冨安 隆徳

愛知県豊川市在住。ルアーで四季折々の魚を求め釣り歩く、アウトドアが大好きなサラリーマン。

主なターゲットは、九頭龍川の桜鱒、天竜川水系遠山川のアマゴ・イワナ等。


《 2018 遠州灘釣行記(その2) 》


【巨ブリとの距離】

 いきなりの巨ブリで今季のソルトシーズンはいいスタートを切れた。しかしその後は散発的な回遊で次につなげることができなかった。11月も後半に入り北西の季節風が強くなると先端部のポイントは釣り場に立てないことも多く、12月には徐々に周りでも獲ったという話が聞こえてはきたものの、コンスタントに釣れているわけではなかった。
日の出の時刻も1日ごとに遅くなり、朝活の時間は約1時間とますます厳しくなってきた。強風で外海の荒れが続くとベイトフィシュが湾奥に移動し、青物も湾内に入っていく。そのため湾口部の私達には届かないところに行ってしまう。また時間帯も早朝がベストと思われがちだが、今年は日中や夕方の回遊も多いようで、私にとって今季の先端地区の青物は少し縁遠いようにも思われた。
 早朝に反応がなかった週末の満潮間際のことだった。真昼間にトビ烏賊HFによる誘いだしの最中、隣の釣り人が魚の反応があったと突然声を上げた。満潮間際だったがこの時右から左にいい潮が流れ、明確な流れの筋と水流の変化が感じられた。
ベイトフィシュも鳥も居ない大海原に向ってキャストを続けていた私は、ストップ&ゴーを繰り返しながら水面直下をダイブさせ、テンションを抜いて高い浮力で水面に浮き上がるトビ烏賊HFの浮上を待っていた。立ち位置の10m手前の至近距離までダイブさせ、水面に浮くまでのトリッキーな動きとともに浮上してきたトビ烏賊に深場から何かがアタックしてきた。
「あっ。」 残念なことにバイト直義に左手が反応し、少し早合わせになってしまった。一旦水面に出た魚は、強烈な引きを見せることなくゆっくりと手前の深場に潜行し、沖に走ることなくこちらに近づくような動きを見せた。ラインが一瞬ふけるような手ごたえの後に、底に張り付いて動きが止まった。しばらく首を振るような反応の後、深場で大人しくしていた魚からフックが静かに外れた。 折角の貴重な回遊を、それもトップの誘い出しで喰わせることが出来たのに惜しいことをしてしまった。一瞬の出来事だったが、白い腹を見せ、ルアーを咥え反転ながら水中に戻っていったその姿が、今でも脳裏に焼き付いている。ただ日中に突然回遊することを自分の目で確認できたこと。誘い出しから喰わせるまでの誘いのイメージに自信が持てたこと。これら全てが今後に繋がる収穫であったと前向きに考えることにした。



【好調なサーフエリア】

 先端地区で思うような釣りが出来ない状況のなか、12月に入りサーフエリアでは北西の風によるベイトの接岸により、青物やランカークラスのシーバスの姿が見られるようになってきた。コノシロ、カタクチカイワシ、サッパがこの地域の代表的なベイトフィシュなのだが、今年はマイワシやアジが混じるようで、接岸とともにあちこちでお祭りが始まった。
 12月の中旬にサーフエリアに通う仲間から
「今朝ワラサ、サワラがだいぶ回ったようだよ。」
と連絡をくれた。数日前にもこのエリアで夕方良型のサワラが接岸し、多くの魚がランディングされたと聞いていた。夕方の釣行は休みでないと行けないのだが、この日私用で休暇をとっていた私は、15時には時間が空いていたので早速出かけることにした。
 この時期のサワラは脂も乗り、食味も引きも素晴らしい。10kgクラスの鰤とともに、この時期に獲りたい魚の1つである。今季既にメータークラスも捕獲されているようなので、出かける前から期待も高まっていく。手早く道具を積み込み、実釣時間1時間半の夕マズメのゲームに向った。


【好調なサーフエリア】

 この浜は2週間前まで週末でも釣り人がまばらだった。底引き網が毎朝波打ち際まで引かれるために、魚たちが警戒して寄り付かなくなっていたのだ。しかしここ数日底引き網の漁が無かったようで、ベイトフィッシュの接岸とともに、青物が岸寄りを回遊するようになったのだろう。平日の16時だというのに浜は多くの釣り人が入り、既にサワラやワラサを手にしているアングラーの姿もあった。日中の上げ止まりの前後に青物の回遊があったのだろう。数尾の魚を手にした誇らしげな釣り人がこちらに歩いてくる。ワラサやサワラが横たわる浜には、釣り人が10m間隔で並んでキャストを繰り返していた。波は高くはないが少し濁りが入っている。ベイトフィッシュの姿は確認できなかったが、恐らく小さな群れで回ってくるのだろう。
 早速人混みを避けながら海面の変化やベイトフィッシュを探し、東に向かって歩き始めることにした。車から500m位歩いたところでようやく釣りが出来そうな浜に入ることができた。このポイントには沖の潮目が真っ直ぐ差しており、水面には何か小魚の気配が感じられた。そこでドラゴンサラナのウルメカラーをキャストしゲームを開始した。



【この日のタックル】

狙っているのはメーター級のサワラ。小型のサゴシ狙いであれば、波打ち際を回遊している7cm位のサッパに合わせ、メタルフォーカス28gや40gという小さ目のルアーとういう選択肢もある。しかし今日のターゲットはこの魚ではない。マイワシを追い回している大型のサワラやブリがターゲット。これらの大型青物を浜で狙う時には、少し大き目のシルエットで、広く遠くまで探れる高い遠投性能を備えたドラゴンサラナを使うことが多い。
ロッドは巨鰤狙いのショアジガーSJS100/60ではなく、ブローショットボロン サーフェッサー103SFのように40gまでを背負える汎用性とパワーを兼ね備えたしなやかなモデルが望ましい。9cmクラスのミノーから40gクラスのメタルジグやドラゴンサラナ、サーディンランやアンダーバードの誘い出しまで対応できるこのロッドは、近頃私のお気に入り。これに4000番クラスのハイギアのリールをセットし、ラインは1.5号に40lbと大型青物を狙うには少しライトなセッティング。サーフであれば時間をかければ鰤までは充分対応可能なのだ。本命の脂の乗ったサワラが喰ってくることをイメージしながらキャストを始めた。


【ファーストヒット】

太陽は西の空に傾き始め、淡いオレンジ色の光が浜に差し始めた16時過ぎ。釣りを始めて間もなく最初の当たりがあった。フルキャストして少し沈めたドラゴンサラナのウルメカラーをひったくるように持って行ったのは青物。少し緩めのドラグを魚の引きに合わせて締め込んでいくいつものスタイルでファイトを楽しんだ。一本調子の引きは恐らくワラサだろう。ファイト中であることを周囲にアピールしながら釣りを続けたつもりだが、よく引く魚だったために右側の釣り人のラインとクロスしていたようだ。ファイトに気付かなかった彼のメタルジグが私のラインを拾い、ロッドティップの先にはメタルジグがぶら下がっている。このままファイトをするのは無理だと判断し、一旦中断して絡んだフックを外すことにした。彼にはラインを緩めてもらい、バッドエンドを浜に置いてティップを手にしながらフックを外しにかかる。幸運にもラインを拾っているだけでバーブに絡んではいなかった。この外すまでの10秒がどれほど長く感じられたことか。慎重にフックを外し、ここからワラサとのファイトを再開した。
先ずはフケたラインを巻き取り、魚の位置を確認した。次に右の釣り人とは距離を取り、魚を少しずつ浪打際に寄せていく。静かだった波もこの頃から手前で大きく崩れ始め、少し荒れ気味になってきた。波打ち際でもたもたしているとこの波に打たれてバレてしまうかもしれない。波のタイミングに注意しながら一気に浜にズリ上げていった。
70cmほどのワラサ。テールフックが蝶番に掛かっていたが、ファイト中にベリーのフックが胸鰭の後ろに掛かったようでスレの状態になっていた。強い引きの原因はこれだった。左隣りの釣り人もほぼ同じタイミングでワラサを掛けたようで、小さな群れの回遊を2人同時に捕えたようだ。彼は14cm程のミノー、私が12cmのシンペン。マイワシ程の少し大きめのシルエットのルアーに反応が良かったようだ。そのため右隣りのメタルジグやその横でバイブを引いていた釣り人のロッドは曲がることはなかった。


【初物のサワラ】

 一尾目を釣り上げその余韻に浸ることなくすぐに釣りを再開した。青物の群れは動きが速く時間との勝負である。簡単なラインチェックを済ませすぐに釣りを再開した。波打ち際ではまだ小魚が逃げ回っている。猛スピードで小魚を追い回すのは恐らくサワラかサゴシだろう。7cm程のサッパの群れを追うサゴシであればスモールルアーという選択肢もあった。しかし今日は少し沖にはマイワシが居た。ワラサも少し大き目のドラゴンサラナに反応してきたことから私には迷いはなかった。波打ち際から20mの範囲でサッパを追い回しているサワラを直接狙うのではなく、沖目を回遊しているマイワシをイメージし、少し沖に沈めてリフト&フォールによる縦方向で反応を見ていった。次にトゥイッチングで左右にダートさせながら水面直下を探っていく。
「何時喰ってくるのか?」
とドキドキしながら再びレンジを中層に戻し、ゆっくり引いてきた時だった。明確な当たりの後で少しラインがふけ、その後首を振る様な動きとともに沖に向って一気に走り出した。ただしワラサで締め込んだドラグを何度も引き出す程のパワーは無かった。ウォーミングアップが出来ていたので、ワラサとは異なるサワラ独特の引きを楽しみながらファイトを続けた。今年のサワラは少しスリムで去年ほどの体高はないため、80cmほどのサワラでも難なく寄せることができた。美味しい魚なので最後まで気を抜かず、慎重にやり取りしてランディング。今年もなんとか美味しいサワラに出会うことができた。


【美味しい魚 再び】

魚を確保して周囲を確認すると、周りの釣人の竿は曲がっていなかった。群れは小さいようだ。散発的なボイルも時間の経過とともに徐々に収まり、活性も下がり始めたようだ。群れが小規模で、ルアーに対してセレクティブなことから喰わせられなかったからだろう?日没を目前にして帰り始める釣り人が目立ち始めた。
好調にドラゴンサラナで釣果を重ねていた私にも、他の釣り人と同様にしばらく反応がない時間が続いた。10分ほどの反応の無い時間帯を過ごしていると、再び波打ち際のブレイクあたりでベイトフィッシュが水面でざわつき始めた。
「群れの回遊だ。」
海面の変化から活性の高い群れが回ってきたと判断し、ロッドティップを高く掲げてドラゴンサラナを水面まで浮上させ、表層をぎりぎり引けるスピードでゆっくり波打ち際のブレイクを通過させようとしたときだった。水面から何かが飛び出し、ドラゴンサラナを咥えて沖に走っていった。
 「喰った!」
先ほどまでのドラグでは止めることができず、少しラインを出されてしまった。最初の走りを耐えて魚が足を止めた瞬間に頭をこちらに向けさせ、周囲との間隔を確保しながら寄せにかかる。独特の「グン」「グン」といった締め込みとトルクフルな引きで、これまでよりも型のいいサワラであることは解っていた。
「また美味しいやつ。来た!」
連続ヒットの喜びを噛みしめながらファイトを満喫した。何度かの締め込みを耐え、手前のブレイクまで寄せたのだが、荒れた波打ち際から引き離すのが大変だった。大きく崩れる波を避け、魚をコントロールしながら浜にズリ上げようとするのだが、しなやかなサーフェッサーには、この強い引き波を力任せに寄せるまでのパワーを持ち合わせてはいなかった。寄せては戻されながら数度のトライでやっとランディング。待望の90cmアップのサワラを獲ることができた。
時刻は16時45分。既に日は傾き、周囲は薄暗くなり始めていた。周りの釣り人の数は更に減り、もうライントラブルの心配はない。折角だからもうしばらくやってから帰ろうと、寂しくなった薄暗いサーフで釣りを続けた。


【当たりルアー】

左隣の釣り人はワラサを掛けてから当たりがなかったようだ。その後も私が次々にサワラを掛けていくので
「ルアーは何?」
と聞いてくるほどこの日はドラゴンサラナへの反応が良かった。
良型のサワラの後、またも反応の無い時間がやってきた。今日は小さな群れの回遊を待ちながらの釣りなのだろう。数尾の魚を手にして少し気持ちに余裕ができていたので、冷静に今日の状況を分析しながら、このタイミングでルアーローテーションをすることにした。
先ずは色に対する反応を見ていく。ルアーを変えずに「シルエット」がハッキリしているカタクチシェルを試す。次にハルカ145Sのチャートで、「シルエット」「カラー」「アクション」に変化をつけながら、中層を更にゆっくり引いていった。しかしいずれも魚からの反応は無い。群れは離れてしまったようだ。
そこで本日の当たりルアーであるドラゴンサラナのウルメカラーに戻し、再びフルキャストで沖に離れてしまったと思われる魚の反応を見ていくことにした。すると数投目で何かが当たった。
「ベイトの群れか?」 水中をイメージしながらゆっくり漂わせるように引いていくと、またも小さな当たりの後でルアーが引き込まれた。 「喰った!」
ルアーに当たっていたのはベイトではなく、サワラのアタックだったようだ。岸際でベイトを追っていた回遊魚の群れは沖に離れ、棚も表層から中層に変化していたようだ。薄暗くなった浜で魚を見失うことなく、打ち寄せる波の中を慎重に引き寄せランディング。90cmを越えてはいなかったがまずまずの魚であった。
その後沖の群れからの反応もなく、すっかり日が落ちてしまったので今日はこの魚で終了することにした。



【セレクティブな魚】

16時過ぎに釣り場に入って間もなく魚からの反応が得られた。反応が良かったのは少し大きめのミノーライクなシンキングペンシルだった。それもあまり動きすぎないナチュラルカラーのルアーに反応がいいように感じられた。約1時間の実釣時間ではあったが、ワラサ×1、サワラ×3と非常に楽しい釣りをすることができた。好調の込み合うサーフを避け、足で稼いで探し当てたポイントでのご褒美がこの結果であったと思われる。
数か月前のスレンダーなサワラも、12月の中旬を過ぎベイトフィッシュをたらふく喰って少し成長したようだ。ただこれほどのベイトフィッシュが居るのもかかわらずシーバスの姿が無かったことが気になった。青物が浜に差してくるとシーバス、ヒラメやマゴチなどは嫌がって差してこないのだろうか?例年青物を狙っていると、シーバスが掛かってくることが多いのだが、まだ今年は1度も姿を見ていないので寂しささえ感じている。まだ水温が下っていないのでこれからなのだろう。そんなことを考えながら、夕マズメの楽しい釣りを振り返っていた。


【これから】

これから本格的な冬の到来とともに北西の季節風はますます強まり、先端地区の誘い出しによる巨鰤の釣りは難しくなっていく。青物の回遊も徐々に少なくなることから、出会いの回数も減るが喰えばデカい。そんなシーズンに入っていくのだろう。釣行の機会は減るだろうが、できることなら10kgクラスの巨鰤を誘いだしで獲りたいと考えている。天気予報やタイドグラフを眺めながらしばらくそのチャンスを待ち続けたいと思っている。
気温水温ともにこれまでよりは下がったようだが、例年よりもまだまだ高いことから、まだまだチャンスはありそうだ。強く寒い北西風の中での釣りにいつまで耐えられるのか?それ次第なのだろう。


● マイタックル


◇ロッド スミス ブローショットボロン サーフェッサー BSB-103SF
スミス ショアジガー SJS100/60 SJS100/80
スミス ブローショットロングキャリー BS-LC100
◇リール シマノ ツインパワーSW4000XG 6000H ステラ4000XG
◇ルアー スミス ドラゴンサラナ  マグナムサージャー  ハルカ145S/F
サラナ125F,147MAX  サーディンランSS/F  飛烏賊F/HF/S  A-CUP
ベイビーランブオー  アンダーバード1号  ベイブル90HS  ハイパーブレード
バスタージャーク120S  メタルフォーカス 28g 40g 60g 80g 
◇ライン ヨツアミ G-soul SUPER JIGMAN X8 1.5号
          G-soul SUPER JIGMAN X8 2.0号
G-soul SUPER JIGMAN X4 1.2号
          G-soul WX-8 1.2号
◇ショックリーダー バリバス ナイロン 40/50/35lb



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