冨安 隆徳

愛知県豊川市在住。ルアーで四季折々の魚を求め釣り歩く、アウトドアが大好きなサラリーマン。

主なターゲットは、九頭龍川の桜鱒、天竜川水系遠山川のアマゴ・イワナ等。


《 2019 遠州灘釣行記(番外編) 》


【今季の伊良湖岬】

 今季の伊良湖岬は、10月中旬に11kgの巨大鰤が仲間に仕留められてからはしばらく小康状態が続き、青物が安定して接岸することは少なかった。その後10月末に再び90cmクラスが姿を見せるようになったが、10kgクラスの巨大鰤ではなく、サーフに多いスレンダーな個体が多かった。
 巨大鰤はどこへ行ってしまったのか?先端地区に通うブルーハンターたちは、この超大型の接岸を願いながら、トップウォータープラグをキャストし続けながら彼らの回遊を待った。


【11月中旬 北西の風】

 渥美半島の秋も寒暖を繰り返しながら徐々に深まっていった。11月の中旬に今年一番の強烈な北西風が吹き荒れ、いままで遅れ気味の渥美半島の先端地区にもようやく大型の青物が少しずつ姿を見せ始めた。狙いの超大型は三重県鳥羽方面や伊勢湾の湾奥を回っているようだが、この風とともに伊良湖岬でも姿を見せてくれるのではないかと期待は高まっていった。
 渥美半島は南向きのサーフなので北西風は風裏になる。風で押えられたサーフにベイトが接岸し、大型のフィッシュイーターをシャローに引き寄せてくれる。北西風の後でしばしば大爆釣が起きるため釣り人は天気予報から海況を予想し、仲間と情報交換をしながら明朝に備えることになる。
 今回の北西風が吹き荒れた直後の週末は潮変わりの若潮。朝は潮位が低くすぐに干潮を迎えるために薄暗い時間帯の短時間の勝負になる。北西の風が吹いたことで遠征組が夜明け前から釣場に入り込み合うことが解っていたので、夕方の満潮前後をメインに朝まずめは情報収集のつもりでゆっくりと釣場に向かった。


【早朝の伊良湖岬】

 日の出は6時頃。5時45分頃には白々とし始め、6時半頃には完全に夜が明けた。薄暗い時間帯は潮位に係わりなく鰤が口を使うことが多く、この日も90cm前後の魚が2尾キャッチされていた。しかし6kg程の個体で狙いの巨鰤ではなかった。イナダも回っていたようだが、私達にはこれといった反応もなく朝の釣りは終了となった。ただ今季先端地区で姿を見ることが少なかった遊漁船や地元の船が伊良湖水道や休暇村の沖で大船団を組んでいた。魚探にはいい群れが映っていたのだろう。この北西風で海況が少し上向いてきたことをこの時実感することとなった。
 朝マズメの後でサーフの状況をチェック後、ポイントが一望出来る場所でゆっくり潮待ちしながら昼食をとった。もちろん気配があれば直ぐにポイントに入れるようにタックルをセットして。


【マイゲーム】

 午後からのゲームはトップウォータープラグの誘い出し。午後からの満潮前後に、朝活では入れなかった潮通しのいいポイントから、日没までのんびりキャスティングゲームを楽しむ。普段時間に追われての釣りを強いられるのだが、今日はなんの制約もない。
 ぼんやりと海を眺め、暖かい日差しと美味しい珈琲を楽しみながら潮が効き始めるのを待った。そして満潮前の14時頃にポイントに渡り、満潮前後の潮を狙っていくことにした。

 このエリアは潮の干満に関わりなく、右(湾奥側)から左(湾口)に向かって流れるのが常で、これに干満差や風向きにより流れに変化が加わる。上げ潮に押された湾内の潮の反転流や潮目が岸際のテトラ沿いに寄ると、ベイトとともに青物が岸際を回遊してくるのではと考えている。
 この日渡ったポイントはここ数日いい潮が通ることが多かった場所で、一度竿を出してみたいと考えていた。潮流というのは複雑で、急に動き出したり止まったりと複雑な流れ方をするため、どこがいいのかはその時にならないと判らないことが多い。そのため海面の変化に注意しながら、潮目や流れが効いているポイントにルアーを打ち込み魚からの反応を見ていった。


【メリハリのない流れの中で】

 釣り場に入ると間もなく左端に同じくブルーハンターが入ってきた。釣り人は勝手なもので込み合うのは御免だが、誰もいないのも寂しいものなのだ。魚からの反応や状況変化を共有でれば、釣り人の活性も高まる。2人で満潮まで探ったが満潮までは何の変化も見られなかった。
 若潮は午後の満潮からの下げ潮の潮位変化が大きい。これに夕マズメが重なるこれからの時間帯に実は期待していた。ノットを結び直し針先を確認しながら満潮を過ごし、下げ潮が効き始めるのを待った。しかしこの日は潮の動きにメリハリがなく、集中力を保ち続けることが難しかった。反応が無い時間が続き、日も傾き始め時刻は16時30分になった。ここから日没まではプライムタイム。潮は動かずとも弱まった陽ざしが青物の警戒心を和らげてくれるだろう。僅かな水面の変化を見逃さないよう集中力を保ちながらキャストを続けた。
 ルアーはこの日様々なものを試してきた。サーディンラン13Fでナチュラルな動きのスケーティングとダイビングで水面への誘い出しに反応がなければ、13SS(スローシンキング)で水面直下もファ−ストリトリーブや、トゥイッチングでリアクションバイトを誘った。ハルカ145Sのロングキャストで広範囲をチェックし、これにも気配が感じられなければドラゴンサラナを少し沈めて中層でのステイや、スローリトリーブ、ジャークですこし活性の下がった魚を狙って行った。そして最後にアンダーバード1号やA-CUPでスプラッシュ音や、カップが生み出す波動への反応を見ていったが今のところ反応はなかった。
 「回遊はこれからなのか? 今日は回ってこないのか?」


【A-CUP】

 時刻は16時45分。集中力を切らさぬようにルアーローテーションを繰り返してきたが、いよいよ今日のゲームも終了時刻の17時が近づいてきた。太陽は水平線に沈み始め間もなく日没である。するとこの時刻になってやっと右からの下げ潮潮が効き始めてきた。そこでこれまで引いてきたアンダーバード1号のイワシカラーから、薄暗い中でも認識しやすいようパールホワイトのA-CUP タチカラーで今日を締めくくろうとルアーチェンジし、17時まで探ることにした。
 さらに薄暗くなったので見切られにくいと判断し、ゆっくりした動きで誘い始めた。15m手前のところまで優しく小さなスプラッシュ音を立てながら僅かにダイブさせ、喰わせの間を与えるイメージで静止時間を長めにとって誘い始めた時だった。小さな波に乗ったA-CUPが波の頂点に押し上げられる際の水面に何か違和感を感じ、その直後鰤がA-CUPを襲った。水面を押し上げる変化の後でA-CUPの姿が消えた。合わせたい気持ちを必死に堪え、ロッドティップが引き込まれた直後に合わせを入れてフッキングさせた。
「出た!」
 魚は沖に向かって走り出したので、まずは最初の走りが止まるのを待ち、緩めのドラグを少し増し締めし何度も追い合わせを入れた。これで間違いなく針に掛かっただろう。超太軸のフックを装着させているので延ばされることはない。しっかり貫通させないとファイトの際に外れてしまうことがあるため、今回は何度も合わせを入れた。走りと引きから10kgクラスの超大型ではなさそうだ。近くに釣り人もおらず、潮位も高いので手前のテトラに擦られることもない。走るだけ走らせ、疲れさせた後で水面に浮いたところを取り込めばいいと考え、竿の曲がりを楽しみながら青物とのファイトを楽しんだ。
 5分ほど沖で疲れさせた後に手前まで寄せ、水面に浮かせたところをランディング。少し細かったが長さはあった。まるでヒラマサのような魚体。胸鰭がイエローのストライプと少し離れているのでヒラマサではなく鰤であった。それにしてもシュッとした鰤だなー。苦笑いを浮かべながら岸に戻った。
 車にたどり着くことには完全に日が落ちてしまった。真っ暗な浜に黒ずくめの釣り人とスタイリッシュな鰤を仲間が迎えてくれた。私の竿が曲がっていることに気が付いたようで戻るまで待っていてくれたのだ。
「おめでとう。」
「ありがとう。」
 こんなやり取りを交わしながらこの日の状況を振り返り互いに情報交換をした。狙いの巨鰤ではなかったがトップの誘い出しで獲れたことが何よりうれしかった。日暮れというプライムタイムにほんの少し潮が動き始めたことが良かったのだろう。全くの気配なしの状況からいきなり喰ってくるのでこの釣りは集中力の維持が難しい。今日はなんとかそれが維持でき、大型とのファイトを楽しむことができた。




【これからの遠州灘、伊良湖岬】

 伊良湖岬や遠州灘は冬型の季節配置が安定するこれからがまさに本番を迎える。今季の青物は小型だが数は多いように感じている。10kgクラスの超大な魚に出会うチャンスはどれほどあるかはわからないが、全体に少し遅れ気味なので今後に期待したいところだ。年を越してしまうとさらに強い北西風により釣り場がクローズドになることが多く、ここ頃までが伊良湖岬の10kgクラスとの出会いのチャンスであると考えている。
 またこれからはいよいよメーター超えのサワラがベイトを追って岸際に姿を見せてくれるだろう。今のところ数は少ないようだが、その引きと美味しさからサワラを密かに狙っている釣り人が年々増え始めている。このクラスが回遊するようになってから日が浅いために、攻略法や回遊コースのイメージが確率されるのはこれからだろう。まず今季どのエリアに回遊が多いのか?仲間との情報を共有してポイントを絞り込み、通い詰めることで魚との距離を縮め、今年も美味しい炙りをいただきたいものである。
 寒くなってきたが、まだまだ浜通いはやめられない。


● マイタックル

◇ロッド M社   9.7ft ショアジギ・プラッギング用ロッド
スミス ショアジガー SJS100/60 100/80
ブローショットロングキャリー BS-LC100
ブローショット サ−フェッサー BSSF103
◇リール シマノ  ツインパワーSW 6000HG  4000XG
◇ルアー スミス  A-CUP 飛烏賊HF ドラゴンサラナ サーディンランSS・F
ハルカ 145F・S サラナ147MAX  ベイブル90HS ハイパーブレード
メタルフォーカス 28g 40g 60g
◇ライン ヨツアミ G-soul SUPER JIGMAN X8 2.0号
G-soul SUPER JIGMAN X4 1.2号
◇ショックリーダー バリバス ナイロン 50・30・35・40lb



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