冨安 隆徳

愛知県豊川市在住。ルアーで四季折々の魚を求め釣り歩く、アウトドアが大好きなサラリーマン。

主なターゲットは、九頭龍川の桜鱒、天竜川水系遠山川のアマゴ・イワナ等。


《 2019 九頭龍川釣行記 その2 》


【4月の九頭龍川】

 いよいよ渇水が現実のものになってきた。最初から雪解け水は期待していなかった。しかしこれほどまで雨が降らないシーズンも珍しい。解禁から連休直前の増水まで低めの水位で安定し、川がクローズドになることは1度もなかったのだ。
 サクラマスは溯上魚である。増水で溯上のスイッチが入り、水位の変動で着き場を変える。この釣りの醍醐味は、魚の動きを読みながら釣り歩くことにあるのだが、今季は渇水で魚も人も下流部に集中する傾向にあり、広範囲に釣り歩くことが少なかった。
 その一方で4月未だというのに河口でサクラマスが釣れている。下流部には増水を待ち侘びる魚達が待機しているのだろう。
彼女たちはいつ遡上するのだろうか?
いつ遡上できるのか?
厳しい夏を乗り越えることができるのだろうか?
そんな心配をしながら渇水の九頭龍川に立ち続けた。


【2度目のバラシ】

 4月の中旬に平日の休みが取れた。そこでこれまで気になっていた瀬落ちのポイントに入ることにした。幸い先行者はいなかった。平日釣りができる喜びを噛みしめながら、まずは遡上の途上で一休みしている魚を狙って、右岸側の開きを手早くチェックしていく。
 次にそのまま右岸を攻めようとも考えたが、この日は何時まで経っても左岸に釣り人が現れることはなかった。こんなこともあるんだ。平日は!すぐに車で対岸に移動し、左岸の瀬落ちから再び入り直した。
 このポイントは早瀬が右岸のテトラ帯にぶつかり、開きながら2つの流れに枝分かれしていく。テトラの前が深く、流芯はややテトラ寄りを流れている。狙い処は瀬落ちの流れのヨレと左岸の岸際のかけあがり。そして水深の浅いヒラキではないだろうか?まずは瀬落ちのヨレから攻めていくことにした。
 ロッドはインターボロンXX IBXX-83MSD。ルアーはチェリーブラッドMD90のチャートゴールドを結んだ。流心の向こう側にキャストし、水を掴ませながら流れを切っていく。最初はそのまま流して反応を見ていく。次に流心を抜けた辺りで軽く誘いを入れる。この時のイレギュラーな動きとその後のポーズで食わせの間を与え、反応がなければそのまま流し切る。
 今年は人的プレッシャーのためか?甘噛みによるバラシが多く、私も3月に苦い経験をしている。そのうえに魚からの当たりもほとんど無い!と多くのベテランたちも嘆いていた。そこでいつものドリフトの釣りに加え、強めのジャークでフォローを入れていくことにした。
 瀬落ちの頭から10分程釣り下り、ドリフトとヨレを加えた流しに反応が無く、ジャークの釣りに切り替え流した3投目。流心を横切り手前のかけあがりをダウンでゆっくり引いている時だった。ここで強めのジャークを入れ、水面まで浮き上げたルアーに何かが襲いかかった。ジャーク後でロッドは頭上にあり、合わせの引きシロが取れなかったため合わせが十分とは言えなかった。魚は水面で暴れた後にルアーを外し水中に戻って行ってしまった。その時の体高のある白銀のボディーが水面直下でローリングしている姿を、今でも鮮明に覚えている。残念なバラシであったが、狙いのポイントと釣り方で魚からの反応が得られたことがなにより嬉しかった。
 普段からルアーをしっかり見せて喰わせることを心掛けているため、掛かる魚の殆どが、ベリーのフックがしっかり掛かり、その後も優しくファイトをするためバラすことは殆どない。しかし今期はこれで2度目である。思うような遡上ができず、毎日多くの釣人からルアーを見せられてスレ切ってしまっているのか?それともジャークで食い損ねたのか?今期未だに当たりがないと嘆いている仲間も多く、バイトがあっただけで幸運なのだと自分に言い聞かせその後も釣りを続けた。


【チャンスを生かせず】

 今期2度目の増水は連休直前にやってきた。久しぶりの増水に期待していたのだが、下げ水のタイミングと我が家の田植の準備とが重なり、泣く泣く今回は断念することとなった。その翌日にスケジュールを合わせ臨んだものの流れは既に平水に戻り、活性の高い魚は抜かれてしまったようで、私たちの狙うポイントからは魚の反応は得られなかった。ただ今回の増水で川は一旦リセットされ、上流にも群れが到達したことだろう。そう前向きに捉えることにした。その後の連休後半は、低水位に晴天(?)が重なり、田植えも最盛期を迎えこれまで以上に濁りが厳しく、結局連休中は思うような釣りができずに終わってしまった。


【日帰り釣行】

 連休明けの週末は日帰り釣行となった。限られた時間を効率的に使うために早めに家を出て、6時には釣り場に着いた。幸い連休直後の週末ということで釣り人の数も少なく、中流域の好ポイントにも先行者はフライマンが1人だけだった。好ポイントを早朝2番手で流せる幸運を得ることができた。しかし期待のポイントは水量、流れとも期待していたものとは程遠く、早朝にもかかわらず水も冷たさを感じることはなかった。結局その後は痩せ細った川を、深場や早瀬を求め彷徨い歩いたが、何の反応も得られず午前の釣りは早めに切り上げることにした。
 いよいよ初夏の釣りにシフトする時期になったようだ。


【初夏の釣り】

 濁りと低水位となる連休後は例年釣りのスタイルを変えている。これまでは溯上モードの魚を狙って、流れのヨレを中心に終日釣りをしていたが、これからは朝夕まずめ時は、穏やかな流れに潜む魚を狙い、日が高くなると瀬着きの活性の高い魚を捜し釣り歩く。お昼は休憩に充て、日が傾き始める少し前から、日中竿抜けになった流れで釣りを再開し、日没までは水深の浅い開きで投げ続ける。
 5月の水の減った九頭龍川は静けさを取り戻し、釣り人もサクラマスフリークと呼ばれる釣り人とフライマンにだけになってくる。初夏を思わせる強い日差しと、日に日に薄くなる魚からの反応。釣果は厳しくなっていくが、釣りは反対に楽しくなっていく。馴染みのフライマンらと僅かな流れをシェアしながら、日がな一日のんびり釣りをするのも楽しいものだ。年齢を重ねることで私のサクラマスへの向き合い方も少しずつ変わってきたようだ。


【チェリーブラッド SR90 type U】

 今この渇水時にぴったりのミノーを密かにテストしている。チェリーブラッドSR90シリーズにはノーマルのフローティングとSS(スローシンキングモデル)の2種がある。
 河川改修により川の表情が変わり、浅くフラットな流れが多くなってきた。SR開発当時は流れに強く、飛距離が稼げるシャローランナーを目指してきが、近頃の低水位と浅い水深、弱い流れへの対応が求められるようになった。変わりゆく環境変化に対応するため、昨年から様々な状況でテストを続けていたのだ。そして連休後の今はまさにこのSR90Type-Uの開発コンセプト通りの状況になってきた。
 この流れのない状況はスローリトリーブでも綺麗に泳ぐ、反応の良いミノーが必要だ。チェリーブラッドSR90Type-Uはそのためのチューニングが施してある。立ち上がりが早く、弱い流れのなかでゆっくり引いても、少し強めのローリングで泳いでくれる。日差しを受けながら表層を強烈なフラッシングを発しながら、中層に潜むサクラマスを喰い上げさせる。そのためにもノーマルよりも若干深度は浅く設定してある。


【午後からの釣り】

 午前中、中流域のシャローエリアを攻めたものの魚からの反応はなく、30度近い気温と強い日差しに、流石に厳しいと判断し早めの休憩に入った。日帰りなので帰路の道中を考えると闇雲に体力を消耗させることは得策ではない。日影で仲間と談笑しながら休養を充分取り、日差しが弱まる4時前から再び釣りを再開した。
 午後は上流部の開きを攻めたが気配が感じられず、再び中流域の瀬に戻り日が高いうちは瀬のポイントをランガンしながら釣り歩いた。そして日が傾き始めたころから、流れの緩いポイントに潜む魚をSR90Type-Uで狙い始めた。


【思わぬ深みを発見】

 時刻は5時過ぎ。日差しも弱まり西の空に傾き始めていた。左岸から入川し、中州に渡りながら落差のある瀬の落ち込みから順に攻め上がっていった。強い日差しや水温上昇を嫌って瀬に入っていた魚達も、夕まずめが近づきそろそろ静かな居心地のいい場所に移動しているのではないだろうか?右岸の河原で談笑していたフライマンたちも、イブニングライズに備え身支度を始めている。初夏の開きは今日一日の釣りを締めくくる人たちで再び賑やかになってきた。
 私はこの長いランの最下流部の開きのポイントを選択した。ちょうど今期1尾目のサクラマスを獲った対岸の流れである。今は当時の水の勢いはなく、鏡のような穏やかな流れになっていた。この時の魚は、左岸のテトラの前に広がるトロ瀬の地形変化や、障害物に身を寄せて小休止していた遡上途上のサクラマス。
 今日狙っているのはこの穏やかな流れに居着き、夕マズメに少しだけ活性の上がった魚。もしくは日中水温上昇を嫌って流れのある瀬で過ごし、夕マズメを前にプレッシャーの下がったタイミングでこの穏やかな流れに身を寄せた魚。いずれも遡上途上の活性の高い魚ではなく、この静かな流れを好んで差してきた魚である。緩い流れの中でむやみにプレッシャーを与えることなく、スローな釣りでアプローチしていく。
 右岸の開きから流れに対してかけあがっていく地形変化を釣ろうとポイントに入ったが、実際右岸から流れの最下流部を見た時、思いの外深く掘れている場所があった。僅かな水深の変化であったが、明らかに水色が変わっていた。右岸側の瀬と左岸の激流の瀬を溯上した魚は、この開きの直前のこの深場に自然と身を寄せることだろう。そう考え日没までの時間をこの変化に賭けることにした。





【結果はすぐ出た】

 水色も午前を思うと随分澄んできた。そこで夕マズメの定番のチャートやゴールドベースでなく、派手過ぎないパールベースのヤマメカラーを選び、流れに馴染ませながらスローリトリーブで誘っていった。そして10m程釣り下った時だった。弱めにセッティングしているステラのドラグが突然鳴り、SR90 type−Uを魚が襲った。
やっぱり居たね〜。
やはり夕方なんだよね。このポイントは。
 思い通りの展開にそうつぶやきながら、まずは最初の走りをひとまず耐える。浅瀬で掛けるサクラマスの引きは強烈だ。なにせ逃げ場が無いため、縦横無尽に走り回る。障害物は無いので不安を感じることは無いが、水面を飛び出しジャンプされるのだけは避けたかった。ロッドを寝かせながらその曲がりを楽しみ、動きが止まったところでゆっくりと寄せていく。水面に浮かせない様に注意しながら魚をいなし、徐々に距離を詰めていく。時折水面に浮きあがる魚の口元にはSR90Type-Uのベリーのフックがしっかり掛かり、外れる心配はなかった。ここからはサクラマスの引きを楽しみながら、ランディングの体制に入っていった。そして水面に横たわったままの姿となったところをチェリーネットで一気にランディング。なんとか今回もプロトのルアーで狙いのターゲットを獲ることができた。
 58cmで少しスリムな魚であったが、シャローで掛けたこの時期のこのサイズのサクラマスの引きは格別で、久しぶりにドラグ音を聞きながらファイトを満喫した。喜びをかみしめながら、魚を河原に静かに寝かせ、日没迫る河原で夢中になってサクラマスを画像に納めた。







 早速開発者に釣果報告をすると大変喜んでくれた。渇水時のこの時期に使うシャローミノーとして必要な性能を備えたこのモデルの追加で、すべての浅瀬の釣りを網羅できるチェリーブラッド SR(シャローミノーシリーズ)が完成することになるため、なんとかリリースに繋がることを望んでいる。


【これから】

 5月に入り福井市内からは上流部の残雪は見られなくなった。いよいよ渇水も本番を迎え、今後どのように水位が落ちていくのか?それだけが気がかりだ。一雨欲しい。気温が上がり切ってしまう前に。未だに河口部付近にいる魚達が、少しでも上流に遡上できるように。
 なんとか鳴鹿の堰堤やその上流の小規模堰堤を突破し、産卵床の付近の深場で静かに夏を過ごして欲しい。そう思わずにはいられない。


● マイタックル

◇ロッド スミス インターボロンXX IBXX-83MSD 77MSD 88MSD
◇リール シマノ ステラ 4000 C3000
◇ライン ヨツアミ G-soul W8 PE 1.0号
◇リーダー バリバス ナイロン 22LB 16LB
◇ルアー スミス  チェリーブラッドSR90TypeU  SR90 90SS  LL90S  DEEP90  DEEP70 
MD90S MD90 MD82S MD82
DDパニッシュ95F 95SP 80S 80SP 80F
D−コンタクト85
バック&フォース 13g 16g  メタルミノーEX  バッハスペシャルジャパンバージョン18g
ピュア18g 13g ベイティスU 22g 17g
◇フック  スミス シュアーフック 3G 4G
◇スナップ スミス クロスロックスナップ ♯3
◇ネット スミス チェリーネット L



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