池谷 成就

ルアーでのキャスティング、レイクトローリングを中心としたビッグトラウト狙いのエキスパート。 「かわせみ倶楽部」主宰。


《 今年の解禁は月曜日 》


 2021年の群馬県の渓流解禁は仕事の休日と重なった月曜日。いつのまにか還暦をちょっと前に過ぎて老体に鞭打つながらも、気合入り過ぎなくらいのやる気満々で釣り場に向かう。数十年前からホームグランドにしている群馬県北西部から利根川に流れ込む吾妻川(あがつまがわ)の支流を狙ってみた。

 朝一は氷点下だったのでちょっと陽が高くなってからの釣行をと思ったのが、さすがに解禁日の混雑に出遅れを取り戻すのは難し結果となってしまった。特に大物狙いは失敗してしまった感は否めない。数本の支流に入ったが、いままで釣っていましたというおびただしい足跡に焦りがないといったら嘘になる。ましてや昨今のキャンプブームはキャンピングカー仕様車で車中泊したであろう釣り人をよく見かけた。解禁日当日の釣り場はコロナ渦という状況下か単独釣行も特に多く感じた。それにしてもいたるところに釣り人が入っていて、この釣りもまたある意味ブームになっているのだろう。


 釣り人が居ない流れをやっと見つけたが足場が悪く土手からルアーをキャストするも、渓流沿いや藪に多く自生し、頑丈でなかなか折れない茎に鋭い棘が付いていて、さらに解禁当初は冬芽が付き始めている”野茨”(ノイバラ)か”照葉野茨”(テリハノイバラ)だと思うがこれまたやっかい。ルアーが引っ掛かってしまうと、それはそれは大変なことになる。近寄って枝を掴めば棘が容赦なく刺さって痛いのなんのって。ダウンジャケットなどは表生地を裂いてしまうこともある。棘だけ折れて刺さっていることも多い。近付けない場合はミスキャストのルアーはほとんどこの植物の餌食になってしまう。釣り人が居ない理由がうなずける。なんとかノイバラの隙間を縫ってルアーを落とし込めれば、すぐに魚はヒットしてくる。さすがに解禁日で魚自体は狙われてなければスレッカラシではない。数尾のイワナに遊んでもらう。



 遅めの昼食の後は、足場の良い比較的有名なポイントをあえて選び、スレッカラシの木葉山女魚(コッパヤマメ)と知恵比べとなった。昔から標高があり平均気温が低く、魚の密度が濃い割りに渓流の規模が小さいこの地方のヤマメはなかなか大型に育たない。このヤマメは木の葉のように小さく銀化(ギンケ)しづらく茶色、さらには背中のゴマ状黒点も少ないため、木の葉→木葉(コッパ)ヤマメと呼んだ。成長すれば立派な吾妻ヤマメとも呼ばれる。吾妻川という強酸性水によって遡上を阻止され、残留型の強い性質を持ったヤマメは、日本でも先駆けのヤマメ養殖技術もあって、標高の割りにはヤマメが多いところでもある。私がまだ餌釣(脈釣・提灯釣り)をしていた50年程前は、別荘地の細い流れには、イワナは珍しく、木葉ヤマメはそれこそ群れをなしていた。




 一昨年の台風は吾妻漁協の中でも西吾妻さらには長野県と接する県境あたりでは渓流の流れさえ壊滅させ、渓流いな渓流釣りの復興には今しばらく時間がかかりそうだが、おそらく稚魚で放流されただろうヤマメを相手に四苦八苦。なんとか数尾のコッパヤマメは小気味よいファイトをロッドに伝えてくれた。結構な数の渓魚が見えるのに釣れないことは良くあることでちょっと悔しさはあるけれど、こまっしゃくれた魚相手に本気になってしまう、本気にさせられてしまう渓流ルアーフィッシングは、これはこれでとても楽しいのだ。


● データ

吾妻漁協日釣券1,000円 ローソン北軽井沢店


《ベイトタックル》

ロッド トラウティンスピン ベイトクラシック TBC-53L
トラウティンスピン ベイトクラシック TBC-65ML
リール アルファス103L TYPE-F(イケタニペイント・AVAIL改)
ライン フロロドレイク3lb
ルアー バック&フォース4gD-コンタクト50ジェイドMD-F
タックルケース スミスリバーシブルF86
その他スミス ネオプレーングローブ5F、クランプフォーセップ小、エマージェンシーホイッスル、クリップオンリールDX、DXラインクリッパー、DDシャープナー、マグネットリリースS

《スピニングタックル》

ロッド トラウティンスピンマルチユースTRMK-504UL
リール レブロス2000S(スピニングリール)
ライン ファメルトラウト5lb
ルアー バック&フォース4gD-インサイト44



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