冨安 隆徳

愛知県豊川市在住。ルアーで四季折々の魚を求め釣り歩く、アウトドアが大好きなサラリーマン。

主なターゲットは、九頭龍川の桜鱒、天竜川水系遠山川のアマゴ・イワナ等。


《 2020 飛騨川釣行記(その2) 》


【はじめに】

 少し遅くなりましたが、まずは7月の豪雨で被災された南飛騨の皆さんにお見舞いを申し上げます。次に国道41号門坂地区崩落の復旧対応に尽力された土木関係者の方々にお礼を申し上げたいと思います。このレポートをお届けできるのも、皆さんのご努力があったからであり、この場をお借りして感謝の気持ちをお伝えしたいと思います。ありがとうございます。
 今年7月に発生した飛騨川門坂地内のR41の崩落をニュースで見た時、東日本大震災同様に言葉を失ってしまった。南飛騨にとってR41は、経済、物流、通勤、通学の大動脈であり、無くてはならない道路であった。惨状を報道で知った時、「復旧は当面難しいだろう。」と思っていたが、驚くことに約1か月半で仮復旧させてしまった。これには本当に驚かされた。この日も深夜のR41の門坂地区を感謝の思いとともに走らせていただき、目指す上流部の渓に車を走らせた。


【上流部】

 今年は長梅雨に豪雨が重なり飛騨川の水位は高めに推移してきたと思われる。飛騨川釣行再開後、最初のポイントに選んだのは上流部。気の早い遡上魚が既に上流部に差しているのではと考えたからだ。薄暗い峠道を抜け最後の集落を通り過ると、薄暗い森の中のとある支流の合流点で車を止めた。日の出間近の山中は未だ薄暗く、準備には灯が必要な程だ。幸い先行者は居らず、3つの全てのルートを選ぶことができた。
 ひとつ目は本流筋を入渓点から上流に向うコース。川幅が狭く、高低差のある渓。次のル−トは林道を少し下り入渓点まで戻るコース。平瀬と小淵が続く比較的平坦で開けたコース。そして最後は合流点から支流を釣り上がるコースで、イワナ狙いの沢の釣り。さあどれにしようか?迷った挙句今回は林道を下るコースを選択した。狙いは遡上鱒。長雨や豪雨の影響はどうか?鱒は差しているだろうか?期待と不安が入り混じり、複雑な気持ちで林道を下流に向けて歩き始めた。
 林道は思った程荒れてはいなかった。地元の方が林道の点検のために山に入ったのか?朽ち果てたアスファルトの切れ目に群生していた雑草は刈り取られて快適そのもの。笛に熊鈴斜面も想ったほどの崩落も無かったが、踏み跡は少なく釣り人もあまり入っていないように感じた。期待は徐々に高まっていった。


【イワナがお出迎え】

 川辺に降りるとそこにはいつもの流れがあった。幾分小石が堆積しているようだが、変わり果てたといった雰囲気は微塵もなかった。魚達は元気にしているか?早速ご機嫌を伺う。
 手始めにハンドメイドミノー65oで反応を見ていく。小さな落込みの水泡の中にルアーを落とし、その下に潜む大型の様子を伺うといきなり黒い影がルアーに襲いかかってきた。イワナだ!良型のイワナがミノーを咥え、流れにのって足元まで流れてきた。第1投からいきなり泣き尺の良型が姿を見せてくれた。




 次にその下流の開きの終りの岩の前にルアーを流していくと、またもいい片サイズのイワナがミノーにアタックしてきたが、今度は喰い損ねたようで敢え無くフックオフ。それにしてもプレッシャーが余りかかっていないのか?素直にルアーを喰ってくる。水温を計ると13度。水は少なめだがこの水温なら問題はない。
 気持ちよく釣りあがっていくと、増水の影響が少しずつ目に入ってきた。以前とは異なる流れや、地形変化、土砂や流木の数々。瀬には岩や小石が多く堆積し、全体に平坦になった気がした。渓の変化に注意する一方で、落込みやヒラキの終りや岩盤際に秋鱒の気配を探っていった。特に落差のある落ち込みを乗り越える際には、その先に定位しているかもしれない大型の魚達に警戒心を抱かせないように慎重に進んでいった。


【タックル】

 この日持ち込んだのはインターボロンXX IBXX-60MTにステラC2500HGS。ラインは0.6号にフロロの8LBをリーダーにひとひろ結んでいる。
 夏の終りからの秋鱒を意識した釣りには少し大きめのルアーを使うのが常で、パニッシュ70やDD−パニッシュ65をメインに、落ち込みや深場にはD−インサイト53、ボトムノックスイマ−35、エッジダイヤ6.5gで動きやレンジを変えてフォローを入れていった。

 今期リリースのD−コークスも面白いルアーで、アクションや魚の反応をチェックしながら数尾のイワナを掛けた。動きを確認しながらの試し釣りなので、このルアーの本質を充分理解するまでには至っていない。私なりの具体的な使い方や攻め処が分かったタイミングで紹介することにしよう。


【渓アマゴ】

 上流域は秋鱒を狙って入るため8月下旬から釣場に入ることが多い。ここは基本的にはアマゴよりもイワナの渓だと思っている。この日もここまでイワナに遊んでもらいながら上流を目指してきたが、いよいよ以前に良型のアマゴを見たことがある落込みのポイントまでやってきた。薄暗い落込みの下流は開きと僅かな瀬が続き、この瀬肩に良型のアマゴが付いていた。

 静かに魚の気配を伺い、ロングキャストでバルサミノー65oを打ち込み様子を見ていくが反応はない。次に流れが当る右岸側のかけあがりにジェイドMDSをキャストし、流れに馴染ませて送り込み、かけあがりを舐めるようにリフト&フォールで丁寧に探るがこれにも反応はない。最後に落込みの白泡目掛け、DD−パニッシュ65SPやD−インサイトを繰り出し、レンジを下げながら誘っていったが魚の追いはなかった。
 そこで近頃多用するようになったウイローリーフ型のスプーン エッジダイヤ6.5gでフォローを入れると、フォールからの最初のアクションで喰ってきた。シングルフックなのでバレることは無いだろうが、少し手ごたえがあったので慎重にやり取りを続けた。丁寧に寄せてくると正体は良型のアマゴであった。秋らしい装いの25cmほどのアマゴであった。一般的な楕円のパーマークの個体ではなく、細長く少し黒ずんだ魚体は威厳すら感じられた。餌の少ない山奥でひっそりと命を繋ぎ続けた純血の渓アマゴではないだろうか?大きさよりもこの魚が放つオーラと、あまりの美しさに夢中になって画像に収めた。











【スプーンの威力】

 ミノー中心で釣りをしていると、スプーンの存在をつい忘れがちになる。しかしスプーンにはミノーに出ない魚を引き寄せる何かを持っている。これまでもスプーンを狂ったように追う魚の姿を何度も見てきた。水中の光の煌めきや波動、アクションの質の違いが、ミノーに擦れた魚達のスイッチを入れさせるのだろう。
 かつてのフォローベイトも今やその御株をD−コンを代表とするヘビーシンキングに奪われ、地味な存在になりがちだが、いやいやどうしてそのアピール力は、使ってみれば目から鱗になる多いのだ。是非ルアーケースに数個忍ばせて欲しいルアーである。ルアーローテーションの重要性をまたも認識させられることとなった。


【秋鱒を求めて】

 その後禁漁まで秋鱒との出逢いを求めて里川エリア、上流部と通ったが改めてご紹介するほどの良型の姿を拝むことはできなかった。特に里川エリアは7月の大増水による斜面や道路の崩落等によりダムに多くの土砂が流入し水質が悪化傾向にあった。その上ダムの問題から排砂が実施され、秋鱒狙いの一番重要な時期に川が白濁してしまうという残念な状況が続いた。こんなこともあり特に今期は上流部に釣り人が集中し、短い区間を分かち合うというなんと2020年らしい終り方で私のトラウトシーズンは修了となった。





【最後に】

 今季自然災害により流れが大きく変わった飛騨川。上流部の変化は少なめであったが、土砂の流入により全体に平坦になったようだ。そのため魚が身を隠す流れがこれまで以上に少なく成った印象は否めなかった。そんなこともあり夏から秋にかけては新たな釣り場を求めて郡上漁協管内の長良川や吉田川にも足を運んだ。飛騨川とは渓相も異なり、本流域でも落ち込みや淵も多く、非常に魅力的な川であることがよく分かった。今季は全体を把握することに注力したこともあり、ここでご紹介できるほどの良型の魚との出会いはなかったが、来期は状況によりエリアを選択しながら釣りをしてみようと思った。




 なにはともあれ2020年は本当に様々な試練が多く、様々なことを考えさせられたシーズンであったが、来期に向けて新たな課題やテーマも見つかり、2021シーズンも頑張ろうといいう気持ちになれたので、まずは良しとしよう。なにより無事でシーズンを終えられたことに感謝したいと思います。それではまた。


● マイタックル

◇ロッド スミス インターボロンXX IBXX-60MT 53MTH
◇リール シマノ ステラC2500HGS
◇ライン ヨツアミ G-soul W8 PE 0.6号
◇リーダー バリバス ナイロン 1.5号
◇ルアー スミス  エッジダイヤ6.5g ドロップダイヤ5.5g  バック&フォース7g
ジェイドMD−F/MD−SP/MD−S  チェリーブラッド MD75 MD70 DEEP70 MD82S MD82  DDパニッシュ 65 65SP 80S 80SP 80F パニッシュ 70F 70SP 55F 55SP
トラウティンウェイビー50S  ボトムノックスイマーU 35
D−インサイト 44 53 63 D−コンタクト 50/63/72
◇フック   スミス シュアーフック 2G 3G 4G
◇スナップ  スミス SPスナップ #00



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