冨安 隆徳

愛知県豊川市在住。ルアーで四季折々の魚を求め釣り歩く、アウトドアが大好きなサラリーマン。

主なターゲットは、九頭龍川の桜鱒、天竜川水系遠山川のアマゴ・イワナ等。


《 2013 遠山川釣行記 》


■ 1年ぶりの遠山川

 毎年桜鱒が終わると、夏アマゴ、イワナを求めて遠山川に入るのがこれまでの釣行スケジュールだった。しかし去年は度重なるゲリラ豪雨や台風による土砂崩れの発生、不幸な落石事故により川への道路は通行止めになってしまった。

 今年は解禁から通行可能になったようだが、制限があるようで釣りに集中できそうもない。今回は無理をせず比較的アクセスが容易なエリアで釣りをすることにした。


■ 午後からスタート

 初日は午后3時のスロースタート。パニッシュ55Fで様子を伺う。カラーはこの川で実績があり、視認性の高いグリーンゴールド。ロッドは川幅もあるためインターボロンIBXX−60MTにPE0.6号を用意した。久し振りの遠山川の雰囲気を味わいながら、魚が潜んでいそうなポイントにルアーを通していく。しかし追いがない。あれ。どこに行ったのだろう。

 反応がないためアプローチを変え、メインの流れから少し外れた小場所にパニッシュを流すと、魚からのコンタクト。アマゴだとわかる鋭い当たり。あまり大きくは無かったが、初めての魚。バラさないように掛かり具合を確認し慎重にネットに収める。遠山らしく細いパーマークの鰭の大きなアマゴ。ここにいたんだ。久し振りに出会えたことがうれしかった。


 そこであたりまえのポイントは敢えて深追いせず、竿抜けポイントをいつもよりも丁寧に攻めることにした。すると小型のイワナやアマゴが反応してはくれたが、あまり活性が高くはなかった。人的プレッシャーと渇水で活性が下がっていたのだろうか。

 今夜は雨の予報。ならば早めに切り上げるか。そう決めるともうひとつの楽しみのため里に下ることにした。



■ 遠山郷 かぐらの湯


 夜は遠山郷 和田のかぐらの湯で汗を流し一晩過ごした。かぐらの湯は、天竜川沿いの日帰り温泉の中で、私の一番のお気に入り。硫黄分を多く含む透明の湯は肌触りが良く、満点の星空を眺めながらの露天風呂は格別である。

 夕食はもちろん遠山ジンギス。この地域独特のタレに付け込んだマトンの焼肉のことで、ビールとともにいただくのが一番のご馳走。ゆっくりと温泉と食事で疲れを癒し、恵みの雨を期待しながらテントに潜り込んだ。


■ 雨上がりの遠山川

 雨は朝まで降り続き、川の水色は残念ながら灰色に濁っていた。増水は歓迎だが、濁りは厄介だ。だめか?と諦めかけたが、念のため車を走らせると笹濁りだった。これなら釣りになる。そう確信し川に入っていく。

 幸い川には先行者はいない。流れは強くなったがこれもプラスに考えよう。タックルは昨日と同一。ルアーはパニシュ55SP 流れに対しルアーのアクションを控えめにするためにSPを選択し、流れの筋よりも大岩の前後の淀みや岸際の緩流帯を攻めていこう。流れも強いため思わぬ足元から出ることもあるだろう。

 きっちりと足元までルアー引くことを意識しながら攻め上がると、思ったとおりのポイントから魚が反応してくる。これでなきゃ。明らかに状況は変った。やる気が感じられた。小型のアマゴやイワナが多く、サイズには恵まれなかったが、飽きない程度に相手をしてくれた。

 10時を過ぎると日が差すようになり、水色も徐々にクリアーになってきた。深い森の中で、人に出会うことなく釣りができることに幸せ感じながら上流を目指していく。


■ かわいいやつ

 しばらくすると河原に赤い岩が目につくようになった。右岸から小さな沢。左岸は岩盤。中央には大岩と落差のある瀬により複雑な流れができていた。しかも水深もある。

 まずはパニッシュ55SPで表層を流したが反応がない。次に強めのフラッシングでアピールの高いバルサミノー65mmにチェンジし、流すラインを少し変えてみた。岸際に大きな岩が横たわり、流れがその前を通している。岩の周りは深く1m程。

 流芯の向こう側にキャストしたルアーを水に馴染ませながら、大岩の前を横切らせ反応を見る。なんの反応もない。次に流れに乗せてポイントを通過させ、大岩の下流のヨレをダウンでゆっくり引いてくると黒い大きなイワナが姿を現し、ルアーにアタックしてきた。「あ!出た。」胸鰭を広げた真っ黒い良型のイワナ。小さな当たりはあったがフッキングには至らなかった。

 針に触れたので二度目はないだろう。そう思ったが、念のため少しラインを変えてアプローチすると、また追ってきた。かわいいやつだ。そう思いながら、ロッドティップで喰わせの間を与え、何とかヒットに持ち込みそのまま岸際の浅瀬に誘導しランディング。遠山のイワナらしい黒くオレンジの斑点を纏った固体。尺は少し切れたがいいイワナ。この魚で少し満足できた。


■ ジェイドMD連発

 さあ今度は少し苦手な水深のある落ち込みからの流れ。パニッシュ55SPをアップでキャストしたのだが、流れに乗せる間もなく流されてしまう。そこでジェイドMDで中層をダウンで誘う。

 このルアーは小さめのシャッドプラグ。真夏に瀬の頭から逆引きでイワナを引き出すなど、深みのピンポイント攻略に欠かせないプラグだが、今日のミッションは中層攻略。荒れた水面の下を流れる比較的穏やかな中層を、小刻みなアクションでじっくり見せて食わせるイメージ。試しに流してみると、表層に反応しなくなったアマゴやイワナが、次々と岩陰から反応してくる。残念ながら大型の姿は無かったが、少し深いレンジの魚を誘い出す能力は優れたものがあり、これまで積極的に使ってこなかったことを少し後悔した。何でも試してみることが大切だな。


■ 帰り際に

 いよいよ日も高くなり、アマゴを狙うには少し厳しくなってきた。そろそろ戻る時間だが、せっかく釣り人が少ないようなので、川を下りながら今日竿を出していない早い瀬でのアマゴの反応を見ながら戻ろう。

 天気はピーカン。気温も上昇し水温も上昇したことだろう。やる気のある魚たちが瀬に出てはいないだろうか。そう思いながらパニッシュのグリーンゴールドをダウンクロスで流し反応を見る。落ち込みなどの早く荒れた水面が少し落ち着いたところで、かわいいアマゴたちが遊んでくれた。

 雨上がりの澄み切ったお日さまのもと、気持ちのいい汗をかいたところでこの釣行を終えることにした。今回これまでの少し大きめではなく小さめのプラグを多用し、水深のあるエリアではレンジキープに優れたシャッドでいい反応を得ることができた。遠山川のように押しの強い流れに負けないこのルアーの活用法を、自分の攻め手に加えることができたのが収穫だった。

 1年ぶりの川だったが、極端な魚影の変化を感じることは少なかった。ただ天候もあっただろうが、日曜の早朝に釣り人を見かけなかったのは少し複雑な心境になった。この渓を取り巻く環境の変化を垣間見るような想いであった。今回自粛した上流部にはまだまだいいポイントや魚たちが待っているはず。なんとか山の状況が改善され、入渓できる環境が調ったときに、仲間とともに再び釣りに来よう。その時が早く訪れることを祈りながら。


● マイタックル

◇ロッド スミス インターボロン IBXX−60MT
◇リール ダイワ ルビアス 2000
◇ルアー スミス パニッシュ 55F・SP ジェイドMD F・SP ジェイド F・SP
トラウティンウェイビー50S スティル AKM48 Dインサイト44・53 Dコンタクト Dコンパクト
ピュア日本アワビ5g  ハンドメイド50SP 65SP他
◇ライン ヨツアミ G-SOUL PE0.6号 



[ 戻る ]