池谷 成就

ルアーでのキャスティング、レイクトローリングを中心としたビッグトラウト狙いのエキスパート。 「かわせみ倶楽部」主宰。


《 雪代と菜種梅雨 》


群馬県の北西部に源を持つ吾妻川上流部の4月は雪代と菜種梅雨がほぼ同時にやってくる。 下界が雨でも山頂部には真っ白な雪が多く残り、山並みが最も美しい時期でもある。

ただ標高千メートルを超えるこの地区の朝は寒い。薄氷やうっすらと雪化粧も珍しくはない。


そんな春先の菜種梅雨の雨あがり、ふらっと吾妻川の上流部、JR吾妻線の終着駅「大前駅」前に入ってみた。 北軽井沢からは下っていく感じで、気温も若干暖かく感じる。

こんな話を聞いたことがある。 「嬬恋村のキャベツ農家は、農閑期は晴れれば大前駅前で釣りしてる。」と。地元の社交場でも ある大前駅前の吾妻川本流。当然ルアー激戦区でもある。護岸され河川工事が若干続いているため 釣味には欠けるものの、なぜかこのあたりの風情・風景に惹かれる。

僕は撮り鉄でも なければ乗り鉄でもないが、一日5往復程度と一日の平均乗降客50〜60人ほどの 関東最西端無人終着駅というとてものんびりとした風景は好感がもてる。 魚影の濃さ云々より僕はここが好きなのかもしれない。


雨もあがり若干の雪代も混じった薄く笹濁りの流芯にバック&フォース4gを ダウンストリームにキャストし、流芯中層やや上でルアーが激しく暴れているのがロッドに伝わってくる。 ポジションをとっている左岸は鉄網に囲われた石積みが階段状に積み上がっている絶好のポイントにして 最も得意とするホリゾンタルジギングつまり水平にジギングできる、

バック&フォース釣法できる シチュエーションは直ぐに答えを出してくれた。まあまあの良型イワナは逆引き状態でピンと張った ラインに強烈なアタリとともに、魚信を伝えてきた。水深80cmほどのやや早瀬の攻防は時にイワナ反転攻勢に、 時にリーリーングにと数度のやりとりのすえ釣れあがった。

この深瀬からは数尾のイワナが顔を見せてくれた。



今度は大きく護岸され人工的に作られた段々瀬から大きな渕へと変わる渕尻にバック&フォース4gを やはりダウンクロスでキャスト。ゆっくりリーリーングし、時折軽くショートピッチのそれほど 早くないジャーク気味のトゥイッチを入れてやると今度はヤマメ。

小型とはいえ結局このスプーンとジェイド、 それにD-コンタクトに次々にヒットすること十数尾。陽が陰り始めると気温は一気に下り始める。




JR吾妻線最終が19:53なので、その一本前17:06の電車がホームに入ってくる頃には、アタリはこの日の 最終となってしまった。

大前駅下車徒歩数十秒の渓流ポイント、しかも駅に隣接する宿泊施設では 温泉にも入れる贅沢。そんな 終着駅の駅前ヤマメと、のんびり過ぎる時間をともに戯れる釣りは如何だろうか。


● データ

吾妻漁協


● 使用タックル

ロッド マジカルトラウトULフラッシュMTS-TE55HUL(改)
リール アルファス103TypeF(アベイル改)
ライン ファメル フロロブラスト3lb
ルアー バック&フォース4gD-コンタクト、ジェイドMDSP



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