冨安 隆徳

愛知県豊川市在住。ルアーで四季折々の魚を求め釣り歩く、アウトドアが大好きなサラリーマン。

主なターゲットは、九頭龍川の桜鱒、天竜川水系遠山川のアマゴ・イワナ等。


《 2020 九頭龍川釣行記 (番外編) 》


【解禁を前に】

待ちに待った解禁だ。川はどうなっているのだろうか?
流れは?
遡上は?
新しいシーズンの幕開けに新アイテムが花を添えてくれた。
イルフロッソ TILF-83 
チェリーブラッドSR90 T2
どれも熱く、ワクワクさせてくれるものばかりだ。
どんな出会いがあるのか?
どんな試練や楽しみが待っているのか?
高まる思いを内に秘め北に車を走らせた。


【解禁日】

 今年も解禁早朝から九頭龍川の川岸に立つことができた。夜明け間もない流れには熱き想いの同志が立ち込んでいた。魚が足を止めそうなポイントには必ず釣り人の姿があったが、中流域のポイントは気持ちよく釣りができた。午前は瀬を中心にウェーディングの釣りを展開し、釣り場の情報は入手できたが、肝心の魚の手掛かりは全く得られなかった。午後からは下流域に移動し、仲間と情報交換をしたのだが芳しい情報は何もなく解禁日の釣りを終えることとなった。

厳しい!
ふと厳しい2006シーズンが脳裏をかすめる。
遡上が遅れているのか?
それとも少ないのか?
いずれにせよ厳しいシーズンを予感させた。当然翌日もこれといった成果もなく、悪い予感は日を重ねるごとに現実のものになった。3月を迎えようとしているのに、報告された釣果は数尾。釣り人は少ないながらも有望ポイントには釣り人は入っていると聞いている。
水も悪くない。
何がいけないのだろうか?
普通に考えれば遡上が遅れているか少ないかのどちらかである。状況が好転するまでしばらく静観するしかないだろう。そんなもやもやした2月の下旬にとあるSNSの画像に目が釘づけになった。それは知人のランドロックサクラマスの画像であった。
「その手があったな。」
ハッとさせられるとともにこの言葉を思い出した。
「今釣れるものを釣っておけ!」
頑なにターゲットを追い求めるのもいいが、目の前の魚を釣ってからで遅くない。狙いの魚のみに執着し、視野の狭くなった私に先輩が掛けてくれた言葉だった。経験を重ねてきた今だからこそ理解できる言葉でもある。 染みる〜!
 この日3月1日解禁の岐阜県のダム湖にランドロックサクラマスを求めタックルの準備を開始した。


【チェリーブラッドSR90 T2】

 湖の釣りは久し振りだ。春の陸封鱒はこれまで手にしたことはなかった。SR90 T2を止水で試すいい機会になる。早速テストサンプルにフックをセットし、数個のスプーンとともに湖に持ち込んだ。
 3月にリリースになるチェリーブラッドSR90 T2は、穏やかな流れに対する動き出しの速さと少し強めのローリングが特徴のフローティングモデルである。フラッシング効果が高く、河川改修で浅く緩やかになりつつある河川のサクラマスや、止水域のトラウトのためにチューニングされたニューモデルだ。2年前からテストを開始し、昨年の九頭龍川でその効果は理解しているつもりだが、湖でどんな反応を示すのか興味があった。
 それにしてもSR90だけでもF(フローティング)、SS(スローシンキング)、そして今回のT2と3種もリリースするところがスミスらしいところではあるが。(笑)


【爆風の中で】

 ダム湖には6時頃到着した。雪は無いが流石に寒い。久しぶりでポイントの記憶も曖昧だったのでまずは湖を眺めながら曖昧な記憶を頼りにポイントを絞り込んでいく。本流筋のバックウォーターは濁りが入っていたが、本湖や幾筋かのインレットは濁りがなく、エメラルドグリーンの水面は適度な水量があり、渇水といった状況ではなかった。
 変化のある岬やインレット周辺の風の当たるポイントに狙いを定め、入渓点に駐車スペースを探しながら最初のポイントに車を止めた。そこは東西から張り出した岬で湖面が絞られ、切り立った断面は水中の激しい地形をイメージさせた。雪のない熊笹が生い茂る斜面を10分かけて慎重に降りて行くと、北から吹きつける秒速10m以上の強風が容赦なく吹きつけ、波立った岸際の水面は赤土が巻きあげられ濁り始めていた。
 「寒〜い!」
 悴む指を擦り合わせながら準備を始めた。


【タックル】

 ここにはイルフロッソTILF-83を持ち込んだ。8.3ftのしなやかなロッドで、ラインの抜けの良さはと軽快なキャストフィールは私の好みのフレックス。ここでは70mmクラスのミノーをメインに考えていたのでバンキッシュC3000MHGにPE0.8号を結んだライトなセッティングで攻めていく。この軽さならば長丁場になりがちなこの手の釣りのストレスを軽減してくれるはずだ。
 最初に結んだルアーはバック&フォースリッパ13g。あまりの爆風。強い向かい風で70mmのミノーは全く歯が立たない。そこでリッパの遠投性能に期待し、中層を回遊するサクラマスを狙っていくことにした。強風の中ではラインが更けて狙いのトレースコースを通すことはできない。そこでいったん沈めてメンディングし、思い描いたトレースラインを丁寧に引いてポイントを刻んでいった。カウントダウン、バックドリフト、リフト&フォールと様々なアレンジを加え誘っても反応はない。次に糸ふけを生かし、風にラインを乗せて表層から中層付近をドリフトさせて誘ったがこれにも反応がない。回遊していないのか? ピックアップ寸前に岸際のブレイクに沿っていったん沈め、かけ上がりに付いているイワナを狙って探りを入れるがこれにも反応がない。これをリッパ13gから16g。バッハスペシャル18g、ベイティスU17g、22gと徐々にウエイトとアクションを変えながら、メタル系の最後はメタルミノー。フォーリングと中層のファストリトリーブを試したがこれにも反応がない。
 そう簡単に女神は微笑んでくれなかった。


【銀鱗眩しいファーストフィッシュ】

 まったく気配がないため、フォローのプラグを通して次のポイントに行くことにした。急激なかけあがりなので岸際にイワナが潜んでいるのではないか?僅かな期待をもって送り込んだルアーはチェリーブラッドDEEP90の赤金。岸からのドロップオフを平行に引くイメージで爆風に乗せてロングキャストし、着水後すぐは早めに引いてサクラマスを、岸際はスローリトリーブで狙いのイワナをイメージして狙っていった。
 キャストを始めて数投目。沖から引いてきたミノーが岸際のドロップオフに差し掛かった時に、ガツンというあたりとともに魚がヒットしてきた。イワナと思い込んで寄せてきた魚は、水面で眩しく光を放ちながらローリングしている。正体は30cm程のシラメだった。
沖から追ってきたのか?それとも岸際を回遊していたのか?パラパラと水中に舞う小さな鱗が日の光に反射して眩しかった。今年の最初のトラウトは、サクラマスとは呼べないスリムな30cm程のシラメとなった。
 その後直ぐにキャストを続けたが、群れが去ってしまったあとなのか?全く反応がないため、爆風の中で斜面にへばりつきながら風裏のポイントに移動をしたが、日差しがあたるほのぼのとしたワンドは魚の気配はなかった。春らしい日差しに私の狩猟本能はどこかに行ってしまい、日向ぼっこもいいなという気持ちになり、午前の釣りはここで終了にした。


【楽しいひととき】

 折角ここまで来たのだから近くに住む仲間に連絡すると、暇にしてるから今から来ると言う。ならばと2人でブチキャンプとなった。私がスキレットでローストビーフを焼いてサンドウィッチを作り、入れたての深入りのドリップコーヒーの香りと素敵なサンソンをBGMに、他愛もない話で釣友との愉快なひと時を過ごした。楽しい時間は過ぎるのは早いようで、もう時刻は3時になろうとしていた。山中のダム湖の日暮れは早い。手早く片付けを済ませ、タックルを準備しながら彼を見送り、大岩のガレ場に入っていった。


【気配はあった】

 ガレ場では私と入れ代わりに先行者が上がってきた。45cm前後のサクラマスやニジマスを複数手にしていたが、当たりが遠のいたので帰るとのこと。彼らによると昼過ぎに入って数時間、飽きない程度に当たりやチェイスがあったが、3時を過ぎてピタリと反応が無くなったそうである。地元の釣り人らしくこの3時までがいつもの時合で、一般に反応がいいと言われる夕マズメはこの湖に関しては該当しない!と言い切って帰っていった。気配はたった。この湖のいい情報を入手できたが同時に今の私には残念な情報でもあった。それでも遠路はるばるこの湖に来たからには、夕マズメを目前にして帰るわけにはいかなかった。
 日差しが無くなると激しかった風は弱まり、気温も急に下がってきたようだ。彼らは手前での表層で喰ってくると言っていた。少しクイックでキレのいい動きのリアクションの釣りが良かったと判断した。ミノーはあまり小さなものを使っていなかったようだった。魚から推測すると90mmは全く問題ない。それでは最初からチェリーブラッド CB SR90 T2を試していくことにした。帰りのことを考えると1時間半ほどしかできないだろう。いつもよりも大胆でスピーディーな釣りに徹し、広範囲に活性の高い魚を狙って釣りを始めた。


【SRの使い分け】

 幸い風裏のポイントであったためにルアーが良く飛んでくれた。イルフロッソのトルザイトリングはノットが大きめの私のラインシステムでも引っかかりが少なく、ルアーが矢のように飛んでいく。着水後すぐにリトリーブを開始し、水深50cm程の表層をハイパートゥッチングで引いてくる。最初のカラーはプロトのゴーストアユ。湖の定番ベイトワカサギをイメージし、少しでも似ているゴーストカラーを選んだ。テストピースは区別しやすくするために赤目が入った仕様になっている。T2は弱めの入力に対しても機敏に反応するミノーで湖のスローリトリーブ時でもしっかり泳ぐようにセッティングされている。今回のように少し強めに早く引いても、泳ぎに破綻をきたすことはない。SRが持つブランクそのもののバランスの良さで泳ぎ切ってくれる。私は本流などの強い流れはSR。ドリフトや送り込みたい流れではSS(スローシンキング)。渇水時等の流れが穏やかな水深の浅い本流や止水域ではT2がお勧めである。


【喰った!】

 ロングキャスト後、少し早めのアクションを入れて引いてくる。時には強めに、時には優しく変化を付けながら岸際まできっちり引き切る。足もとからいきなり深くなっているので何処から喰ってきて不思議ではない。10m程引いてくるといきなり横から魚が飛び出してきた。
喰った!
 この時サクラマスであると確信しており、大きさに対し慎重すぎるほど優しいやりとりをしながら魚を徐々に寄せていった。今回リリーサーはマグネットではなく、古くからある真鍮の洗濯ばさみのようなタイプで、自分の手で外さないと取れない仕様を試していた。左手にロッドを高く掲げ、魚の動きを見ながら右手を背中のD環に回して外していく。五十肩の初老には厳しい姿勢だが、魚の前では腕がすんなり上がるから不思議だ!
40cm弱の鱒だったのでブレイクの心配はないが、針掛かりだけが気になった。やりとりのなかで魚の動きに少なからず違和感は感じていたが、水面に浮かせてもローリングしない様子に少し疑い始めていた。一気に取り込んだ魚体は、薄緑色の背中に無数の斑点がある頭の丸い魚。一目でサクラマスではないことがわかり思わず苦笑。
ただ渋いと言われる時間帯で、T2でバイトが取れたのが素直にうれしかった。これに気をよくして次を狙い始める。
 あわよくばサクラマスを!
 手早くレインボーをライブウエルに納めて釣りを再開した。


【獲った!】

 静かな湖面に魚のファイトで水しぶきが飛んだ。少なからず水中の魚にプレッシャーを与えてしまったことだろう。そこで更に10mほど奥まで進み、今度はCB SR90 T2のエマージエンシーレッド(プロトカラー)に結び変えて釣りを再開した。そして数分後、水深のある岸際の手前10mほどのところまで引いてきたT2のエマージェンシーオレンジに、底から突き上げるように何かがルアーを襲った。咥えて反転すると一気に川底に戻ろうとする白銀の魚体を、イルフロッソのしなやかなバッドで受け止めながら行く手を阻むと、魚は溜まらず水面に浮きあがりローリングを始めた。
 やった!今度こそサクラマスだ!
 先ほどの魚以上に慎重にやりとりをしながら手前に寄せると、40cmオーバーのサクラマスが水面に浮きあがってきた。人影を見るや水面で激しく抵抗し、ラインを巻きつけながらローリング。次にネットを嫌がりジャンプをしながら最後の抵抗を見せる。ここは一旦落ちつかせようとハンドドラグで沖に送り、静かになったところを一気にチェリーネットサツキでランディング。
 獲った!
 ランドロックサクラマスと胸を張って言える魚を初めて手にすることができた。薄暗くなった湖面に横たわるサクラマスは九頭龍の魚に比べれば随分小ぶりだが、そこは立派なサクラマスの顔をしていた。何時見ても精悍で凛々しい魚体であった。








【これから】

 このレポートがWEBに載るころには九頭龍川にも活気がもどり、いつもの釣りができる事を祈っているが、今のところいい情報は聞こえてこない。
 前回不漁だった2006年も思い返せば、不調の九頭龍川から距離を置き、3月末まで天竜川でニジマスを追いかけていたように記憶している。連休までは水位や現地の情報をWEBで調べながら、水位が下がった5月の連休後になんとかその年の貴重なサクラマスを手にしていた。今季もこの時と同じことになりそうな気がしている。2006年は高水で釣りにならなかったが、2020年は反対に渇水に悩まされそうな気配がある。
 いずれにせよ短期勝負で遠征組には厳しい状況になりそうなシーズンだからこそ、先輩の言葉にあるように今釣れる魚を釣っていきたいと考えている。その時までは仕事に家族サービスに精を出し、旬のターゲットの釣りを楽しみながら、遡上が始まれば直ぐにでも駆け付け、少ないチャンスをものにしたいと考えている。
 この時期九頭龍川だけになっていた早春から初夏のトラウトだったが、これをいい機会として少し視野を広げていこうと考えている。果たしてどんなトラウトシーズンになることやら?とりあえず2020シーズン開幕しました。今季もお付き合いよろしくお願いします。


● マイタックル

◇ロッド スミス イルフロッソ TILF−83 TILF−67
◇リール シマノ ヴァンキッシュ C3000MHG  ステラC3000
◇ライン ヨツアミ G-soul W8 PE 0.8号
◇リーダー バリバス ナイロン 16LB
◇ルアー スミス  チェリーブラッドSR90 T2  SR90 90SS  LL90S  DEEP90  DEEP70 
MD90S MD90 MD82S MD82 MD75 MD70
DDパニッシュ 80S 80SP 80F
D−コンタクト85 72 63
バック&フォース 13g 16g  メタルミノーEX  バッハスペシャルジャパンバージョン18g
ピュア18g 13g ベイティスU 22g 17g
◇フック  スミス シュアーフック 3G 4G
◇スナップ スミス クロスロックスナップ ♯2
◇ネット スミス チェリーネット(サツキ)



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