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『八重山釣行2014 第二幕』
橋本 祐一郎(SMITH STAFF)
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昔はよく、「見えている魚は釣れないよ」とか、まことしやかに囁かれたものだが、現在のフィッシングシーンにおいてサイトフィッシング″は一つのジャンルとして広くアングラーに認識されつつある。内水面のバスフィッシングでは当然のように行われている釣り方ではあるが、釣るのは簡単ではないのは今も変わらないようである。ただ釣りあげた時のしてやったり感″はブラインド(見えない状態)で釣った時の何倍もの快感を味わえるのも確かである。
では、海におけるサイトフィッシングに適した条件とは何だろう。魚を発見しやすい水深は浅いほうが良いが、通常の海岸で浅い水深では、うねりがぶつかって波が崩れやすくなり、水面下の様子が見えづらくなるが、珊瑚礁で囲われた島々では強く風が吹き付けない以上は常に穏やかな水面が広がっており、ここ八重山諸島ではサイトフィッシングが成立しやすい条件がそろっているということになる。また、今回訪れた西表島は魚影の濃さもピカイチで橋の上から「おー!いるいる。」などと魚の存在を確認してから水辺に降りて釣りを開始するなど、あまり近年の本州では味わえない楽しみ方がある。
今回、西表の釣り場を案内していただいた高山さんとの出会いもその様な時だった。
橋の上から大型のチヌを確認した後、橋の下流のチャンネルには大型のオニヒラアジがいる。そしてそのオニヒラアジを狙うフライマン!その日は邪魔にならないように少し離れた場所に入ったため、言葉を交わすことがなかったのだが…..
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〜新魚種追加!! 西表島マングローブフィッシング〜
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石垣島でユゴイ釣りのガイドをしてくれた岡田さんと岡田さんのブログ仲間のぼんさんと西表島の大原港で合流。この日は仲間川のマングローブ帯にレンタルカヤックで繰り出していろんな魚を釣っちゃおうというというもの。そして今回のターゲットはズバリ!日本ではこの西表島の仲間川にしか生息していないと言われているテッポウウオ″だ。アーチャーフィッシュとも呼ばれ、名前の通り水面付近で口から水鉄砲のように水を発射してマングローブの木につく昆虫などを落として捕食することで知られている。
今回は仲間川左岸にある、マリンレジャー金森さんでカヤックを借り、ぼんさんがシングル艇、岡田さんと僕がタンデム艇で出艇した。3人でワイワイしゃべりながら、良さそうなポイントを見つけては小型のポッパーやペンシルべイトなどをキャストして、ナンヨウチヌをぽつぽつと釣っていった。岡田さんと僕の共通の友人が先に西表入りしており、数日前に仲間川でテッポウウオを釣った場所やパターンを教えてもらっていた。ロースターテールなどのスピナーや、小型のポッパーが良くつれたらしい。やはり昆虫を捕食しているからなのか...
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支流に入り、川幅が狭くなり、目前にマングローブの枝が迫り始めると、まず岡田さんが口火を切った!「やった!初テッポウウオ!」魚類に詳しい岡田さんもかなり嬉しそうだ。僕も水族館やテレビでは見たことがあるが、実際に釣りあげられたのを見るのは初めてだった。
「よ〜し!僕も...」とばかりマングローブの根本にポッパーをキャスト!チョン!チョン!と虫を意識した小気味よいテーブルターンをするポッパーのジャグ″に「パシュ!」と可愛いアタックが!元気いっぱいの引きを見せてくれたのはテッポウウオだ。黄色、白、黒の色合いが可愛い。そして、意外に口が大きく、触ってみると体表は硬い鱗で覆われていた。僕はこの魚がとても気に入ってしまった。
その後もダブルヒットや、爆釣では無いにしろ、3人で狭い支流で全員が複数のテッポウウオをキャッチできたのだから、大成功!だと思います。
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そして、数日前に西表入りし、テッポウウオの詳細を教えてくれたのは、トキシン″こと、イラストレーターの時川真一さんだ。釣り雑誌など、ルアー釣り関連の媒体に挿絵を描くことが多いため、ご存知の方も多いと思う。「トキシンの沖縄ぐるぐる探釣記」というブログもされているので覗いてみてください。
で、数日前にさかのぼるが、トキシンさんも僕も西表の上原周辺の宿に泊まっていたので、トキシンさんが沖縄本島に帰る前に夕食でも一緒にということになり、宿まで迎えに来てもらうことに。電話でトキシンさんが、「こちらの釣り友達も一緒に...」といって紹介されたのが、なんと、釣り場でばったり会ったフライマンの高山さんだったのだ!」三人で釣りの話で大いに盛り上がり、翌日は高山さんのお仕事が休みになったので一緒に釣りしましょう!という嬉しいお誘い!
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〜またもや新魚種追加!マングローブの干潟でサイトフィッシング〜
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翌日は高山さんの案内でシャローフラットでのフライフィッシング。潮が下げてきて、水が引いた場所からはコメツキガニの大群が姿を現し、マングローブの根元の砂泥地からは、「パチン!」とテッポウエビがハサミを鳴らして侵入者を警戒する。大きなマングローブガザミやミナミトビハゼも登場してこの海の豊かさ、この干潟の健全な姿を物語っている。おそらくは高山さんもこのような自然環境に魅せられて、関東から移住してこられたのではないだろうか。
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この地の干潟の底質はシルトと呼ばれる、砂よりも細かく粘土よりも粗いもので、独特の踏み応えだ。小さな蟹たちが巣穴を掘り、生活するのに適しているのだろう。潮が満ち始めてくると、チヌやヒラアジの仲間の他にも様々な種類の魚が、逃げ遅れた甲殻類、小魚を追って満ち潮に乗って上がってくる。膝下の水深で魚の姿を目視しやすい場所に立ちこみ回遊してきた魚を狙い撃つといった具合だ。
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まずは、お手本で高山さんが綺麗な体色のチヌを釣りあげた。「本当はオニヒラアジを釣りたいんだけど...」と、照れ臭そうに見せに来てくれたところをパチリ!
そんな時、高山さんがチヌを発見して、「あそこ!投げてください。」と指差された場所に目を凝らすと、こちらに頭を向けて餌を探している良型のチヌがいる。魚の進行方向を確認して、手前70pくらいの地点にフライを落として、ラインをゆっくりストリップすると、一部始終を見ている高山さんが、「ん?食った?食ってない?」といった瞬間、指先にダイレクトに「ズンズン!」とアタリが伝わり、魚が走り始めたのでラインを鋭く引いて合わせを入れた瞬間、ラインが水しぶきを上げて横走りする!大げさではなく、水深が膝下だと魚は横方向に疾走するので魚をかけるまでのドキドキと、かけてからも興奮度MAX!せっかくなので引きを楽しもうと出していたラインを回収してリールファイトをしていたら、急にテンションが抜けてフックアウト!「ちょっと楽しみすぎましたかね〜!」なんてやせ我慢を言ってみたが、次はリールファイトしないで確実に取り込もうと思うのであった。ははは…
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気を取り直して新たに魚を見つけてキャストするも、魚は気まぐれに方向変換したり、こちらに気づいてダッシュで逃げたり、やはり浅瀬にリスクを承知で採餌しに来ている魚は少々神経質だ。高山さんは、浅瀬にベイトフィッシュを追い込んでボイルしているオニヒラアジを狙っている。僕はラインをリトリーブしながら、背後に目をやると、自分のすぐ7メートル後ろに50pくらいのチヌらしき魚影を発見!すぐさまフライをピックアップしてそのままの体制でバックキャスト!すると、魚は以外にもすんなりフライに興味を示して、すぐに「ハフハフッ」と吸い込み始め、手元にアタリを感じたのでラインを引いて合わせると、「グイーン!」と走り始めた。先ほどのチヌほどの走りではないが、大きさがある分トルクのある引きで、僕は今度こそはバラさないぞとばかり、魚の走りに歩いて追従する。
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高山さんも、「やりましたねー!あっ、デカいんじゃないですか!?」と、ファイト中の僕に気づいてこちらに駆けつけてくれた。いよいよ緊張のランディング!僕は太陽光に反射する魚体を大事なものでも抱え込むかのような、少々情けない体制で取り込んだ。
それにしても、立派な体系をしたチヌ?じゃない?「あれ〜?」と僕。「それ、チヌじゃないですね、ホシミゾイサキ。」と高山さん。ホシミゾイサキ?聞きなれない名前だが、沖縄県では市場にも並ぶ上質な白身のおいしい魚らしい。(リリースしたので食べていませんが)チヌのように頑丈な歯が並んでおらず面長な犬の横顔のようで、口顎の部分は少し下向きに伸びていて、ゴカイや甲殻類を吸い込んで捕食するのに向いている。聞けば、この大きさがこの魚の最大サイズだというから嬉しさもひとしお。それにしてもこの、鈍い光を放つ西洋の甲冑にも似た燻し銀の魚体、なかなか、カッコイイ魚だと思いませんか?
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こういったシャローフラットでのサイトフィッシングでは、魚の進行方向、スピード、潮の流れの速さ、フライの沈下速度、風向きなどの複合要素を計算して釣りをするゲーム性の高い釣りで、魚を見つけてからが勝負となり、いろいろな釣りの中でも特に狩猟本能が刺激される楽しい釣りだと思います。それに、日差しを遮るつばの大きい帽子と、水の中の様子が見やすい偏光メガネは必携。僕は今回、α‐sightのシューティングレッドのレンズカラーでした。
フライフィッシングをこれから始めようとする方にも、いきなりタックルを通販とかでそろえるのではなく、やはりフライの専門店さんでやりたい種類の釣りや予算を伝えて、自分の体格に合った道具を選んでもらうほうが良いと思います。キャスティングスクールも紹介してもらえたり、僕が知っている草加市のフライショップロックスさんのように、希望する方には、開店前の時間に近所の公園で無料レッスンをしてくれるお店もあります。
また、ソルトウォーターフライフィッシングの専門店は、東京都内には釣道楽屋SABALOがありますし、チェーン店ではサンスイさんもソルトウォーターフライ関連を多く扱っています。
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干潟でのフライフィッシング:8〜9フィートの6番〜8番ロッド。フライラインは好みのテーパーでいいと思います。僕はウェイトフォワードを愛用しています。バッキングラインにはPE4号を200メートル巻いています。フライリーダーはフロロ01X〜2Xでティペットも含め12〜14フィートの長さにして状況に応じて使い分ける。ティペットも対象魚に合わせて2号、3号、4号、5号くらいまでを用意しています。
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マングローブでのカヤックライトゲーム:今回はターゲットがテッポウウオということもあり、渓流用ベイトフィネスのロッド、BST−HM57UL/CにREVO・LTXにPEはあまり細いと切られるので、1.2号、リーダーは20lbとし、多用したポッパーのジャグは元々ついている管釣り用の針からソルト小物用のフックに交換して使いました。
マングローブジャック狙いなら、もっと強めのタックルに、強めのアピールができるルアーが良いと思います。
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