冨安 隆徳

愛知県豊川市在住。ルアーで四季折々の魚を求め釣り歩く、アウトドアが大好きなサラリーマン。

主なターゲットは、九頭龍川の桜鱒、天竜川水系遠山川のアマゴ・イワナ等。


《 2013 飛騨川釣行記 6 》


■ 夏から初秋に

 高山は8月も後半になると朝夕はすごしやすくなってきた。日中は相変わらずの暑さだが、随所に秋の気配が感じられるようになった。瀬に入っていたアマゴたちは徐々に流れから姿を消し、淵や深場、日陰の思わぬボサ下の浅場で静かに潜んでいる姿が見られるようになった。朝夕の気温の低下が魚たちに秋(産卵)を意識させたのだろうか?私たち釣り人はその変化を把握し、夏から秋へと攻略パターンをシフトしていく必要がある。産卵を控えた魚たちにとって居心地がいいのはどこなのか?下流からの遡上魚は差しているのか?

 昨年婚姻色の入ったアマゴをこの渓で確認してから、この魚を獲るためのポイントのチェックなど情報収集をしてきた。いよいよその成果を生かす秋がやってきた。有望ポイントを回りながら、下流から差してくる大型魚の遡上を待つことにしよう。淵だけでなく流れの中の小さな深場も見逃さずに。きっと足を止める場所があるはず。秋の気配を感じ始めたこの時期。淡々と攻め続ければきっと結果はついてくる。そう言えば去年初めてあの魚を見たのは9月上旬だった。気の早い魚が差していないだろうか?胸ときめく季節がやってきた。


■ 難しい初秋の攻略法

 8月下旬の釣行では、森の中の淵や落ち込み、日陰がからんだ浅い流れや岩盤の際からの反応が良かった。これまで大型のイワナも時折姿を見せてくれたのだが、めっきり姿を見なくなってきた。アマゴよりも先に産卵を意識し支流を目指しているのだろうか?アマゴも少し色付いた個体が多くなり、流れの中は既に秋に移行しつつあるようだ。

 当然季節の移り変わりとともに魚の付き場が変わり淵を攻める機会が多くなった。少し深いレンジを意識したウェイビーやジェイドMD、D−コンタクト、D−インサイトが今やローテーションの中心だ。ただ日中は未だに夏。念のため瀬も攻めてはみるものの、朱点鮮やかな警戒心の薄いアマゴの子供たちが反応するだけで、良型の姿はやはりそこには無かった。水位も少し下がってきたため、遡上魚のスイッチが入る増水が待ち遠しいところである。

 その一方で夏の日差しがとダムからの流れのある淵では、銀毛したアマゴが白銀の魚体をギラつかせながらミノーに喰ってくる。サツキマスを思わせる激しいバイト。ポイントや固体ごとに活性の異なるこの状況に、この季節の攻め方の難しさを実感する。どの攻め方が有効なのか。何が正しいのか?魚に答えを出してもらうしかない。





■ 川へのアプローチ

 9月に入ると日中も過ごしやすく朝夕は肌寒くなってきた。川での服装もウェットスタイルからウェーダーに戻し、来たる秋アマゴのシーズン到来に気持ちが高まっていく。心地よい秋風は渓魚の活性を高めてくれると思いたいのだが、やる気があるのは小型のみ。良型は深い淵や物陰に身を隠し、やる気があるとは思えない。この時期魚が溜まりやすい淵や深場だが、水温が下がる朝マズメは反対に低い水温が影響し追いが悪いことが多く、必ずしも朝マズメに活性が高いとは言い切れない。そのため早朝は深い渓や淵を攻めることはせず、むしろお昼以降に森に入るようにしている。大型が潜んでいそうな深場は、実際に竿抜けになっている場合もあり、攻め方次第で先行者の後でも充分に勝負になると考えているからだ。

 狙っているのは産卵を意識し上流を目指す遡上魚。この魚を深い淵ではなく開けた小規模な落ち込みや淵で狙い撃つ。日が高くなる前の警戒心が薄れた時間帯に、勝負の速いこの攻め方で有望ポイントをランガンしていく。水深が浅く先行者の影響を受け易い場所だからこそ、プレッシャーが掛かる前に川に入ることが重要なのだ。


■ 9月中旬

 9月の中旬の釣行では遡上のきっかけとなる高水はなかった。この低い水位で魚たちは水深のある淵に集まっているようだ。また上流からの濁った水で釣りにくくなっていた。可能性のあるポイントを探った結果、流れの影響を受ける深場で魚が確認できた。

 ルアーはしっかり中層からボトムをトレースできるルアー、ジェイドMD、D−コンタクト、ウェイビー、ピュア5gに反応がよかった。特に波動の大きなスプーンは、充分攻めた後でも多くの魚を引き付ける能力があり、ボトムを意識したこの釣りでは魅力的なルアーのひとつであった。反対に濁りの中でナチュラルさ故にアピール不足であったジェイドMD。しかし持ち前の高い潜行能力とレンジキープ力に、トリッキーな動きを加えることで、中層に定位していたアマゴから抜群の反応が得られた。


 この釣行での一番の収穫は、赤黒くなった秋色の魚を確認できたこと。ジェイドMDで落ち込みをダウンで攻めていた時、ピックアップ寸前に水面に姿を現しルアーにアタックしてきた。残念ながらフッキングはできなかったが、今年初めての色付いた魚の出現に、折れかけていた気持ちに再び火が付き俄然やる気が出てきた。

 翌日も同じ支流を私が上流を、釣友が下流に分かれて攻めてみた。私はD−コンタクトをアップでボトムまで沈め、良型のアマゴを。友人は婚姻色の入ったアマゴを掛け損ねたものの数尾のアマゴに出合い、この渓の素晴らしい魚をお互いに確認することができた。禁漁までにもう一度あのアマゴに出会いたい。出会うだけでなく掛けて獲りたい。お互いにその思いを強くし渓を下ることになった。




■ 終盤にむけて

 いよいよ禁漁が近くなってきた。渇水とは言わないまでも徐々に水位が下がり、そろそろ雨が欲しいところである。

 幸い台風が近くにいるようなので少し水が高くなるとありがたい。今年は本流域に近いエリアでまだ秋色の魚を確認できていない。しかし森の支流域では既に秋色を纏った魚たちが密かに産卵の時を待っている。恐らく大型の秋色アマゴは、次の増水を待っているはずだ。その魚たちが私のチェックしたポイントに差したとき、念願の秋色アマゴに出会えるだろう。そう信じながら禁漁までこの川に通うことにしよう。


● マイタックル

◇ロッド スミス インターボロン IBXX−60MT
◇リール シマノステラ C2500HGS
◇ライン ラパラ ラピノバ PE0.6号
◇ルアー スミス ジェイドMD F・SP ジェイド F・SP
   トラウティンウェイビー50S AKM48
   Dコンパクト Dコンタクト Dインサイト44・53
   ピュア日本アワビ5g ハンドメイド50SP 65SP
   パニッシュ 55F・SP  DDパニッシュ65SP 



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