冨安 隆徳

愛知県豊川市在住。ルアーで四季折々の魚を求め釣り歩く、アウトドアが大好きなサラリーマン。

主なターゲットは、九頭龍川の桜鱒、天竜川水系遠山川のアマゴ・イワナ等。


《 2020 九頭龍川釣行記 (番外編その2) 》


【お陰様で100本目】

 このレポートで節目の100本目になります。800本越えの荒井さんにはとてもおよびませんが、よく続いたものです。継続は力なりとはよく言ったもので、今や雑誌や社内のレポートもそれほど苦痛に感じなくなりました。続けることって大切ですね。


【リンゴの木を植える。】

 さて巷はコロナで大変なことになっています。観光や飲食業者の方々は更に厳しい状況のようです。先日も地元の料理店で店主が深々と頭を下げ
「このような時にご来店いただき本当にありがとうございます。」
と心からのもてなしを受けました。
 不謹慎なことを申し上げるつもりはありませんが、不特定多数が集まる催しを開催もしくは出かけることは如何なものかと思います。ただ全て自粛でいいのかな?上手に付き合う方法もあるのではと感じ始めています。特定の仲間と野外で楽しむことは、影響が少ないと思うのです。むしろストレス解消の面から推奨されるべきではないでしょうか?そういう意味では大自然の中で楽しむ釣りは、最高のリラクゼーションではないかと思うのですが・・・・。騒がしいメディアやSNSから少し距離を置き、溢れる情報を取捨選択し、自身の身は自分で守る。これはウイルスに限ったことではありません。いまこの国で起きている残念なことの多くが当てはまるのではないでしょうか?難しいことはさておき、「釣り」通じてリフレッシュする。楽しみながら経済を回すことも大切だと思うのですが。
 「たとえ明日、世界が滅びるとしても、今日、あなたはリンゴの木を植える。」
 開高健の名言ですが、私もこれにならって仲間とリンゴの木を植えに行きました。濃厚接触を避け、騒がしい街の喧騒から隔絶された山上のダム湖に、2匹目のドジョウならぬランドロックサクラマスを求めて。


【フィッシングプラン】

 今回は仲間3名の釣行。現地の道の駅に8時に集合。いくら水温が低い山奥のダム湖とは言え渓流釣りで8時集合とはあまりにも遅いスタート。実はこれには訳がありました。早春の山上湖は水温が低く、早朝から高活性の魚は少ない。地元エキスパートの助言やこれまでの経験則からの判断からなのです。

 2つ目の理由はポイント争いが皆無であること。ダム湖は回遊待ちが基本でポイントが広く、遡上鱒のような点の釣りではないことがあげられるでしょう。首都圏に近い中禅寺や芦ノ湖などのメジャーレイクではないため、釣り人がそれほど多くないこともあります。
 そんな気楽に釣りができる湖の釣りに、今少しずつ魅力を感じ始めています。この週末もサクラマスの状況が芳しくないことから、今回もこのダム湖に仲間とともにゆっくり向かったのでした。


【傾向と対策】

 今季このダム湖は好調が続いている。大きなものは50cmを越える大型サクラマスも捕らえられており、大イワナ、サツキマス、ニジマスに至る豊富な魚種で釣り人を楽しませてくれている。大型に出会えなくとこ尺クラスの銀毛したヤマメやアマゴが姿を見せてくれるので、サクラマスで鍛えられた釣り人にはまさに楽園のような釣り場である。
 好調の要因は憶測の域を出ないのだが、降雪量が少なく雪代が早めに収束し、水温も平年に比べ高めに推移したところからくるのではと言われている。そのためワカサギの接岸が早めに始まり、大型トラウトの活性が上がったように感じている。岸際で大型のプラグを突き上げるように喰ってくる様は、まさにそれを証明する象徴的なシーンではないだろうか?前回の釣行でも9cmのミノーを躊躇なく喰っており、捕らえられた鱒がワカサギを吐き出したことは、その仮説を裏付けるに充分な要素であると考えられる。
 そこで今回はミノーイングを中心に、ラインを少しライトして挑むことにした。直前の釣行では岸際の濁りは反応が無かったが、沖のクリアな水色ではセンターバランスのメタルジグにいい反応がでたようだ。少し沈めた後のただ引きが特に喰いが良かったという情報もある。スプーンだけでなくセンターバランスのメタルジグやシンペンもボックスに潜ませ、釣り場に入っていった。


【キャンプ場前】

 前日までの予報は終日曇り空だった。しかし当日はみぞれ交じりの雨が降る厳しい天候。水位は直近の降雨で若干増えてはいたが、大きな変化は見られない。メインチャネルは前回と異なり澄んでいたが、反対に本湖側は降雨の名残が残り、白濁したささ濁りで前回よりも条件は悪かった。濁りの中は渋いとの事前情報で、最初に選んだポイントは水色のいいメインチャネルのバックウォーターに程近いキャンプ場裏。傾斜が穏やかな斜面はアクセスも楽だった。手分けしてポイントに入り、各々の釣りを開始した。私は本湖側の地形変化が激しく、水深のありそうなポイントに入り、サクラマスの回遊を待った。


【タックル】

 ロッドは今回もイルフロッソTILF-83にシマノのバンキッシュC3000MHG。PE-0.8号は前回と同じだが、リーダーはナイロンの10LBと少し細くした。今回からは量産モデルのチェリーブラッドCB-SR90T2を持ち込んでいた。色は濁りが気になったので視認性の良いチャートゴールドを最初に選び、キャストを開始した。


【濁り対策】

 前回の釣行では、表層から水面直下を激しくトリッキーな動きで、リアクションの釣りを心がけた。しかし今日は濁りが強めに入り透明度が低い。この濁りへの対策は色以外に何があるのだろうか?
 強めのアクションによる水押しで側線に訴えるか?
 それともスローにしっかり見せるか?
 何が効果的なのか探ることから始めていった。先ずはアピールカラーでゆっくり引いたが反応が無い。次にリアクションの釣りを試したが興味を示さない。沈黙の時間が続き、情報交換をしようと濁りが少ない上流側の仲間のもとに向かうと、30cm程のシラメを釣っていた。やはり濁りの中では反応が鈍いのか?そう判断し少し濁りが薄いポイントでCBSR90T2を引いたがこれにも反応がなかった。あまりに反応が無いので大きくポイント移動を提案しようと再び仲間のところに向かうと「粘らなきゃ!」と言わんばかりにシラメを3匹見せて満足げな釣友の姿。表層付近をセンターバランスのメタルジグのただ引きで喰わせたようだ。
 「表層」、「メタルジグ」。このキーワードからあるルアーが頭に浮かんだ。それはCB LL90S(リップレス)。早速沖にロングキャストし、着水後すぐにアクションを加え、まずは「動」の釣りで誘い、岸際は水面直下をゆっくりと引く「静」の釣りにシフトダウン。僅かにウォブリングしながらゆっくり引いてくると、まとわりつくような当たりとともに何かがCBLL90Sのグリーンゴールドを喰ってきた。テールフックを咥えて水面で激しくローリングし始めたが、リアのフックはシングルに付け替えてあったので外れる心配はなかった。魚の正体はハラハラと舞う銀色の鱗を纏ったシラメ。グリーンバックに朱点が入り、鱗の下には薄らとパーマークが浮かんだスリムで、いかにも湖育ちと思わせるスレンダーな魚体であった。
 シングルフックはそもそも岸際のかけあがりに潜む大イワナ狙いのためのものであった。本釣行では残念ながらイワナからの反応が得られなかったことはここで報告しておこう。
 その後当りが続かず雨も本降りになってきたので、雨宿りを兼ねて早めの昼食をはさんで後半戦に備えた。


【午後の釣り】

 予報では曇天の筈だった。しかし実際は11時頃からみぞれ交じりの雨。早春の山上湖の寒さは厳しく、手袋なしでは釣りができなかった。一旦雨宿りを兼ねた昼食でリフレッシュして午後1時から釣りを再開した。昼食を早めに切り上げたのも昼から3時ことまでが反応がいいという現地情報を重視しての行動で、ポイントも前回サクラマスを獲ったガレ場。険しい斜面を降りて、眼下に見る釣り場に向かう。2週間ほど前よりも水位は若干上昇していたが、一番の違いは水色であった。白濁とした濃いささ濁りの水色は、午前中魚からの反応が薄く苦労させられていた。一同に陰りの表情が浮かんでいたことは言うまでもない。あまりの水色の違いに今日は厳しいと私は決めつけてしまっていた。居ないことを確認するような釣りで、少し雑な釣りをしてしまっていたようだ。バケの釣りはメンタル面が大切だとはよく言われている。2人は今季初めてということもあり、何の疑いも無くサクラマスが喰ってくると信じて釣りを続けている。この違いがこの日のファーストバイトに表れた。
 私はSR90T-2をカラーローテーションしながら、今日のパターン「静」の釣りと1週間前に結果の出た「動」の釣りを交互に試しながら、ガレ場の奥に進んでいった。仲間から50m程以上も離れてしまったが、ここまでSR90T2に魚からの反応は無い。ネガティブな思考で釣りが雑になっていたようだ。しばらく沈黙の時間が続き我慢ができなくなり、水色のよかった午前中のキャンプ場に移動しようと、仲間のところに戻ることにした。


【回遊の気配】

 回遊を信じて投げ続けていた仲間は、この水色の中でまずまずのサクラマスと思われる魚を掛けたようだ。残念ながら足元でバラシしてしまったようだが、熱くなってキャストを繰り返していた。近くで喰ってきたようでチャンスがあるのではと言っている。
 「やはり居たか!」
 釣友のバラシは残念だったが、濁りの中で諦め気味の私の気持ちを切り替えてくれた。「回遊はある!」そう信じSR907T2を再びポイントに打ち込み探り始めていった。
 「ただ引きで掛けた!」と語る釣友のカラーはグリーンゴールド。キャンプ場で私が使っていたCBLL90S(リップレス)のカラーを見て選択したようだ。そこで私もチャートゴールドSR90T2に結び変えた。ゴールドのホログラムと背中のチャートが強い印象を与えるアピールカラー。早速濁りの湖面にフルキャストして探り始めた。


【移動距離は少なく】

 ポイントに入った時には追い風だったガレ場も風向きが変わり、横殴りの強風になってきた。飛距離が自慢のSR90T2も、流石にこの風では押されて左に流されてしまう。水面は波立ち荒れ模様となり終了時刻も目前に迫ってきた。この濁りの中でも魚は喰ってきた。回遊はある!そう信じてルアーを投げ続けた。
 ルアーを引きながら今日の釣りの中に何かヒントはないか考えていた。振り返るとゴールド系のルアーをしっかりと見せたときに反応が多かった。そこで強い「動」の釣りの動きにアレンジを加えていく。トゥッチング時のリトリーブを控えめにして移動距離を抑える。これにストップ&ゴーでメリハリをつけ、濁りの中のリアクションを誘った。


【ニジマス?】

 結果はすぐ出た。岸際の3mのドロップオフの深みからいきなりルアーに襲い掛かってきた。勢い余ってそのまま水面を割って高くジャンプして、沖に走っていく。
 「あ!ニジマスだ!」
 余りの激しいファイトに釣友が口走った。
 「なんだ!ニジマスか〜!」
 我々はランドロックのサクラマスを狙っている。当然40cm程のレインボーは外道扱いであった。ただニジマスは引きが強く、ジャンプを繰り返し激しく暴れるファイターである。ここは贅沢を言わずファイトを楽しんだ。水面を割って右へ左へジャンプする魚を無理に寄せることなく、充分疲れさせて大人しくなったところをランディング。ニジだと思ってファイトしていた魚はなんとサツキマス。42cm程の銀ピカの魚体には朱点が入っていた。濁りの中のリアクションだったためか?リアフックを咥えていたが、激しいファイトの中でベリーのフックのスレ掛かりに変わり、ニジマスと勘違いする程の激しいファイトになったようだ。いずれにしても今回もランドロックの良型トラウトを手にすることができ、湖の釣りに対する苦手意識も少し薄れてきたようだ。








【これから】

 これまでこのダム湖の印象は決していいものではなかった。キャンププラスに釣りで訪れることも多かったものの、釣りに集中できていなかったこともあるのだろう。私の中では止水エリアはアウェーといった感覚であった。今季2回の釣行でこの苦手意識も、思い通りの釣りができたうえに釣果にも恵まれ変わりつつある。釣り人が少ないこともあり、自由にポイント選択できることも魅力であり、フィールドの選択肢をひとつ増やすことができた。
 馴染のフィールドに通い詰めて極める釣りの楽しさもあれば、今釣れる釣りを楽しむ釣りもいい。今季のサクラマスの不調が私に釣りの楽しみをまたひとつ増やしてくれた。年齢を重ねることで釣りへのスタンスも少し変わりつつある。釣り人として人として成熟していくためにも、様々な釣りや人物とに触れ経験することの大切さを教えられた気がした。
 一日も早くあの煩わしいウイルスが収束し
「あんなこともあったね。」
と振り返えられるときを待ちわびながら、自分なりのフィールドでリンゴの木を植え続けようと思っています。これからもよろしくお願いします。
101回目はぜひサクラマスでレポートを書けるよう精進します。


● マイタックル

◇ロッド スミス イルフロッソ TILF−83 TILF−67
◇リール シマノ ヴァンキッシュ C3000MHG  ステラC3000
◇ライン ヨツアミ G-soul W8 PE 0.8号
◇リーダー バリバス ナイロン 10LB
◇ルアー スミス  チェリーブラッドSR90 T2  SR90 90SS  LL90S  DEEP90  DEEP70 
MD90S MD90 MD82S MD82 MD75 MD70
DDパニッシュ 80S 80SP 80F
D−コンタクト85 72 63
バック&フォース 13g 16g  メタルミノーEX  バッハスペシャルジャパンバージョン18g
ピュア13g 18g ベイティスU 22g 17g
◇フック  スミス シュアーフック 3G 4G
◇スナップ スミス クロスロックスナップ ♯2



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