北海道 道南海サクラ釣行

奥代 直行

北海道 道東在住。子供の頃、開高健の小説を読み、ルアーフィッシングを始める。北海道のトラウト、サーモンがメインターゲット、自然と釣りをこよなく愛す、彫金師。モットーは『自然と魚に遊んでもらう』。

4月後半、テレビの天気予報で見飽きた本州の桜の開花宣言。
北海道にも桜前線がやっと上陸し、北国にも遅い春がやって来る。


うんざりするような自粛ムードでおおっぴらに花見が出来ない昨今だが、北海道のアングラーにとっては「花より団子」というよりは「花より魚」と言ったところか。
う〜ん、語呂がイマイチ。


ショアから狙うサクラマスは、北海道内の釣りのジャンルとして非常に人気のあるものだ。まず道南方面からシーズンがスタートし、道北方面、道東オホーツク方面、道東太平洋側と時期をずらして約5〜6ヶ月程釣れ続ける。


私の住む道東、十勝での海サクラのハイシーズンは概ね6月中旬〜7月いっぱい。気温が高い時期でアングラーにとっては楽な季節だ、あと2ヶ月も待てば地元の海岸で好きなだけ釣りが出来るのだが、S N Sの普及した今の時代、毎日のようにアップされる道南の海サクラの投稿は、目の保養を通り越して、毒である。


そんな悶々とした日々を過ごしていたタイミングで、地元の釣り仲間が私の職場に遊びに来て、開口一番「明日、道南日本海にサクラ狙いに行かない?」ときた。


「えっ、急だな〜」と、しばし悩む素振りを見せたが、10分後にはリーダーを結束している自分がいた。
ちなみに私の住む地域から目的のポイントまでは高速道路を使って片道4時間半だ。
往復だけで9時間運転の日帰りソロ釣行は、なかなか気が重い。「北海道はでっかいどー」である。


今回のポイントは道南に住む友人のガイドで、日本海に突き出した磯場、なかなか実績のあるポイントで過去に3,8キロの大型を釣ったこともあるらしい。


まだ暗いうちからポイントに入り、夜明けを待つ。
慣れない磯場で、しかもヘッドライトの灯が頼り。ライフジャケット、磯シューズ、ライトなどの装備は当たり前だが、暗いうちからポイントに入る場合は、通い慣れた人に先導してもらう事をお勧めする。
安全第一、釣果は第二だ。
東の空が白みはじめウズウズしてくるが、足場の悪い磯場で焦りは禁物。
しっかり周囲が確認できるような明るさになるまで竿は振らない。

ガイドの友人曰く、このポイントではミノーの反応がいいとの事、友人ふたりがミノーをチョイスしていたので私はジグをパイロットに決める。
手前はミノーの二人に任せ、沖目の回遊があった場合に備え、友人達の2倍の飛距離で広範囲を探った、しばらくジグを振り続けたが反応は無い。潮は強烈に効いていて雰囲気は抜群なのだが。
ウォブリン、メタルフォーカス、スーパーサージャーで沖目を探っていると、友人にヒット!
銀色に輝く魚体、サクラマスだ。
ランディングをサポートし、記念撮影。
ヒットパターンを聞くと、ミノーでのジャーク、足場から20〜30mラインでのヒットだったようだ。
遠距離砲を捨て、すぐにミノーをセットする。郷に入っては郷に従えだ。

しばらくDコン110のピンクでキャストを繰り返すが反応がない、もう一人の友人にもサクラがヒット。
少し焦りが出たが、落ち着きを取り戻すために友人達にもう一度ヒットパターンを聞く。
やっている事は間違っていないようだが、二人ともルアーのカラーがナチュラル系だった。
そこまでは赤金や、ピンクなどのアピール系を使っていたのだが、プロトの北海道限定ルアー「スウィンガー」がボラカラーだった事を思い出しすぐにセットする。
130mm 24,5gで重心移動のサスペンドモデルだ。


友人達のヒットパターンを頭に入れてスウィンガーをキャストする、一投目から魚がアタックしたような反応があるが乗らない。次はジャーク後のポーズを少し長めに取る、サスペンドなのでルアーが水中で止まり、波よってフラフラとバランスを崩すイメージ。
リーリングを再開する手がビタっと止められ、間髪入れずにフッキングを入れる。本命だ!
久しぶりのサクラマスのファイトを楽しみながらも、不慣れな磯場の為、友人にタモ入れをフォローしてもらいなんとかランディング。
56cmアベレージサイズだったがシーズン1本目はやはり格別。

写真撮影を終え余韻と達成感に浸りたかったのだが、また友人がヒット。
どうやら時合いのようだ、これを逃すと次にまた魚が廻ってくる保証はない。
スウィンガーからDコン110のイワシカラーに変え、キャスティングを再開する。

巻きスピードやジャーク強弱、ポーズの時間などを変え魚の好みにアジャストしていく。
なんとなく回遊ルートが分かってきたので無駄に遠投せずに手返しを重視し、ショートジャークからのストップ。
リーリングを再開する前に走るライン、ひったくりバイトだ。きっちり合わせを入れてファイトに移行するが、あきらかに先程よりもドラグが鳴り、10,6ftのプロトロッドが引き絞られる。
磯場の為、魚に余力を残したまま無理に寄せると、最後のダッシュでラインを切られる可能性がある為、慎重に相手のパワーを削る。
最後は押し波を利用して一気に磯にずり上げた。

あがってきたのは、先程の魚よりもひとまわり大きい、66cm 3kgオーバーのサクラだった。
自己記録更新、初の3kg超え、と嬉しいこと尽くめの一本であった。


手早く写真撮影を済ませ、すぐにキャストを再開したが、時合いがそんな長く続くこともなく、その後は尻すぼみの釣果だった。
ただ今回の遠征は全員安打、自己記録更新、プロトルアーのアクションの確認、カラーローテの重要性、プロトロッドのテストなど得るものがとても多かった。


達成感のある疲れを感じながら帰路につく、寄り道して見に行った蝦夷富士「羊蹄山」がとても美しかった。

天気予報では報道されない「サクラ前線」にワクワクするシーズンがやって来た。

Rodプロト10,6ft
ReelS社 4000番HG
LinePE1,2号
Readerフロロ30lb
LureスウィンガーSP
Dコンタクト110