■BASSER All Star Classic

バサーオールスタークラシックが、
去る11月16日と17日に開催されたのは知っているよね。
12回目のチャンピオンであるオレはもちろん招待された。
そう、あのディプシードゥー伝説を作ったあの大会での優勝だ。
このトーナメントには、BASSERからの招待者しか出場できない。
ゴルフの伝統的トーナメント、マスターズのようなものだ。
嬉し恥ずかし、オレもその一人に入っているんだね。
なんてったってアイドル? じゃーなくて第12回のチャンピオンだ。

プラクティスをこなしていくうちに、
一つ困ったことが出てきてしまった。
今年でスミスとの契約が終了したので、
トーナメントで使うべきロッドが足りないのだ。
まぁ、自らが進んで選んだ道だから、
いたしかたないのだけれど・・・。
スミスのスタッフである谷中洋一に相談したところ、
来シーズン用の新作ロッドを貸してくれると言うことになった。
それがTOURLER(ツアラー)のFMと言うトーナメント用のロッドだった。
このFMというのは、ファストムービングの略なのかも知れない。
と言うことは、クランクベイト用のロッドなのだね。

テストサンプルの軟らかいのと硬いのの二種類を借りた。
ハッキリ言って硬い方が使いやすかった。
これがリリース本番用のロッドであるらしいが・・・。
こいつにディプシードゥーの#3イエローバックをセットして、
軟らかい方にノーネイムクランクベイトのSRをセットした。
いずれもダイワのTD-Z 103Hが装備されている。
このタックルで最終のプラクティスを行ったのが、
11月13日の水曜日である。核心を掴んだ。
しかし、それは午前9時からの核心であり、心の奥底での確信だった。

トーナメント前日にもプラクティスを行ったのだが、
それは朝一のエリアを探すべく、他の水域を見て回ったのだ。
が、かんばしい場所は見つからなかった。
9時までの時間をどう過ごすかが、今回のトーナメントでの課題であった。
朝一の魚が見つからないのは、
ただ単に朝釣りをしていないためだけだったのか?
大昔のデータを引っ張り出したり、本を読んだりして、
持てる知識を動員して朝一のバスを探し求めたが、
どうにもならなかった。
霞ヶ浦本湖の水があれほど白濁していなければ、
土浦入りの浚渫跡が生き返ってくれるのであるが・・・。

トーナメント初日、古渡まで走る予定だった。
古渡のテトラに魚の気配があったからだ。
が、ボートを走らせてほんの数秒後、進路を桜川へと変更した。
一瞬の閃き・・・と言うよりも、
風が強く波が高くボート走行がしんどいと思われたからだ。
ボートが急旋回すると、225馬力のエンジンが唸りを上げた。
これがその日のバスフィッシングの幕開けだった。

プラクティスで判っていたことは、
バスはメリハリのあるブレイクの下側2メートルほどの所にいて、
目の前を通過するルアーにだけ反応することだった。
だから、ディプシードゥーの#3である。
こいつをブレイクに沿って引き倒すのである。
メリハリのあるブレイクというのは、
シャローとディープを備えたブレイクのことで、
川の中州に見られるような片側は深いけれど、
片側は浅いというような変化に富んだブレイクである。
さらに、アシや杭などの複合するストラクチャーがあれば、
バスは完璧に着いていた。オレはこんな場所を五カ所持っていた。
そして、たとえ釣り上げても数時間後には、
そこに新たなバスが来ることを知っていた。
だが、それらの全ては旧道を越えたあたりから点在していた。

トーナメントでは、
河口部からデッドスローで走らなければならないルールだったので、
行きがけの駄賃にと河口近くの棒杭エリアで、
ディプシードゥーを引いた。
およそ五十メートルほどの距離を三回流したが、
バスからの反応は届かなかった。
次のスポットは常磐線の鉄橋下である。
一匹目はノーネイムクランクベイトで釣れた。
キロオーバーだった。ツアラーの軟らかいバージョンがよく耐えてくれた。
行きがけの駄賃って、本当にあるんだね。
気をよくしたオレは、ここで時間まで粘ることに決めた。
深い方の橋脚を探るときは、ディプシードゥーの#3を使った。
何投目かの巻き上げ時に、ゴゴゴゴッツーンと言う衝撃が手元に届いた。
バスである。これもキロを超えるナイスフィッシュであった。
結局この場所で、三匹のバスを手にすることが出来た。
重さはおよそ三キロほどである。

仕上げの二匹は上流で釣り上げる予定だった。
予定と言うよりも、こちらが本命だった。
「二匹なら、明日の分も残して釣ることができる」。
なんてスケベ勘定している自分が、
ピノキオに出てくる悪賢い狐のように思えて嫌だった。
が、ルアーは意に反してひっきりなしに飛んでいく。
リールもひっきりなしに捲いている。
しかし、その後ツアラーが曲がることは一度もなかった。

二日間の結果は、五匹4650gで四位。
新ロッドのツアラーとディプシードゥーが貢献してくれた、
今回の上位入賞だった。ありがとう!