冨安 隆徳

愛知県豊川市在住。ルアーで四季折々の魚を求め釣り歩く、アウトドアが大好きなサラリーマン。

主なターゲットは、九頭龍川の桜鱒、天竜川水系遠山川のアマゴ・イワナ等。


《 2020 遠州灘釣行記(その2) 》


【シフトチェンジ】

 今年は大型青物の接岸が遅い。中小型は頻繁に姿を見せてくれるのに。サゴシの寄りも悪いようで当然サワラなど言うまでもない。まとまったベイトの群れがサーフエリアに居続けてくれないからなのか?北西の季節風と水温の低下を願いながらも、消化不良のまま12月を迎えた。12月上旬の満月の潮回りは何事もなく終わってしまったが、中潮〜小潮〜若潮へと変化するにつれ海が少しずつ騒がしくなってきた。新月の潮廻りに北西の風が加わり、気温・水温とも下がり始めたことが影響しているだろうか?浜にはいよいよ待ちに待ったサワラが、カタクチの群れを追って接岸したようである。北西の風が強まると、これまで大形ブリを狙っていた西向きの釣場には立てない日が多くなる。いよいよサ−フにシフトチェンジする時期を迎えたようだ。


【サーフエリア】

 今や秋から冬の私のメインターゲットは大型のサワラになった。接岸の声が聞こえるといよいよサーフにポイントをシフトしていく。12月に入りカタクチの接岸頻度も上がってきた。あとは広範囲に居続けてくれることを祈るばかりだ。軸足をサーフエリアに移して迎えた今季最初の新月の潮回で迎える週末は、馴染みの概要に面したサーフエリアに出掛けた。
 まずはベイトが溜まりやすいワンドに入ったが、マズメ時は残念ながらベイトの気配は感じられなかった。潮回りは若潮のあとの中潮。未明の満潮から下げ始めたマズメ時から釣りを始めたが魚からの反応はない。ベイトを求めて移動をすると、事前情報通り日が昇り切った下げ止まりで、散発的ではあったが青物が回ったようだ。ここ数日、上げ潮でベイトが入りお祭になるようだが、今現在はその規模は小さく、ポイントの選定が悩ましい。そこで釣り場全体が眺められるサーフエリアの高台で、昼食をとりながら時合を待つことにした。


【時合】

 すると上げ潮が利き始めた時12時過ぎに東の海上に鳥山が現れ、岩礁帯のどこかに接岸したように見えた。すぐに鳥山を追って直ぐに岩礁帯のワンドに向かい、根周りでカタクチを追って入ってきた50cm程のセイゴをサラナ147F-SRで獲った。

 同じサイズが周囲で釣れていたが、サワラが接岸するほどのベイトの群れはそこには居なかった。このまま僅かだが確実にベイトの入ったこのワンドを選ぶか?それとも最新の情報に賭けて東の浜に大型サワラを求めて直行するか?ハイリスク、ハイリターンを狙うのが私の海のスタイル。当然後者を選択し、サワラを追って車で30分走って現地に入った。しかし時すでに遅く、カタクチは離岸した後だった。浜にはメータークラスのサワラにセイゴ、ヒラメが並べられていた。時合を迎えた浜では居合わせた釣り人の多くがターゲットを手にしたようだった。他の釣人が釣りあげた大型のサワラで私の活性も上がったが、ベイトが去った浜に気配が感じられず、今日は深追いせずに明日に備えて早めに帰宅した。


【北西が残る翌朝】

 前日の状況で今日の狙い処は上げ潮と絞り込んだ。このタイミングでベイトが接岸し、それを追って大型青物やマダカ、ヒラメの活性が上がる。この日干潮を迎える10時半から日没までの上潮を集中的攻め、その他の時間帯は無理のない程度で釣りをしようと考えた。そうは言ってもハイシーズンの朝を自宅で過ごすことなどできず、実際早朝に足が海に向かってしまった。
 マズメ時は情報収集も兼ねてサーフエリアのチェックをした後、先端の磯場で釣りをしていた仲間から、ヒラスズキ交じりで青物が出ていると聞けば行くしかないでしょう!日差しが強くなった9時頃、北西風を正面に受けながら1人サラシに向かって打ち続けたサラナ147F-SRに反応があった。70クラスのマルスズキを岸際で喰わせたが、ランディングの際に足もとの石積みの間に落とし、打ち寄せる波にさらわれてしまった。久しぶりのサラシ狙いは楽しかったが、加齢でバランス感覚が衰えた私にはハードルが高く、これ以上長居はせずにサーフの高台へ向かった。


【サーフを望む高台にて】

風裏の高台は居心地がよく、地元のベテランの話を聞いたり、近所のお婆さんの話し相手をしながら、のんびりベイトの接岸を待った。去年からこの高台にお邪魔しているが、よそ者にも分け隔てなく接してくれるここの雰囲気が心地よく、いつも長居をしてしまう。そうこうして話をしていると眼下のサーフに黒い帯が現れた。
ベテラン達は、
「あれはボラだ!」
「いやコノシロだ。」
「カタクチだ!」
と見解を述べ合うが誰一人釣り場に降りて行こうとはしなかった。農作業の合間に海を眺めながらの作戦会議が日課のようだ。するとその中の一つが徐々に岸に向かって動き始めた。数羽の海鳥を従え、いよいよ浜からの射程距離に入った。
「入った!」
「アカミ?ができた。速く釣りに行け!」
地元の人たちはカタクチの群れを「アカミ?」と呼ぶようだ。どうやら大型の魚に追われてカタクチの群れが接岸したことを私たちに伝えようとしていたのだった。偏光グラスをしなくても、長年の経験で僅かな水面の変化を見分けられるのだろう。
「あの3つの岩の真ん中の沖に何かが見えるだろう!」
「あれだ!」
と指差し、釣場に向かうよう再度促し始める。昼食後に釣りをしようとしていた私たちは、思わぬアカミ(ベイト)の出現でそのプランの変更を余儀なくされた。流石にこの時は観念するかのように高台から浜に降り、水面を凝視しながらアカミを探し始めた。波打ち際は鳥が飛び始め、にわかに騒がしくなってきた。時折小魚が飛び出し、逃げまどう小魚があちこちで見られたが、大型魚の気配はまだ感じられない。ただベイトは入っているのでまずはキャストを開始した。


【アカミのあるサーフで】

 ロッドはブローショットボロンBSB-103SF。ルアーはサラナ147F-SRを結んだ。カタクチがベイトなのでサラナの125Fとも思ったが、狙いはあくまで大型サワラ。小型のルアーは切られる可能性が高い。そこで大型で飛距離が稼げるサラナ147F-SRのグリーンゴールドを選択したのだ。147MAXに比べシャローレンジをスピーディーに探れ、大きな動きのルアーなので海面でのアピール力は高い。貫通ワイヤーで強度も充分。小振りのリップを備えた147F-SRは空気抵抗も少なく、これまで以上によく飛ぶミノーに生まれ変っていた。
 キャストを始めて間もなく、サワラが突然水面から頭を出した。サワラのように動きが早く広範囲に動き回るターゲットには147F-SRは最適なのだが、しばらく投げ続けたが反応がない。徐々に騒がしくなった海の変化を、見ていた釣り人が集まり始め、サーフの密度は高まってきた。しかし期待に反し、誰一人竿を曲げる人は居らず、最初に魚を掛けたのはボラ狙いのサッカケ釣りのおじいさんであった。

 掛ったのはコノシロだった。しばらくその釣りを眺めていると、次に50cm程のセイゴを釣り上げた。ベイトは居るが喰い上げるまでの活性はなく、ターゲットは沈んでいるようだ。サワラも気配が無くなり、鳥山も徐々に岸際を離れ始めたサーフで引きつづき147F-SRを投げ続けると、いきなり何かがルアーを喰った。魚は直ぐに走ることはなかったので青物ではないと思った。なんだろう?少し強引にやり取りをして浜にズリ上げると70cmほどのワラサであった。

「なんだ!ワラサか!」 思わず声を発してしまった。スリムな魚体なため引きも弱く、一度も走られることはなかった。

 今年は大形魚には縁遠く、掛けても駆けてもワラサやアブ(イナダ)ばかりである。隣の仲間も引きの強いアブ(イナダ)を掛けたが、やはりすべてこのサイズだ。目先を変えようとサイズダウンしたベイトサイズのサラナ125Fイワシカラーでも、釣れたのはイナダクラス。

 そうこうしている間に鳥は遙か西に行ってしまい、アカミも沈んでしまった。
 さあどうする?鳥を追って西に走るか?岬の先端のワンドで入れ食いになっているシーバス(マダカ)を狙うか?それともこのワンドで夕マズメまで過ごすか?悩んだ挙句、昨日の今日なのでこのままここに仲間と居残ることした。


【狙いを変えて】

 海も落ちついたことなので少し休憩を入れてここまでの釣りを振り返った。サワラがいれば水面に反応があるはずだが今はその気配はない。隣ではサッカケのおじさんがこの日数本のセイゴを掛けている。ならば現在可能性のあるマダカを狙いながら、サワラの回遊を待とう。一向に反応のないサワラに痺れをきらし、活性は高くはないが僅かではあるが回遊の気配が感じられるマダカにバイブレーションでアプローチをしていった。手前のかけあがりを回遊するマダカに狙いを定め、私にしては珍しくサーフでバイブレーションを引き始めた。ルアーはベイブル90HSのアカキン。大型に備えてフックは太軸に変えてある。万一サワラに飲まれたら一溜まりもないが、口元に掛かれば勝負になる。30m程沖に沈めてテンションフォールで底を取り、リフト&フォールで中層からボトム付近を探っていく。中層に反応がないので次はボトムを舐めるようにゆっくりと引き始める。
 そして数投目。波打ち際のかけあがりで引き波を受けて小刻みにブルブル震えるベイブルを何かが襲った。「お!喰った!」当然マダカが喰ったものと思っていた。しかし動きが変だ?走る様子もなく、重量感のあるトルクフルな引きからエイが喰ったのか?と思っていた。底から一向に離れようとしない正体不明の魚の引きを1分程耐えると、ようやく力尽きたようにフッと底を切ったような感触が伝わってきた。直ぐに後ずさりしながらラインを巻き取り、波打ち際に浮かせる。白波の間に浮き上がったのは巨大な茶色のヒラメ。それも分厚い肉厚の座布団ヒラメだった。これは取り逃がすことはできない。これまで以上に慎重にやり取りをしながら、打ち寄せる波との間合いを図り、一気に浜にズリ上げていく。肉厚の巨体と引き波のパワーにロッドはバットまで大きく曲がり、波打ち際を何度も行き来させられたが何とかランディングできた。

「ぶ厚い!」  これほど大きなヒラメはこれまで釣ったことはなかった。釣りあげた時にフックは、目の周りの薄皮に掛かっていた。しかしよく見ると、最初は口元に掛かったベリーの太軸がやり取りで外れ、途中でテールの細軸に変ってしまったようだ。好運にも貫通した薄皮がねじれていたので外れることもなく、無事ランディングできたようだ。サイズは75cm。9cm程の肉厚の大ヒラメ。尾鰭や背びれは赤茶けた色をしており、見慣れたヒラメとは色も雰囲気も異なり、精悍なフィッシュイーターの風格を漂わせている。波打ち際でやり取りをしている最中、大きな口から14cm程のマイワシを吐き出し、海に戻ろうとしている姿が今でも脳裏に焼き付いている。日が高い日中、2時過ぎの出来事だった。




 少し離れた仲間に来てもらい、画像に納めてもらったあと、私は1人車に戻りおにぎりを1つ口に入れて釣り場に戻った。すると仲間が妙な笑顔を浮かべて迎えてくれた。不自然な微笑みの理由は、足元の大きなマダカだった。彼は私が釣り場を離れた隙にチャッカリここで釣りを続け、85cmのデップリ肥ったマダカを獲っていた。これには流石に驚かされた。沖目でミノーを喰わせたようで、恐らくベイトについた魚ではなく、単独で行動していた大型の固体であると思われる

 彼とはこの日午後の高台で待ち合わせ、上げ潮のタイミングで一緒にこのポイントに入った。少ない釣行時間で日中にベイト絡みのナブラに遭遇したうえに、今度は大型の魚まで獲ってしまった。非常に効率の良い釣りができたと本人は喜んでいた。早朝からリサーチを続けて、ようやくここに辿り着いたが、同行した仲間も良い釣りができたことは二重の喜びであった。気まずい思いをすることもなく、歓びを一緒に共有できるのだから。こうして2人は最高の週末を過ごすことができた。


【これから】

 いよいよ水温気温ともに例年並みになり始め、北西の季節風が吹き始めると、これまで釣果にバラツキのあった先端地区のサーフエリアに大型の青物やマダカが回遊し始める。やっと大型のサワラも姿を見せ始めてくれたので、この先1月まではこの状態が続くことを願っている。今年はやはり1〜2カ月遅れているという声も多く、サーフエリアはまだまだ期待できそうだ。
 プラグ中心の私にとってヒラメやマゴチの砂物は、これまで縁遠かったタ−ゲットであった。しかしベイトの接岸した浜では、表層に出るなどアグレッシブな魚に変貌し、このエリアでは大型が期待できるので、プラッガーのターゲットとしても申し分ないことが分かりはじめてきた。今後は青物の合間に積極的に狙っていこうと思っている。


● マイタックル

◇ロッド スミス  ブローショットボロンBSB-103SF
ショアジガー SJS-100/80 100/60
U社ショアプラッギング用10ft改(小径Kガイド搭載)
◇リール シマノ  ツインパワーSW 4000XG 6000HG ステラ4000XG
◇ライン ヨツアミ JIGMAN PE 1.5号 2.0号
◇リーダー バリバス ナイロン 40/30/50LB
◇ルアー スミス  ベイブル90EX  サラナ147F-SR 125F  ハルカ145F/S  サーディンラン13F 13SS  ドラゴンサラナ  アンダーバード1号  メタルフォーカス40g60g 
マグナムサージャー  スーパーサージャー
S社 140mmホッパー 160mmペンシル  Y社 160mmペンシル



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