冨安 隆徳

愛知県豊川市在住。ルアーで四季折々の魚を求め釣り歩く、アウトドアが大好きなサラリーマン。

主なターゲットは、九頭龍川の桜鱒、天竜川水系遠山川のアマゴ・イワナ等。


《 2014 九頭龍川釣行記 》


■ 解禁

 2014の九頭龍は久しぶりに雪のない解禁だった。直前での増水もなく川は低水位。解禁日の釣果は、予想通り最下流部の高屋橋周辺が中心であった。ただ少ないながら中流部からの釣果も報告されており、今年の九頭龍川もそれなりに期待がもてそうだ。

 私は下流部を中心に釣りを組み立てたものの、何の反応もないまま解禁を終えた。


■ 変わり果てた川

 川は大きく変化をしていた。中角橋〜九頭龍橋の右岸で護岸工事が進み、緑の多かった川はコンクリートやテトラ護岸の人工的な水路に変わろうとしていた。川に近寄れないポイントも多く、変わり果てた九頭龍川の姿に思わず呆然とした人も多かっただろう。私もその1人で、このエリアが好きな釣り師には大きな影響があると思われる。

 釣り場へは入りやすくなるが、岸際の地形はしばらく単調なままであろう。オーバーハングした木々で釣り難いため竿抜けとなっていたポイントはことごとく潰され、フラットな川底は着き場が読みにくく、下流部での釣りの魅力がますます薄れてしまったように感じる。

 そのうえ釣りを組み立てる上で重要な情報源であった中角の水位計も、これまでよりも少し低めの数値を示すようで、ポイントごとの適水位を再び把握する必要が出てきた。これは遠征組には大きな負担で、厳しいシーズンを予感させた。


■ 厳しかった中流域

 いやな予感は的中した。増水が殆どなかった前半戦は、下流部が釣果の中心だった。私が早期に入る下流部はこの工事エリアに含まれ、今シーズン思うような釣りをさせてもらえなかった。右岸からの入川が制限され、限られた左岸のポイントに人が集中し、落ち着いて釣りができる状況ではなかったのだ。

 越前フィッシングセンターによると、絶好調であった2010年を上回る釣果が報告されており、どれだけ高屋橋周辺に釣果が集中していたかを物語る結果となった。

 この厳しい状況に変化があったのは3月末。3mクラスの増水で、これ以降中流部からの釣果が多数報告され、いよいよ遡上が本格化した。


■ 盛期の4月

 4月最初の週末に下げ水のタイミングで平日を絡めて3日間のスケジュールで九頭龍に入った。川は3月末の増水により釣果は好調に推移していた。今朝も平日にも拘わらず有望ポイントには必ず釣り師の姿があり、プレシャーを避けながらランガンを繰り返したが、何の反応もないまま平日の釣りは終了。午後から天候は悪化し、夜中の激しい雨で週末の釣りさえも危ぶまれるほどであった。

 翌朝土曜日。川は灰色の濁りとともに水位が再び上昇していた。「なんてことだ?」天気を呪ったものの、自然が相手ではどうしようもない。ここはじっくりと水位と濁りを確認しながら影響の少ない上流部で、今後の展開を考えながらポイントチェックをすることにした。

 午後から天気は回復し、日が差してくるようになった。水色も少しずつ透明度が増し、明日以降は充分期待が持てる。結局2日目も何事も無く終わったが、午後からは魚も確認できた。この増水で魚に動きがあったようで、確実に中流部から上流部まで幅広く差している。「あとはタイミングだけだ。」そう自分に言い聞かせ最終日に向けて早々と床に就いた。


■ 早朝の幼稚園裏

 翌日曜日。日の出とともにポイントに入った。夜明け前に水位を確認し、2日間の釣行から上流部である幼稚園の左岸を選んだ。鳴鹿堰堤から幼稚園にかけては底石が大きく、その前後や僅かな地形の変化にサクラマスがつく。中でも最下流部の分岐点とかけあがり周辺のシャローは私の大好きなポイントでもあった。


 ポイントに着くと既に先行者の姿があった。この釣り師に続き、瀬の頭から流し始める。ロッドはインターボロン IBXX−83MSD。広範囲に攻めたいのでこのレングスを使用した。濁りはあるものの、コンディションは悪くない。お気に入りのチャートオレンジのチェリーブラッドMD90SとMD90を流速や水深で使い分けて、流れに馴染ませながらゆっくりと送り込んでいく。怪しいポイントでは誘いを掛けながら喰わせの間を与え、反応が無ければカラーを変え、分岐点周辺まで流して行った。

 瀬、開きを釣り下り、ポイントの半ばまできたところで2人の釣り人が下流に入ってきた。狙いの分岐点はすぐそこ。一番に攻めたくて早起きをしたのだが、これで4番手になってしまった。

 いつもなら諦めるか、ネガディブに考えるところを、今回は気持ちを切り替え攻めようと心がけた。特に影響が出やすいリトリーブスピードは普段よりも遅く、釣り下がるスピードまでもペースダウンし、充分距離をとり続いていくことができた。


■ マイペース マイゲーム

 有名ポイントでの釣りはどこでもこんなものだ。いかなる状況であっても、リズムを崩さないよう強い意志をもって挑まなければ、確率の低いターゲットを手にすることは難しい。有名ポイントは極力避けてきたが、盛期の増水後の下げ水に入れること頻繁にはないため、当然この程度のことは覚悟はしていた。ゆっくりと気を落ち着かせながら底石を舐めるようなイメージでルアーを流すことだけに集中した。

 今日の幼稚園裏は流れも充分にあったため敢えて誘いは少なめ。ローテーションの中心はMD90S。シンキングながら動きが素晴らしく、僅かな流れのなかでもしっかり仕事をしてくれる。リップに若干の抵抗を感じられれば、ほとんど糸ふけを取るだけで充分だ。このシンキングの送り込みが私のメインパターンで、ゆっくり魚にルアーを見せながら棚を合わせ、魚が潜むと思われるポイントで僅かに誘うことに徹している。

 ただリズムが狂うとリトリーブが早くなったり、不用意にトゥイッチを入れたりと自分の釣りを見失ってしまう。そうならないためにもこれまで以上にゆっくり流すことを心がけた。


■ 静かなバイト 力強いドラグ音

 分岐点に近づき地形は下流に向けて序々に変化していく。かけあがりを過ぎたころから流れも少し速くなってきた。ここで先行者がナチュラル系を結んでいたのが確認できたので、再び濁りに強いアピール系のチャートオレンジに変更。彼は分流のミオを横切りそのまま本流筋を下っていく。どこまで行くのだろう?そう思いながら、続いて下っていった。

 MD90Sチャートオレンジは早い流れを横切り、本流と分流との地形の変化できた流れのヨレ辺りでゆっくりとターン。その時だった。全く当たりがないままドラグが鳴り、勢いよくラインが引き出されていく。力強い引きにニゴイのスレかと勘違いしたが、強引に寄せると水しぶきの中で僅かに白銀の魚体が確認できた。「あ。ニゴイじゃない。サクラだ!」久しぶりのサクラマスは本当に眩しかった。

 ここからは慎重にやりとりを始め、掛かり具合を確認する。しっかりとベリーのフックが蝶番に掛かっている。「大丈夫だ!」。水面で暴れないようロッドティップを下げながら慎重に寄せ、一旦上流に誘導する。魚の動きを確認し、水面に横たわって静かに浮いたところを一気にチェリーネットでランディング。サイズは60cm。大型のネットなのでこのクラスであれば安心してランディングできる。体高があるグッドプロポーション。鱗もパラパラ剥がれるフレッシュな魚だ。



 昨年の福松橋下流の魚もそうだったが、この送り込みの釣りの場合、ドラグ音が魚からの最初のあたりになることが多い。サクラマスは違和感なくバイトしており、腹のフックをガッチリ咥えてバレの可能性は少ないように思う。しっかり見せることが確実なバイトに繋がるということなのだろう。

 狙い通りのポイントから魚を引き出すことができ、此れまでの苦労が報われた気がした。今シーズン、周囲の好調ぶりに乗り遅れた感があり、自分の釣りに自信が持てなくなっていた。そんなモヤモヤを解消してくれたサクラマスであった。


■ これからの九頭龍川

 4月に入り中流域から上流部まで広範囲に魚が入っているようだ。いよいよ盛期を迎える九頭龍川。瀬からトロ、ディープに至るまで様々なポイントでこの釣りを楽しむことができる。

 GWにかけて田植えによる水位低下と濁りの影響などはあるものの、久しぶりの大量遡上が予想される2014シーズン。数年に1度の好釣果に沸く九頭龍川でサクラマスゲームに挑戦してみてはいかがでしょうか?


● マイタックル

◇ロッド スミス インターボロン IBXX−83MSD
◇リール シマノ ステラ 4000
◇ルアー スミス チェリーブラッド DEEP90 MD90S MD90 MD82 MD82S
   DDパニッシュ 95F 80S
   バッハスペシャル18gベイティス17・22gピュア18g
◇ライン ヨツアミ PE G-soul WX8 1号
◇リーダー リーダー バリバス ナイロン 20LB
◇ライン スミス チェリーネット サクラ




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