■ 悔やまれる一尾
翌朝は上流域の開きのポイントに入ることにした。瀬を遡上した魚はこの開きで一息つくはずだ。長いランの後半で水深が浅くなるポイントを、朝まずめのいい時間帯に攻められるようにタイミングを計りながら入川した。先行するフライマンよりも少し沖目にウェーディングし、対岸にフルキャストし、水中の大石や流れのヨレをイメージしながら流していく。ゆったりとした川の流れは瀬に近づくにつれ早くなり、水深も浅くなってきた。 少し釣り下り、ダウン気味にキャストしたチェリーブラッドMD90が、水面を捉えてすぐに魚からの反応がった。いきなり水面が割れ、ラインが一気に下流に走った。糸フケは取りきれていない。当然あわせは不十分だった。サクラマスとは思えないバイトに活性の高いウグイが喰ったのだろう?と思い込んでいた。下流に下った魚は、次にこちらに向かって走り出し、再びラインがふけた。魚種を確認しようとラインを回収し、その感触を取り戻した時、既に魚は足元まで来ていた。
「ウグイだよな?」とロッドを立てると水中に白銀の魚体が水中にぼんやりと浮かび上がった。「ヤバイ。サクラだ!」思わず声を上げてしまった。ラインは残数メートル。まだ疲れていない元気なサクラマスが足元に居る。「バレる!」その不安が脳裏をかすめた瞬間、水面を尾鰭で激しく叩きながら抵抗する魚からフックが外れ、またもラインのテンションが抜けた。判断を誤ったために、悔やまれる一尾となった。
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