2024 九頭龍川釣行記(その2)

冨安 隆徳

愛知県豊川市在住。ルアーで四季折々の魚を求め釣り歩く、アウトドアが大好きなサラリーマン。主なターゲットは、九頭龍川の桜鱒、天竜川水系遠山川のアマゴ・イワナ等。

【川の状況】


 この川で30年近くこの釣りを続けてきたが、これほど大型魚が捕獲されるシーズンは無かった。素晴らしいサイズが報告され、70cm・4kg超えが現実のものとなっている。ランドロックを思わせるスレンダーな個体も中にはいるようだが、今季は体高のあるものが多いように感じている。数年間に及ぶ貧果の後で徐々に遡上も上向き、この川が本来の姿に戻ろうとする気配はここに通う釣り人を安心させてくれている。ただ一つ気がかりなのは、増水後の下げ水で思ったほどの釣果(数)が報告されないことだが、いずれにしても九頭龍川が再び復活軌道に乗り始めていることは間違いなく、このまま無事にシーズンが終わることを望むばかりである。


【平日釣行】


 前回のレポートで報告したとおり、3月中旬の初釣行でいきなり良型のサクラマスを獲ることができた。その後は魚からの反応は得られず、桜の開花とともに4月を迎えた。この川のベストシーズンは桜の花の咲く3月末から4月中旬で、この時に増水後の下げ水が加われば魚との距離は格段に縮まる。そこで新年度の慌ただしさも一段落した金曜日に、週末と合わせ3日間の釣行スケジュールを立て九頭龍川に向かった。幸い川は数日前の増水から減水傾向にあり、濁りも取れて水位も平水に戻るベストなタイミングであった。


【思い通りの釣りのはずが・・・。】


 せっかくの平日釣行。いつも入ることができないポイントを、スピーディーにランガンしようとプランを立てた。しかし現実は甘くはなかった。釣り場には他府県ナンバーの車が多数。こんな筈ではと嘆きながらも、入れるポイントを探しながら釣りをつづけた。
川は増水後の下げ水で水位は高め。濁りもほとんどなくベストなコンディション。終日ロッドを振り続けたものの魚からの反応はなく、全体の釣果も4月の下げ水のコンディションを考えると期待を裏切るものであった。これが今季の傾向ではないだろうか?
期待に胸膨らませて福井入りした平日釣行であったが残念な結果に終わり、その夜は福井入りしていた仲間と反省会を開き翌日の釣行に備えた。


【8号線下流】


 翌日は水位が更に下がっていた。高水が苦手な私はこれをチャンスと捉え、素早く身支度を整えポイントに入っていった。狙いは流れの穏やかな開き。理想のポイントを求め川沿いを走り、最初に選んだのは前回結果の出た8号線の下流。この日偶然にも釣り人は少なく、開きに釣り人の姿はなかった。落ち込みや合流点に先行者は集中し、ポイントを絞りにくいトロ瀬に釣り人の姿はなかった。そこで早速先行者から距離を取り、釣りをスタートした。

【トロ瀬】


このトロ瀬は合流点の明確な流れの筋の下流に位置し、早瀬 ➡ トロ瀬 ➡ (分流分岐)➡ 浅瀬 ➡ 早瀬 ➡ 落ち込み と続く流れを形成していた。トロ瀬には流れの筋は存在するが、沈み岩やストラクチャー等の急激な地形変化は無い。流れのヨレや掘れた僅かな深み(ミオ)がここでは攻め処となるがイメージは掴み辛い。以上の理由から早朝から積極的にこの流れを攻める人はいなかったのだろう。
そこでまずはいきなり立ち込むのではなく、岸際のかけあがりや僅かな水色の変化を一通りチェックし、徐々にディープウェーディングしながら、チェリーブラッドMD90 チャートゴールドを流していった。


【チェリーブラッド SR90T2 サクラウグイ】


時刻は7時。MD90を流し続けたが魚からの反応はない。日差しは徐々に強くなってきた。川は下流に進むにつれ徐々に浅く、流れの筋は少しぼやけ始めてきた。そこで水深変化への対応と強い日差しの反射を抑えたいという思いから、チェリーブラッドSR90T2のサクラウグイカラーにルアーローテーションをしていく。
ここでチェリーブラッドSR90T2を紹介しておこう。激流も緩やかな流れにも素直に対応し、キレのあるローリングから発するフラッシングが最大の魅力のシャローランナーである。フローティングのSR90、スローシンキングのSSに続き、後に追加されたスペシャルモデルがT2である。末尾のT2とはTYPE-2の略で、少し強めのローリングが出るようセッティングされたフローティングモデルである。
カラーもフラッシングを意識したものが多く、サクラウグイはT2オリジナルのカラー。シルバー系だが強い光を放つものではなく、穏やかに反射するタイプのカラーである。
アピールの弱めなカラーから流し始め、反応が無ければメリハリの利いた強いフラッシングのヒメや、ゴールド系のチャートゴールドに変えていく。濁りやローライト時、先行者が攻めた後などは、TMブナチャートなどのアピールカラーでメリハリをつけて大胆に攻めるのがいつものスタイル。
流し方はいつものナチュラルドリフト。キャスト後すぐに糸フケを取り、水を掴ませ中層に流し込むと、あとはドリフトでレンジをキープし誘っていく。流しきった後は手前のブレイクラインを意識しながら丁寧に足元まで引いてくる。水面の波紋や水色から地形の変化を感じた時は、優しくアクションを加え、魚に喰わせの間を与えて誘っていく。


【徐々に浅くなる流れのなかで】


 まずは流れのヨレを探ってみたが反応はない。次にフルキャストして流芯の向こう側のヨレを探ったのちに流れを横切らせ、流し終えたのちにターンで誘いを入れながら足元まで丁寧に引いてくる。この作業をステップダウンしながら扇条に丁寧に探っていった。
しばらく流し続けると水深が比較的大きく変化するポイント(川の流れに対するかけあがり)まで釣り下っていた。ドリフトで流し続けていたSR90T2が下流の水深変化に差し掛かった時、ロッドティップに明確にあたりが伝わってきた。“いやいや”をするようなサクラマス特有の動きであったのですぐさまリトリーブを中止して次の動きに備えていく。魚は急に走り出す様子が見られないので、追い合わせを入れフッキングを確かなものにすると、プレッシャーを感じた魚は私が居る川岸に向かって走りだした。
「このままでは糸がフケてしまう!」
素早くロッドを立てて岸に向かう魚と動きを合わせ、ラインテンションの低下を防いでいく。目の前を走り抜けていく魚の口元(蝶番)にはしっかりルアーがかかり、間違いなくベリーのフックを咥えている。
「この掛かり方なら大丈夫だ!」
ここからは安心して魚とのファイトを楽しんだ。


【55cmのグッドコンディション】


 岸に向かって走り始めた魚は、自分が浅瀬に向かっていることにようやく気付き、今度は水深のある私の方向に向かって走ってくる。
あわや接触か?と肝を冷やしたが、なんとか上手くかわすことができた。魚が本流に戻ったところで少し強引に走りを抑えると、その場に浮き上がってローリングを始めた。ただこの最後の抵抗も長続きせず、しばらくすると水面に静かに浮き上がってきた。ここでようやくチェリーネットでランディング。長さは思ったほどではないが、体高のあるコンディションのサクラマスであった。今回もフックは魚の蝶番にしっかり掛かり、フッキングは完ぺきであった。狙い通りのポイントから引き出すことができたので、サイズはさておき満足のいく魚であった。

【開きを攻める理由】


 最後に私が好きな「開き」についてまとめておきたい。朝夕のマズメ時やプレッシャーが下がった日中に、サクラマスとの出会の場となる「開き」は、私にとっては大切な攻めどころの一つである。その最大の理由は、他の釣り人の竿ぬけになりやすく、攻め切れていない場合が多いことが挙げられるだろう。視覚的な情報が多くないためポイントが絞りにくいことが一番の理由だろう考えている。
次に開きの下流には落ち込みや長い瀬が続く場合が多く、遡上魚の絶好の休憩場所になりやすい。特にプレッシャーが一時的に下がった状況下は大チャンスで、出会える確率は高くなるだろう。ぜひこれに該当するポイントがあれば、試しにルアーを静かに流しこんでみて欲しい。この時アクションは加えず、自然に流すことに徹するといいだろう。激しいアクションは禁物である。


【これから】


今季は週末に増水に悩まされることもなく釣りができている。遡上量もコロナ前の絶好調のころを思うと50%程なのかもしれないが、良型に出会えるチャンスはまだあるだろう。今季は遡上のピークを感じることは少ないものの、一定程度の釣果が平均的に報告されているように感じている。このあたりが懐の深い九頭龍川の持つポテンシャルの高さではないかと思う。また今のところ急激な減水で釣りができなくなる状況は無さそうな気がしている。できれば5月の連休以降もこの釣りができることを期待したいところだ。
最後にこれまで絶不調であった九頭龍川は、今季大型魚を中心に一定程度の遡上が見られるようになった。明確な原因が特定できないので悩ましいものの、今後もこの状況が続くことを願わずにはいられない。釣り人の数もピーク時を思えば随分落ち着きを見せている。連休明けまでは私もこの川に通うつもりでいるので、今季の遡上の行く末を見守りながら、残りのシーズンを楽しみたいと思う。


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