奥代 直行

北海道 道東在住

子供の頃、開高健の小説を読み、ルアーフィッシングをはじめる。
北海道のトラウト、サーモンがメインターゲット、自然と釣りをこよなく愛す、彫金師。
モットーは『自然と魚に遊んでもらう』。



《 2018年10月下旬 北海道 屈斜路湖釣行 》


北国の短い夏が終わり、長い冬へと移り変わるまで準備期間、申し訳程度の秋がある。
秋が特別短い訳ではないのだが、日中と夜との寒暖差が激しいため、視覚で秋を楽しめる紅葉が、色づいたと思ったら短期間で散ってしまうのだ。

落ちた木々の葉が川を流れ始め、ルアーに絡みついてくる事が増えると、私は中流〜渓流用のロッドを、湖用の長いロッドに持ち替える。


屈斜路湖、北海道を代表する湖のひとつで、日本最大のカルデラ湖だ。
私は数年前からこの湖の魅力に取りつかれ、毎年、春と秋に足繁く通っている。

メインターゲットはレインボートラウト。特にこの湖の一部の個体はプラチナレインボーと呼ばれる。
特徴は、斑点が少なく、全体が白金色の鱗で覆われ、背は瑪瑙のようなグリーンバック、尾鰭の付け根はパラジウムをまぶしたように美しく光り輝く。
このオタクのような文面からも伝わるように、私はこの魚とフィールドに心酔している。

3年前にプラチナの60アップを釣って以来、未だそれを超える個体には出会えていない。


今年こそは!と気合を入れて真っ暗なうちから車を走らせた。

現場につくと、ポイントを移動しようと車に乗り込むアングラー達の姿が。
悪い予感がしたが、準備をしてポイントへ向かった。
うすうす感づいてはいたが、無風、ベタ凪。鏡のような湖面を見て、思わず溜息が出た。

しばらくあれこれと試してみたが反応が得られず移動することに。

移動先はシャローエリアが広がり、小さな沢が点在し流入するポイント。
水面を偏光レンズ越しに観察するとワカサギや、トラウトの稚魚たちがスクールを作っていた。依然、無風状態でタフなコンディションなことに変わりはなかったが、ベイトを確認できたことでモチベーションが上がった。


ベイトフィッシュのサイズに合わせ、チェリーブラッドLL70Sをチョイス、水面がざわつきベイトが追われている様子があったので、すかさずキャスト。
スローリトリーブで時折ごくごく軽いトゥイッチを入れる、リーリングしていた手がピタと止まる、根がかりか?と思いながら軽いフッキングをいれると、猛烈な勢いで水面を切り裂くライン。

最初のフッキングが浅い懸念がある為、追いアワセを入れ戦闘態勢をとる、恐ろしいほどのトルクでラインを引き出され、ドラグを締めようかとも思ったが、このパワーの魚とガチンコファイトをするとフックが伸ばされる可能性があると思い持久戦へ。

何度も、ラインを出されては寄せてを繰り返していたが、最後はベテランの同行者がランディングしてくれた。

あがってきたのは72cmのアメマス。 淡水アメマスの自己記録を大きく更新するサイズだった。


体色や斑点の大きさや形、ヒレの縁取りなどからして、陸封型の特徴が強いオスの個体。

手のひらに収まらない程、大きな尾ビレ。特筆すべきはその大きく突き出した下顎。三ツ口と呼ばれる上顎が割れている個体はよく見るが、突き出した下顎が三ツ口の割れ目にすっぽりはまり、まるでスプリットリングプライヤーの先端のようになっていた。



興奮状態で写真を撮ったせいで、家で確認したデータの半分くらいはピンボケだった...


その後移動したポイントで、ブレイク付近をメタルミノーEXで探り、本命のレインボーにも出会えた、サイズは45cmとアベレージだったが美しく陽光を反射させる魚体に癒された。




風が出てきたタイミングで、チェリーブラッドLL90Sに良型のレインボーがヒットしたがジャンプ一閃で痛恨のフックアウト。
本命のレインボーに関しては不完全燃焼だったが、思わぬビッグゲストのおかげで、満足のいく釣行となった。

水温が下がりトラウトたちが表層を回遊し始めるこれからのシーズン。まだ見ぬ大型プラチナレインボーとの出会いを夢見て釣りを楽しみたいと思う。


タックルデータ

ロッド TLB-79DT
リール S社3000HGM
ライン PE0.8号
リーダー 20lb
ヒットルアー チェリーブラッドLL70S、90S
メタルミノーEX



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