冨安 隆徳

愛知県豊川市在住。ルアーで四季折々の魚を求め釣り歩く、アウトドアが大好きなサラリーマン。

主なターゲットは、九頭龍川の桜鱒、天竜川水系遠山川のアマゴ・イワナ等。


《 2013 九頭龍川の桜鱒釣行記 》


■ 厳しいウインターシーズン

 今年の冬はいつまで続くのだろうか?春一番の便りは届いたが、いつになったら暖かくなるのだろうか?今シーズン週末の九頭龍川を訪れるウィークエンドアングラーはそう感じていることだろう。解禁直後は雪に悩まされることはなかったが、その後ほぼ毎週寒波が襲い、そうでなくても厳しいこの釣りのハードルの高さを思い知らされる。出会いには精神的な強さが求められる厳しい時期でもある。春はいつ来るのだろうか。

 今年は解禁日こそ攻められなかったが、直後の週末や全面解禁と積極的に川に立った。しかし祭りのあとの九頭龍川は、解禁後に掛かる急激なフィッシングプレッシャーなどで、例年並の状況となっていた。1月から2月に呼び水となる増水や水位上昇も少なく上流部での釣果も聞こえてこない。しばらくは8号線から下流域のディープエリアや、遡上ルートとなる“かけあがり”を中心に狙うフィッシングプランをたて、2月最後の釣行に挑むことにした。


■ 2月23日 ポイントチェック

 時折吹雪となるコンディション。早朝から有望ポイントには熱い釣り師が川に立ちこみ、杭と化している。私はいつものようにゆっくりと8時からスタート。焦ることはない。この時期早朝だけがベストタイムではなのだ。日の光や水位の変化などで活性が上がることはよくあることで、日中でも全く問題はない。大切なことはプレッシャーのかかり方を見極めながら、この僅かな変化を見逃さずに川に立つこと。やみくもに攻めても集中力が持続しない。

 水位は50cm前後で低く、水色はほぼクリア。中角橋、天池橋、8号線周辺を攻めながら、目視とルアーで川の情報をインプットしていく。ベストシーズンのための大切な作業で、この引き出しの多さが釣果に直結するためおろそかにできない。データ収集は出来たが釣果にはつながらない1日となった。


■ 2月24日 荒天

 早朝、爆風で目覚める。とても釣りになる状況ではないため、いつも以上にゆっくりと釣り支度を始める。ポイントに入ったのは9時過ぎ。こんな天候でも早朝から川に立ちこむ釣り師の姿が見られ、思わず頭が下がる。各ポイントとも人影はまばらでどこでも入れる状況。

 風が収まるのを待ちながら、九頭龍橋上流の合流部周辺からJRを釣り歩くが何の反応もない。JRは左岸側の流れが強くなったようで地形に変化があったので、今後の参考になった。早めの昼食をとり、午後からはディープエリアを中心に攻めることにした。


■ ファーストヒット

 この釣行で遡上モードの比較的活性の高い魚を狙い、流れの中のかけあがりを中心に攻めてきたが全く反応は無かった。この攻め方に対する自信が揺らぎはじめ、ディープエリアが気になり最下流部の高屋橋方面にポイント移動を始める。車で天池橋を通過中、車窓から中角橋を眺めると、左岸の中州に人影が見られなかった。急遽行き先を変更し、このポイントに入ることにした。

 今日の中角左岸は朝から強い向かい風と吹雪混じりの釣りにくい状況。時刻は1時過ぎ。恐らくお昼前からポイントは空いていただろうと考えたのだ。下流にはディープエリアを控え、遡上してきた魚が最初に通過しなければならないシャロー。幸い周囲にも人影はなく、すんなりとポイントに入ることができた。

 ロッドはロングキャストも必要なためIBXX−83MSD。静かにウェーディングしながら中州に立ち、流れ、水深、地形やストラクチャーをチェックしルアーを選択。流速もあるので敢えてディープではなく、自然に送り込むことができるチェリーブラッドMD90Sを選んだ。カラーはブルーピンク。このルアーはシンキングながら切れのあるローリングアクションで、九頭龍川で一番多用するモデル。狙いは水中に沈むテトラポットのすぐ下流にできる、流れのヨレと手前の中州がらみのかけあがり。ポイントのやや上流にポジションを取り、ヨレにルアーを通した後、かけあがり近くでターンさせ、そのままダウンクロスで引く。これを繰り返しながら徐々に下りながらかけあがりを流し切り、続く開きを同様にダウンクロスで攻めていくイメージ。

 流し始めて数投目、テトラの下流の荒れた流れをトゥイッチングで通すと“ドン”と鋭い当たりとともにドラグが鳴った。“ジー”。流れの中で水面に姿を現した魚はローリングを始め下流に下っていった。魚との間合いを取りながら無理に巻かず、テンションを掛けながら、開きで獲ろうと下っていく。久し振りのサクラからの手ごたえに、鼓動が高まり緊張感が走る。この瞬間がたまらない。

 まずは手前の緩い流れに誘導しながら流芯を切り、魚との距離を詰めていく。徐々に手前に寄ってきたサクラはやや小ぶりの個体。輝く白銀の魚体は薄いブルーの化粧を纏い、その美しさに見とれてしまうほど。ネットを用意しランディングの体制に入ろうと魚が浮き上がるのを待っていると、急に魚が上流に走りラインがふけてしまった。“しまった。”と思ったが、なんとか魚とはつながっていた。この時初めてテールフックのみであることに気が付いた。いやな予感が脳裏に浮かぶ。

 水面に浮き上がった魚はオリーブ色の背中を見せながら再度下流に走ると、リアフックに数枚の鱗を残し、流れに消えていってしまった。私は天を仰ぎその場に立ち竦むしかなかった。逃した魚は大きなものではなかったが、大きさ以上のダメージが私にはあった。いったん中州に上がり、ポイントを少し休ませながらラインを結び直し、気持ちを落ち着かせた。焦りはいい結果を生まないからだ。



■ 桜咲く

 数十分後、少し上流からやや深くウェーディングしながらトレースラインを変え、再チャレンジする。ルアーは目先を変えるために、ゴールドベースのエマージェンシーレッド。オレンジバックのアピールカラーのチェリーブラッドMD90S。前回よりもロングキャストしながらテトラ下流から開きにかけてのかけあがりを再び流しはじめた。今回あまりアクションは加えず、じっくり送り込みながら、流れのなかで水を掴ませるナチュラルドリフトで誘っていく。

 荒れた水面から徐々に穏やかな流れに変わる開きに差し掛かると、なんと再び魚からの反応。“え。”思わずそう叫んでしまった。この2月にこんなことがあるんだと思いながら、ファイトに入る。

 今度のサクラは直ぐに水面に姿を現すことなく、底にしっかり張り付いている。少しサイズアップしたかな?そう思いながら流れを下り、シャローに魚を誘導する。サクラは水中でこの魚独特のごねるような抵抗をし、激しくローリング。ロッドでいなしながらも無理なプレッシャーは与えずに、浮き上がるのを待つ。しばらくするとベリーのフックがしっかり蝶番に掛かった桜鱒が姿を現し、フッキングが決まったことを確認。これなら外れない。そう確信すると、ゆっくりランディングネットを用意し、完全に浮き上がったところでランディング。やった!今度は獲ったぞ!

 魚はシーライスを鰭に付けたフレッシュラン。ファイトで少し鱗がはがれてしまったが、体高のある美しい魚体。サイズは60cmあった。





■ これからの九頭龍川

 3月に入り本格的な遡上が始まる九頭龍川。型、数ともこれからが本番。雪シロによる水位上昇が今後の遡上を左右することとなる。下げ水のタイミングで川に入ることができれば大いに期待できる。4月までは早朝だけでなくとも十分チャンスはある。1級ポイントだけでなくても、魚が足を止めそうな地形や水流の僅かな変化を探すことができれば、自分のゲームを展開することもできる。大切なことはあきらめないことで、フィッシングプレッシャーのかかり方を考慮しながら、この川の桜鱒との出会いを果たしていただきたい。


● マイタックル

◇ロッド  スミス インターボロン IBXX−83MSD 77MSD TRBX−C84
◇リール  シマノ ステラ 4000 カルカッタコンクエスト200
◇ルアー  スミス チェリーブラッド DEEP90 MD90S MD90 MD82 MD83S ピュア18g バッハスペシャル18g他
◇ライン  ヨツアミ PE G-soul WX8 1号 ナイロン8LB
◇リーダー リーダー バリバス ショックリーダー 20LB
◇ネット  スミス チェリーネット




[ 戻る ]