奥代 直行

北海道 道東在住

子供の頃、開高健の小説を読み、ルアーフィッシングをはじめる。
北海道のトラウト、サーモンがメインターゲット、自然と釣りをこよなく愛す、彫金師。
モットーは『自然と魚に遊んでもらう』。



《 2018年 5月下旬 道北河川 イトウ釣行 》


北国の遅い桜もすっかり散り、モノトーンだった木々が、新緑に染まってゆく5月の下旬、友人と前々から計画していたイトウ釣行に出かけた。

北海道の一部河川にしか生息しない、国内最大の淡水魚イトウ。産卵期が4月〜5月中旬の為、ほとんどのイトウ狙いのアングラーが動き始めるのは5月末くらいからだ。

イトウ遠征の日が近づくにつれて、楽しみでなかなか寝付けなくなった。私はこれを「遠足病」と呼んでいるが釣り好きなら誰しも経験があるのではないだろうか。笑
わくわくしながらタックルを準備し、仕事を終わらせてからイトウの聖地、道北へと車を走らせた。


夜の片道6時間のドライブはなかなか厳しいものだったが、無事に到着し友人と合流。
朝一で入った本流のポイントでは反応が得られず移動、鬱蒼とした中規模河川へ。

まだ肌寒い道北にも、気の早いエゾハルゼミの抜け殻を発見し、これもイトウのエサになるんだろう、などと考えながらキャストを繰り返していると、突然のヒット!
しかしワンテンポフッキングが遅れてしまい、ポーンと空中を飛んでくるDコンタクト85。
ファーストコンタクトを外してしまい、ややしばらく落ち込んでいたが気持ちを切り替えた。


その後もポイント移動を繰り返し、ルアーやカラーを替えて本命のチェイスやバイトは何度かあったものの、なかなかファイトまで持ち込めなかった。
大型のイトウの口は非常に硬い。しっかりフッキングさせる為、ダメージを減らす為にも今回用意したルアーのフックは全て太軸のシングルフックに交換している。


残り時間も少なくなり、最後に訪れた中規模河川のポイントに望みを託した。

生い茂る河畔林と、水中の倒木。
魚のつくストラクチャーとしては最高だが、ファイト中にそこへ逃げ込まれるのが厄介だ。

フックがはずれてバレてしまうのはしょうがないが、ラインを切られてしまうのだけは避けたいので『KOZ.EX-S69LH』をチョイス。

狭いポイントで取り回しのきく6.9フィートというレングスと、太いPEラインに対応したガイド設定。
ヘビーロッドにありがちなただ硬いだけの棒ではなく、よく曲がるティップ、強靭なバット、そして、それをスムーズに伝達するベリー部が、魚に主導権を握らせることなく、超大型の魚ともガチンコファイトができる。


深い笹薮を漕ぎ、倒木をまたぎながら次々と現れるポイントを撃っていく。
流れは緩やかだが水深のある、イトウが好みそうなポイントを見つけ、対岸のオーバーハング下に『ヘブン16g赤金』をアップクロスでキャスト。

ラインのたるみを取りながら、ドリフトさせる。ルアーが流心まで来てターンした瞬間、強く抑え込まれるようなアタリ。
すかさず渾身のフッキングを入れる。

直後、水面を割る強烈な首振り。「イトウだ!!」

アドレナリンで興奮状態の自分を戒めるように、「落ち着け、落ち着け、バレるなよ。」と呪文のようにつぶやく。

至る所に沈んでいる倒木に逃げ込まれないようファイトしていると、ランディングネットを手に友人が駆けつけてくれた。

最後まで気の抜けない状況だったが、経験豊富な友人がしっかりとネットに収めてくれた。


うっすらと婚姻色の残る魚体、大きくぶ厚い鰭、巨大な口、約75センチのオスのイトウだった。
撮影を済ませ、水中で魚体をやさしく支え、ゆっくりと優雅に泳ぎだすうしろ姿を見送った。



ランディング、撮影を手伝ってくれた友人とガッチリ固い握手を交わし、目標のメーターオーバーを釣るために、また来ることを誓い帰路についた。


タックルデータ

ロッド KOZ.EX-S69LH
リール S社 4000番
ライン PE2.5号
リーダー フロロ40lb
ヒットルアー ヘブン16g  3GRR



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