池谷 成就

ルアーでのキャスティング、レイクトローリングを中心としたビッグトラウト狙いのエキスパート。 「かわせみ倶楽部」主宰。


《 電光石火イワナ 》


 ゆっくりと春めいてきた山麓の小さな小さな渓流も、安易な入渓を拒んできた残雪も急激に融けはじめ雪代水と化し、ひとまたぎ出来そうな流れの幅と深さは数倍になる。水温も急上昇すれば長い冬をじっと耐えたイワナは猛烈な勢いで餌を追い始める。そのタイミングに合えばその魚の密度に驚き、タイミングを外せば魚が薄いと感じてしまう。しかしそのタイミングに合わせて入渓するのは休日アングラーとしてはとても難しい。また仮にそのタイミングに合ったとしても先行者がいればまたそれも運が左右する。今回は地元の釣り仲間からのとても有り難いピンポイント情報をもとに、おそらく狙っていないだろうと思われる位置から入渓も、のちにその目論見は外れることに。


 なるべく時間を空けたかったので時間帯は午後からとなった。日中の日差しに、こちらの姿を察知してか時折逃げる黒い影は目の錯覚かと思うほどのスピードで消える。ルアーを解禁当初当たった4gのバック&フォーススプーンに変更。まだ時期的に早いかな〜と思える水深40cmほどの瀬尻にルアーをアンダーハンドで振込みゆっくりと逆引きしてみる。「グググンッ」というアタリより「ガツッ」という瞬間的な一瞬のアタリが有るもフッキングまでには至らない。次は「ガガッ」まではいくのだけれどフッキングしない。アタリ方としては抑え込まれるような鈍重さにかなりのサイズを期待したのだが、結局一尾もヒットしてこなかった。次のポイントもその次のポイントも同じような電光石化的なアタリに翻弄され続ける。どこのどんなポイントでも魚の大小はともあれ魚のアタリはあるものの釣れない。


 どうやら先行者がいたようでスレている感じを受けたので大きくエスケープ。倒木や流木で形成されたちょっとした渕に縦の釣りを施す。今度は電光石化的に釣れたのは良型のイワナ。これまたルアーが着水してすぐにアタックしてきたので、単純にスレているか、スレていないかの差でしかなかったよう気もする今回の釣行。そこからしばらくはまさに電光石化で数尾のイワナと戯れた2時間ほどの釣りだった。




 小高い山間を流れる小渓流ではあるものの、南西への流れは雪解けも早い。もちろん日陰には当分の間残雪も残るだろう。春まだ浅く本格的な芽吹きは満喫できなかったが、森の静寂と雪代を抱いたせわしく流れる渓の音。そして峪の木霊(こだま)を感じとれた釣行だったのが嬉しい。尾びれの大きな元気一杯で電光石火のごとく動き回るイワナも、小さな流れに地元川守(かわもり)も、楽しい時間を過ごさせてくれた友人にも感謝感謝。


● データ

吾妻漁協:日釣り¥1.000.


● 使用タックル

ロッド MT-TEC55ULM(6ピーステレスコピックモデル)
リール アルファス Rエディション 103L(Avail仕様)
ライン フロロブラスト3lb
ルアー バック&フォース4gD-コンタクト50ジェイドMD



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