気がした。そして気持ちよくこの川に別れを告げて少し早めに岐路に就いた。
Rod | スミス トラウティンスピン ラグレスボロン TLB-63DT スミス トラウティスピン イル・フロッソ TILF-53TR |
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Reel | シマノ ヴァンキッシュC2500SXG |
Lure | スミス ウェイビー50S 65S トラウティンウェイビー50S 65S ジェイドMD S F SP パニッシュ55F 55SP 70F 70SP DD-パニッシュ 65 65SP チェリーブラッド DEEP70 MD70 MD75 D-インサイト 44 53 64 D-コンタクト 50 65 ドロップダイヤ 4.0g 5.5g バック&フォース 4g 5g 7g |
Line | ヨツアミ PE X-braid X-8 0.6号 |
Leader | フジノ フロロ 6lb |