冨安 隆徳

愛知県豊川市在住。ルアーで四季折々の魚を求め釣り歩く、アウトドアが大好きなサラリーマン。

主なターゲットは、九頭龍川の桜鱒、天竜川水系遠山川のアマゴ・イワナ等。


《 2020 飛騨川釣行記 》


【サクラマスのない週末】

 九頭龍川のサクラマスのない週末は、思いがけずこれまでを振り返るいい機会を与えてくれた。釣りはもちろんのこと、家族や仕事に、果ては生き方に至るまで、様々な事に思いを巡らせた。ネガティブになりがちな状況の中で、私は不思議なくらいポジティブに過ごすことができた。そのため2020年春が私のターニングポイントになるのではないか?とすら思っている。厄介な感染症は人々の行動に制限を掛け続けたが、全てを自粛で終わらせることなく、飛び交う情報を取捨選択しながら有意義な時間を過ごし、解除の時を待った。地元を流れる豊川に出かけたり、裏山の竹林で筍を掘って過ごしたステイホームは、楽しく充実していた。


【私の第2解禁】

 始まりがあれば終わりがあるのは世の常である。愛知・岐阜・三重の県境をまたぐ行動自粛は、国の緊急事態宣言の全面解除とともに6月1日に解除されることとなった。今季2度目の解禁日となる目的地に飛騨川を選び、久しぶりに早朝のロングドライブを楽しんだ。
 この時期は流れに出ている活性の高い良型を狙いたいところ。ただし今年は何処も水不足のようで、飛騨川もやはり水位は低い。下呂の釣友によると流れがあるところに入れば反応があるだろうとの意見。ならばダムからの放水が期待できるエリアを中心に狙っていくことにした。
 明確な行動スケジュールが立てられなかったため、家を出たのは日の出からしばらく経過した6時前。峠道をお気に入りの音楽とともに走ると、自然と気持ちが高まってくる。心地よい朝の風を浴びながらドライブを楽しんでいると、それだけで満足してくるので不思議だ。いつもなら先を急ぐ道中も、今日は自然と周囲の景色を楽しむ余裕すらあった。心の解禁もこの瞬間だったのだろう。


【渇水と強い日差し】

 車窓を流れる岐阜の河川はどこも渇水のようで、白波が映える独特の青さが美しい付知川の姿はそこにはなく、その先の加子母川は更に深刻な渇水であった。今日は益田川漁協管内を中心に、まずは下呂周辺の様子を探り、その後は水次第で支流の小坂川まで行こうかと考えていた。国道41号の帯雲橋からの益田川は、鏡のように穏やかで、この先支流の小坂川まで行かないといい流れは期待できないだろう。ならば水が効いているエリアを探していくしかない。そこで思いついたのは、昨年の今頃、同じような状況で良型に出会うことができたあのエリアだった。
 8時半に現地に着くと強い日差しにウェーダーを履こうという気にはならなかった。そこで今季初の飛騨川は、いきなりウエットスタイルで挑むことにした。この水量であれば腰まで水に漬かることは無い。水は冷たいが短時間でれば問題ないだろう。早速着替え始めるといきなり汗がにじみ出てきた。ステイホームで体力が落ちた体にいきなりの真夏日。厳しい釣りになりそうだ。


【ファーストポイント】

 ここは岩盤を切り裂くように流れが続き、渓相はほぼV字型。降り場や釣り場は限られている。水深は深い淵は3m程近くあるだろうか。上流の吐水口からはこの日も適度な水量の流れが放出されているので期待ができる。この水が活性の高い魚を呼ぶ流れを形成し、これがなければこの釣りは成立しない。この流れの中の狙いどころは、岩盤の岸際と巻き返しのヨレとその下に位置する開き。特に開きは適度な流速と水深を備えたトロ瀬となり、これに大岩が絡む流れはいつ喰ってきてもおかしくないポイントだ。
 この流れに理想のトレースラインを刻むことをイメージし、切りたった岩盤に最適な釣り座を求め、滑りやすい岩肌をへつりながら静かに水面に近づいていく。そこから息を殺して静かに水面にルアーを送り込む。先ずは手前の岩盤際から様子を伺った。


【タックル】

 ロッドはイルフロッソTILF−67。しなやかなティップと感度のいいブランクのロッドだ。これにPE0.8号を巻いた軽量のシマノバンキッシュC3000MHGを合わせ、リーダーはフロロの10LBをFSノットで結束した。メインラインは少し太いかもしれないが、この流れの中であれば問題ない。
 ターゲットは活性の高い大アマゴ。この流れの中でルアーに反応してくる魚は、それなりの体形と運動能力を備えた大型。そのためここではチェリーブラッドのCB-MD82、75、70の各モデルにDEEP70、これに波動に訴えるD-contact72、85が中心になってくる。強気のルアーセレクトだが、この流れの中ではバランスの悪いルアーは通用しない。またサイズが大きいほど流れに対して溜が効く。ここぞというところでアクションが破綻するようでは使えないのだ。


【攻略法】

 先ずは表層近くの反応を見ていく。チェリーブラッドMD82Sのヤマメを少し沈ませながら、荒瀬の落ち込みの対岸にできた岸際の緩流帯に送り込む。次に流れに馴染んできたところをダウンクロスで流していく。やる気のある魚が居れば直ぐに反応をしてくれるが、なければアクションを加えてフォローを入れる。気配を感じなければ数投で見切り、積極的に釣り下っていく。低活性の魚など端から相手にしていないのだ。
 基本的には表層からミノーを流し、何か気配を感じた時は少し誘いを入れるなどしてバイトチャンスを増やすように探っていくのが私のスタイル。その真逆のスタイルで挑む地元の釣友は、最短距離で魚にアプローチをかけていく。一緒に釣りをしたとき、D−コンタクト85をいきなりダウンに打ち込むスタイルに度肝を抜かれた。彼には活性の高い魚がイメージできており、その鼻先にレンジを合せるだけで釣りを組み立てている。これまでアマゴといえば70mmクラスのミノーと考えていた私は、それ以来90mmまで持ち込むようになっていた。反対にミノーを流して掛けていく私の釣りは、彼には新鮮に映ったようで、スタイルの違う釣り人との交流はいい刺激になる。「思い込み」や「決めつけ」は釣りの楽しさを狭くすることこの時始めて気づかされた。話がそれてしまったので元に戻そう。
 大きなルアーはアピール力と激流の中での安定感が全く違う。泳ぎ過ぎないのである。ここぞという時に必要な入力に対してリニアに反応してくれることが大切で、激しい動きばかりでは見切られ易く、また暴れ過ぎるルアーはミスバイトを誘発させる原因になると考えている。重要なのは魚にスイッチを入れさせる魅力的な動きをどう演出するのか?これではないだろうか?
 まだ飛騨川本流域での経験の浅い私は、シーズナルパターン、水位に変化に対する大型の行動パターンやつき場を整理している途上で、やっと昨年その糸口が見えはじめたところである。今季も昨年のパターンを頼りに、状況変化に対して魚たちはどのように対応するのか確かめながら、データを打ち込んでいった。


【開きを攻める】

 荒瀬の岸際をMD82Sで流してみたが、今のところ反応はない。流れは去年よりも弱いが、釣り人にとっては丁度いい流れだ。核心部の開きに向かって期待はさらに高まっていく。V字の岩盤が徐々に広がり、まばらになった白泡はそのまま深瀬を下り、頭を出した大岩に向かって流れていく。岩の手前で少しが盛り上がった流れは、対岸に向かうタイトな流れと、そのままの深瀬に大きく変化しており、ここが魚のつき場であろう。

まずは素直に大岩の前とその両サイドの岸際をMD82Sで探っていく。岸際にタイトに送り込み流れを掴むと、流れにラインをとられないようロッドを立ててトレートに流し、魚にルアーを見せていく。次にダウンクロスで流れを横切らせるとMD82Sの後ろに何か違和感を感じた。
「?」
再び同じコースを流し、ターン直後に少し強めのトゥイッチで誘いを入れる。
「ドン!」

魚はいきなり喰ってきた。ギラっと陽ざしを受けた魚体は、反転すると流れに逃げ込もうと激しく抵抗しながらローリングする。直ぐに寄せることなく魚の動きに合わせてやり取りを続けた。頭を水面に出させないように注意し魚を落ちつかせていく。しばらく抵抗していた魚もこのやり取りで大人しくなり、次にランディングするポイントを探し始める。足場が高く滑り易い足元に注意しながら、魚に刺激を与えないように静かに水面まで近づき、ゆっくりと寄せてランディング。
体高のあるいい魚。顔つきからメスのアマゴであろう。長さは37cm。いきなり最初のポイントでいい魚に出会うことができた。真上から降り注ぐ陽ざしでさらに眩しく感じた。








【これから】

 久し振りの釣りであったが、思い通りの釣りができた。昨年同様シーズン前半から良型に出会うことができ、今後の釣りは少し楽になった。釣友との交流や通うことで少しずつ攻略法が見え始めてきたようにも感じられた。  これから梅雨を迎え、川は増水による水位変化が起きる。これが夏鱒に出合う最大のチャンスで、このタイミングを有効に使いたいものだ。各河川の水の収まり方や水位ごとの情報を整理し、厳しい夏の釣りを効率よく楽しんでもらいた。私も川の状況を見極めながら、飛騨川に限らず様々なフィールドに行ってみたいと考えている。


● マイタックル

◇ロッド スミス イルフロッソ TILF−67
◇リール シマノ ヴァンキッシュ C3000MHG
◇ライン ヨツアミ G-soul W8 PE 0.8号
◇リーダー フロロ 10LB
◇ルアー スミス  チェリーブラッドMD82S MD82 MD75 MD70 DEEP70  チェリーブラッドSR90 T2  SR90 90SS  LL90S  DEEP90  MD90S MD90
DDパニッシュ 80S 80SP 80F
パニッシュ85 85SP 70 70SP
D−コンタクト85 72 63 バック&フォース リッパ13g 16g
メタルミノーEX  ドロップダイヤ5.5g  エッジダイヤ6.5g
◇フック   スミス シュアーフック 2G 3G 4G
◇スナップ  スミス SPスナップ ♯1



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