池谷 成就

ルアーでのキャスティング、レイクトローリングを中心としたビッグトラウト狙いのエキスパート。 「かわせみ倶楽部」主宰。


《 手のひらヤマメ、木葉(コッパ)ヤマメ 》


 大雪で出遅れた今年の渓流も、菜種梅雨(なたねつゆ)空のやさしいどんより加減は、春の木々の水分を急激に吸収するのを助ける。実に良くできた自然のバランスだ。

 そんな渓流それも普段簡単には入れないポイントにバイクにザックそしてテレスコピックモデルのパックロッドで入渓してみた。ところは榛名山懐某渓流の砂防ダムインレット。25年ぶりの隠し渓流に不安を抱えながらも、あてにならない記憶に地元のお爺さんに林道入口を教えてもらう。思ったよりたいした距離は無く、あっという間にポイントに着いた。



 早速テレスコピックロッドのガイドを直線的にセットし、元ガイドをベイト用に若干小さいものに変えた程度の改造ロッドにベイトリールをセットする。ルアーはバック&フォース4g。

 まずは流れのなかをゆっくり気味にリトリーブするものの、チェイスも無い。水温が低いのか流れの深瀬には影も無い。


 次は砂防ダムのインレットをやや遠投。深緑の深場とやや黄色がかった馬の背が複雑に入り混じる底の状態を見ながらやや早引きリトリーブしているとコツン、コツと何かが当たってくる。

 深場でリトリーブを一時中断しキラキラとスプーンを落とし込んでみた。ファーストヒット。24cmほどの木葉(こっぱ)ヤマメだ。春のヤマメはやさしい顔をしている。渓流の女王と言われる所以だ。



 セカンドキャストもやや遠投気味にダウンストリームキャスト。流芯をほんの少し外し気味に心地よいルアーの動きのテンションが伝わるていどのリトリーブに、今度は水中の馬の背頂点でヒット。カケアガリから一気に食いにきたか。菜種梅雨気味の天候も幸いしたか、そんなことがこの日は2時間ほどで40尾も続いた。

 背ビレの先端を三角に黒く染めたサクラマスの幼魚のような魚体。背中の胡麻塩状の黒点の全く無い個体。少ない個体。多い個体。パーマークのない擬似銀化。普通にパーマークヤマメと、ここのヤマメの千差万別の個体差には驚いた。群馬県の制限尾数は20尾だが、釣っては写真を撮ってリリースを機械的に忙しく繰り返した。ファイトだけは充分堪能させてもらった。




 ところが欲をかくとろくな事はない。中小のヤマメしか釣れてなかったのに、キャスティング後特段深くフォールさせてリーリングし始めた時にとてつもない大鯉がルアーをくわえ下流にゆっくりとトルクで降っていく。75mのラインはあっというまに終わりを告げ、ブチンという鈍い音と共に釣り終了の合図と変わってしまった。帰りは春まだ冷たい風も梅の花満開の道を心地よく走った。


 今回は漁協名を書くとポイントが判ってしまうので、あえて記さなかったことお許し願いたい。


● 使用タックル

ロッド マジカルトラウト(ヘビーウルトラライト)MTS-TE55HUL改(元ガイド2個付け直し)
リール アルファス103TypeF改(AVAIL)
ライン ブラストフロロ3lb
ルアー バック&フォース4gヘブン7g



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