池谷 成就

ルアーでのキャスティング、レイクトローリングを中心としたビッグトラウト狙いのエキスパート。 「かわせみ倶楽部」主宰。


《 解禁2日目のスレ魚 》


ここ数年暖冬の影響で釣りのしやすい状況が続いている長野県佐久漁協管内、解禁二日目の2月17日。毎年私の休日が解禁日にあたらないので苦戦を承知の釣行だが、本当に苦戦する。
この時期(解禁当初)の悪いパターンとして、入渓後数投のうちにアタリがあり、ドラグセッティングも、心の準備も整っていない時のアタリは、解禁日に大勢の釣り人に狙われてスレた喰いの浅い魚ほどバレるという最悪のパターンに陥ってしまう。次は大丈夫と必要以上にドラッグを強め小さなあたりでもアワセてやると意気込んでいると石や流木にひっかけてポイントを余計に場荒れさせてしまう。
焦りは負の連鎖に陥ることは長年の渓流ルアーフィッシングにおいて判ってはいるものの、ついつい解禁という言葉に翻弄されてしまうのが解禁だ。心の準備も、ベイトタックルならばとっさにスプールを抑える動作サミングでフッキングさせることもできるし、スピニングタックルならば人差し指を伸ばしスプールを抑えるフェザリングすればいいのに、動作自体が凍り付いたように一瞬の躊躇がバレを呼んでしまう。


思えば今年の渓流解禁は、二年を費やしたベイトロッド「トラウティンスピンベイトクラシックシリーズ」を思う存分使える。最も苦心したのはベイトロッド特有の“トリガー”を、思い切って小さくしてみたかった。一日中とは言わずとも数十回とロッドをふり続けていると、このトリガー部分はどの指に当たっても痛くなってくる。スミス開発室ロッド担当がこれ以上はウッドの特性上無理ですというところまで小さく削った。さらにグリップを指型に削ったので握りやすいロッドグリップと自負できる。ベイトロッドでは、リールが上側にくるのでリールグリップはとても重要な部分なんだと訴えたかった。
アクションにしてものシャロースプールを使った超軽量級ベイトの釣りにおいて“ハリ”をやや味のある曲がりに仕上げたかった。カーボン内の樹脂を極力減らし、ガイドを小さくしてさらに軽量化することにより、必然的にアタリを敏感に伝えてくるのでよりゲーム性は高まるという発想は、見た目の柔軟性より、以外や粘りとパワーを引き出せたと思っている。


当日まずはTBC-53L一本縛りでのキャストに徹してみた。絵に書いた様に体が反応しない解禁当初のバラシ病。2月としては記録級の暖かさに、水温9℃。高活性かと思えばそうでもない。水温的にはこの渓流ならば瀬に出てきても不思議ではないが、ポイントを丁寧に狙うもアタリなし。石裏やえぐれを狙わないやぶれかぶれキャストで油断していると浅いアタリをバラシ、アタリさえ遠のいていく悪いパターン。水温だけに翻弄されてはいけないのに気付く。

釣り座を移動。ロッドさえ持っていれば河原を歩く口実にはなる。いい散歩だと。ところが解禁2日目はまだ釣人が多く自由に動けない。よさそうなポイントを見つけてはダウンストリームキャストでちょっと粘ってみる。


不意の来客に近くの喫茶店で2時間ほど話をしていると、同行の妻がイワナとヤマメを釣ってきた。一昨年あたりからスキーが終わると渓流釣りになぜか燃えている。夏場は山荘近くに住み2〜3時間ながら毎日のように釣行する山守(やまもり)・川守(かわもり)みたいな名人級の女性釣師と、むしろ私より山奥のイワナを狙うようになった。しかし、まあよく転びカメラをはじめタックルもよく壊す。渓流歩きはたしかに早いが慎重さに欠ける。時には買ったばかりの熊避けスプレーさえ転んだひょうしに落とす。後ろから着いて行くとランディッグネットやらいろいろな物を拾う。ちょっと姿が見えないと浮き石や流木を踏み抜き、すっ転がっているのには笑えないが、いじわるだが面白さはある。




夕方は急激にいつもの冷え込みに寒さがきつくなってきた。風も強くなってきた。なかば諦め気味で最後の一投は水深のあるトロ瀬の流芯にダウンキャスト。ゆっくり逆引き状態でリリーングしてくるとやっとこさヤマメが釣れたのがキリとなった。帰りの道中ふと浮かんだのが、「解禁の 祭りのあとの スレ山女魚一尾」字余り。お粗末でした。


● データ

佐久漁協 日釣り券1,300円


● 使用タックル

ロッド トラウティンスピン ベイトクラシックTBC-53L
リール アルファス Rエディション103L(AVAIL改)
ライン フロロブラスト3lb
ルアー D-コンタクト50ジェイドMD-SPバック&フォース4g

《スピニングタックル(妻)》

ロッド トラウティンスピン マルチユースTRMK-504UL
リール 00ステラ2500
ライン ファメルトラウト4lb
ルアー D-インサイト44バック&フォース4g



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