2023 遠州灘釣行記 その3

冨安 隆徳

愛知県豊川市在住。ルアーで四季折々の魚を求め釣り歩く、アウトドアが大好きなサラリーマン。主なターゲットは、九頭龍川の桜鱒、天竜川水系遠山川のアマゴ・イワナ等。

【祭りの予感】


 この地域の冬の季節風は北西である。遠州灘ではこの風で魚たちの活性が上がることはこれまでも紹介してきた。確かに南向きの遠州灘は北西の風で波が抑えられ、ベイトが岸に寄りやすくなるのだが、魚たちの活性が上がる本当の理由は良く解らない。いずれにしても釣り人と魚の活性を高めてくれるのがこの北西の風である。
この日も数日前からこの風が吹き始め、先端地区では釣果が出ているようだ。
 ただ朝はゆっくりしていることの多い私は、7時頃に現地に入り磯に絡むサーフや先端地区をまわり、日が上がり切ると状況がよかった先端地区で魚の回遊を待った。

 この日の早朝の先端地区は北西の風を受けてベイトが寄っていたようで、うす暗い時間帯から鳥が回遊し、80cm弱のデップリとしたマダカが回ったようだ。この魚がベイトとともにサーフに回ってくれればと願いながら先端で鳥の動きを追い続けた。


【入電】


 この日は中潮。10時の干潮から北西の風に乗って浜に回ってくることを期待し、いつもの高台から浜を眺めていると仲間からの入電。
 「先端地区のワンドにベイトが入ってきそうだ!」
 時刻は13時過ぎ。潮も上げ三分といったところだろうか?直ぐに昼食を中断し、その浜に直行する。浜には連絡をくれた仲間と数人のつり人がいるだけだった。
 状況はこうだ。朝方先端を廻っていたカタクチイワシの群れが、北西の風と魚に追われて東に流され、サーフエリアの磯混じりのワンドに迷い込んだ。ここにベイトが入るとその中でグルグル回るため祭になることが多く、今日はその気配があった。先行部隊はワンドの中央部に陣取りキャストを続けており、後発の我々はこのワンドの最西端の磯場を目指した。西から浜に入ってくる群れの先頭を狙って浜を西に向かって駆け出した。

【マッチザベイト】


 するとまさに考えていたとおりの状況が目の前に繰り広げられた。西から真っ黒くベイトボ-ル化したカタクチイワシが青物らしき大型魚に追われて入ってきた。12cm程のカタクチは大型魚に追われ、しかたなく水面に飛び出し逃れようとしていた。ベイトのサイズは12cm程と大きくはない。この時私はハルカ165Fのマットチャートを結んでいいた。広大なサーフを探るには飛距離は絶対的なアドバンテージであるからだ。そこでまずは165Fで様子を見ていく。ボイルは頻繁にあちこちで起きた。私の足元の磯までイワシ達は追い詰められまさにパニック状態。しかしマットチャートのハルカには反応はなく、早々にローテーションを決断した。次に選んだのがシルバーベースのハルカ145Fサヨリカラー。サイズ感とカラーもばっちりだ。ベイトトボールの少し沖にキャストし、ジャークを入れてからのポーズで食わせの間を与えると、「ガツン」と何かがひったくっていった。マッチザベイトの重要性を改めて認識させられた。


【ブリ】


 ルアーに激しく喰ってきた魚は直ぐに沖には走らなかった。掛けたのは磯際のサーフ。早めに寄せるのは分が悪い。そこで沖に走らせようとしたがなかなか走ってくれない。しばらく引っ張り合いを続けながらゆっくり岸に寄せてくると、手前のかけあがりや岩を嫌って下へと向おうとする。マダカならばしばらくすると耐えきれずに水面を割ってエラ洗いをするのがお約束だが、この魚からはその気配を感じなかった。じりじりと時間は経過していった。少しずつ間合いを詰めて寄せにかかると今度は沖に走りだそうとする。岩礁帯付近まで寄せてきたのでここから走られるのは厄介だ。少しずつ頭を左に向けさせてゆっくりと浜に誘導していく。そして波に合わせて一気に浜に引き上げランディングを試み見る。すると白波の間から魚が姿をあらわし正体が判明した。
「ブリだ!」
ハルカ145Fが半分しか見えなかった。ハルカをしっかりと咥えた丸々とした85cmのブリだった。

【マダカ】


 まだ周囲ではボイルが頻繁に起きている。素早く画像に収め、次の魚との勝負をするために波打ち際に戻っていった。カタクチの群れは完全にこのワンドに入ったようだ。そうなると周囲でも竿が次々と曲がり始めた。カタクチを追って入ってきたフィッシュイーター達は次々と周囲の釣り人に釣りあげられていく。その多くが65cm前後のマダカで、12~12cmクラスのルアーに反応がいいようだ。
 私はそのままハルカ145Fで次の魚を狙っていった。カタクチの群れは北西の風と大型魚達により少しずつワンドの奥のサーフエリアに追い込んでいった。ベイトボールとなって浜に入ってきたカタクチの群れは、フィッシュイーター達により小規模な群れに分割されていった。その小さな群れをマダカらしき大型魚が、彼方此方で水面まで追い上げ捕食をし始めた。
 マダカ達は完全にフィーディングタイムに入り、いよいよお祭が本格的に始まった。この状態を冷静に分析し、私はハルカ145Fを岸際のブレイクの先10mほどのところにキャストして、先ほどのブリを喰わせたようにジャーク後に少し長めのポーズをいれると、今度はマダカが水面に出てハルカ145Fを襲った。直ぐに合わせ入れずに飲み込ませ、フッキングさせると流石に先程のブリとは違い、直ぐに岸に寄ってきた。そのまま魚に主導権を与えることなく、一気に浜にずり上げ2匹目をランディング。65cmのマダカであった。

【パニッシュ120SW】


 読み通りの展開に落ち着いてゲームを続けることが出来た余裕からか、当りが続くハルカ145Fを敢えて降板させ、ニューモデルであるパニッシュ120SWへの反応を見たい衝動にかられた。マダカにどんな効果があるのか?そのポテンシャルを探ってみたくなったのだ。ただこの時シルバー系のルアーを持ち合わせておらず、新色のグリキンハーフミラーとレッドヘッドの2種で反応を確かめていった。


【グリキンハーフミラー】


 先ずはグリキンハーフミラーから。私はこのカラーを使うのは初めてだった。ゴールドメッキにグリーンヘッドという今まで見たことのないユニークなカラーリング。サイズ感もこれまでのスミスのソルト用にはないサイズ感。サーディナーという往年のラインナップを彷彿させるそのサイズ感で、少しファットなシルエットはイナッコを思わせる。
 まずは今日の私のヒットパターンであるキャスト後のワンアクションにステイでマダカのご機嫌を伺っていく。岸際のブレイクや少し沖、フルキャストにより少し沖目を探ったが、直ぐに反応はなかった。カラーが合わなかったのか?ボイルは散発的に起きているので周囲にはまだターゲットは居るはずなのに?


【ラインブレイク】


 ベイトの本体はワンド中央から奥に移ったようだが、いま攻めている岩礁帯に全く魚が付いていないということは無かった。そこでレッドヘッドにカラーチェンジしキャストを始める。ここでもまた同様にジャーク後のステイでバイトを誘っていくと、数頭目で当りを捕らえた。引きの強さから先ほどの魚と同じであろう。少し強引にやり取りをして岸際に寄せるとここで魚は抵抗し、最初のランディングは失敗しそのまま引き波に魚をさらわれてしまった。ここで無理して強引に引き上げにかかるとPEが悲鳴を上げてラインブレイク。このサイズでは切られることは殆どないが、岩礁帯でのブリとのヤリトリでラインが痛んでいたのだろうか?簡単に切れてパニッシュ120SWレッドヘッドを魚に持っていかれてしまった。
 ここで改めて我に返り、じっくり時間をかけてラインシステムを組み直した。お祭の最中でなかなかできることではないが、万が一の大物に備えて心掛けるようにしたいものだ。
 ラインシステムの組み直しに数分を要したが、その後もお祭りは続いていた。仲間が既に4匹目のマダカとやりとりしている。ただどの魚も60cm前後で、特大のマダカはここでは回っていない。またまだ竿を曲げていない釣り人もあるので、ルアーセレクトやポイント攻略により釣果に影響があるのは間違いなさそうだ。青物が殆ど釣れていないところを見ると、大型のブリが最初にカタクチイワシをワンドに追い込み、次にワンドで待ち構えていたマダカがそれを捕食する祭りとなったようだ。


【祭りを振り返り】


 いずれにしてもファーストランの群れを上手く捕らえられた私はブリを掛けることが出来た。今回の群れは青物が薄かったように感じられ、青物の群れは一気にワンドを駆け抜けて沖に抜けてしまったようだ。
 ブリに追われてワンドに入ったカタクチは、なかなか逃げ道が見つけられなかったようで、その後もしばらくマダカ祭りは続いた。ただマダカも学習したようで最初のようにガップリ喰ってくることはなかった。またその一方で丁寧にルアーを動かした釣人には一定の配当があったようだ。釣友は12cm以下のミノーでバイトを誘発し、バラシを連発していたものの、それでも7尾のマダカをランディング。大きさは全て70cmを下回るものであったが、マダカとのゲームを充分に楽しむことができた。
 私はその後少新色グリキンハーフミラーのパニッシュ120SWで貴重なバイトを取り、65cmクラスをランディングできた。これもキャスト後のステイ、そこからのスローリトリーブによるもので、しっかりルアーを見せればガッツリ喰ってくるようだ。
この魚はパニッシュ120SWを丸呑みするほどしっかり吸い込み、口が閉まらない状態でランディング。何度も水面でエラ洗いを続け、良く暴れる魚だな?と思っていたらそんな落ちが待っていた。いずれにしても私たちは仲間の情報から良い釣りを楽しむことができた。

【北西の風を釣れ!】


 「伊良湖岬は北西の風を釣れ!」とはよく言ったもので、これにベイトの接岸が絡むとお祭になることがある。まさにこの日の午後は伊良湖岬の最強パターンを満喫することのできた1日であった。
 因みにこの日は夕マズメまでこの状況が続き、夕マズメには折角まとまったカタクチの群れをワラサが食い荒らして散らせてしまい、敢え無くお祭は終了したと聞いている。
 また最初にブリのファーストランで追い込まれたカタクチたちは、ワンドの奥に控えていたランカークラスのマダカの活性をあげたようで、数尾が捕獲されたと後から情報が入ってきた。
 強い北西の風が吹いたら、日中であってもこのようなお祭が起るのが伊良湖岬である。我々はその一瞬に出会うために岬通いを続けているのだ。
 まだまだ熱い伊良湖岬通いは当分やめられそうにない。

Rodスミス ブローショット サーフェッサーBSB-103SF
Reelシマノ ツインパワー4000XG
Lureスミス ハルカ145F/S 165F パニッシュ120SW ドラゴンサラナ サーディンランSS/F マグナムサージャー サラナ125F 147MAX サラナ147SR ベイブル90 90HS ハイパーブレード バスタージャーク120S メタルフォーカス 28g 40g 60g 80g
Lineヨツアミ G-soul SUPER JIGMAN X4 1.2号
    G-soul WX-8 1.2号
Shock Leaderバリバス ナイロン 35/40/50lb
Landing Toolスミスグリップ2700