冨安 隆徳

愛知県豊川市在住。ルアーで四季折々の魚を求め釣り歩く、アウトドアが大好きなサラリーマン。

主なターゲットは、九頭龍川の桜鱒、天竜川水系遠山川のアマゴ・イワナ等。


《 2017 飛騨川釣行記 その4 》


【終盤戦を迎え】

 今季本流をメインに釣りをしてきたが、思うような釣果を残せず終盤戦を迎えた。8月頃から産卵を意識した渓魚たちは、秋の衣装をまとい始める。水深のある薄暗い流れの中に潜んで居る個体ほどその傾向が強く、茶色の体色に紅を引いたような個体も見られるようになる。そろそろ秋鱒の時期だな。今回はさらに上流を目指し、大きくポイントを移動することにした。


【朝はトロ】

 日の出前に現地に着く。まずは水深のあるトロ瀬から攻めていくことにした。早朝に浅瀬に差している大型をイメージし、ルアーを打ち込んでいく。久し振りの上流部は涼しく、緑に囲まれて釣りができることがうれしかった。穏やかな流れの中で良型の魚との出会いを求めたが、反応してくるのは20cm程の魚ばかりで、大型の気配は感じられなかった。
 次にオーバーハングした木々で薄暗い淵尻のポイントに向かう。ここは対岸の岩盤から流れ落ちる沢の水で更に涼しい。水深が浅いが岩盤際に思わぬ良型が着いていることがあるので手を抜けない。この日もウェイビー50Sを岩盤に沿ってドリフトさせると、何処に潜んで居たのか?突然姿を見せウェイビーを咥えて下流に走った。サイズは25cm程であったが、この魚も産卵を意識した少し色の入った個体。やはり薄暗く穏やかな流れがこの時期の魚達には居心地がいいのだろう。




 淵尻にますまずの魚が居た。ならばその上流の淵には更なる良型が潜んでいるかもしれない。すぐ上流の淵の中層からボトムにかけて深場を、ジェイドMD-S,DDパニッシュ65SP D-インサイト44 D−コンセプト48MD、ドロップダイヤ7gで念入りに探った。残念ながらこの淵にも留守だった。
 淵に繋がる落ち込みや流れ込みなど流れが当たっているところには、小型のアマゴやイワナばかりで、思ったような魚を捉えることはできず、午前の釣りは終了となった。狙い処がずれていたのか?時間帯なのか?里川エリアでも秋を控えた魚達は神経質になっているようだ。





【日陰と淵を求め】

 昼食後東屋で昼寝をして夕まずめに備えた。私はこの時期、夕マズメの方が魚との相性が良く、日暮前の一瞬に突如活性が上がることを何度も経験していた。そのため朝一番のポイントであまり状況が良くないことを感じたので、午前中は無理して叩かずに残しておいた流れがあった。日が傾き始めた夕方、木々覆われた水深のある静かな淵や前後の流れ込みやトロ瀬を攻めることにしよう。
 狙いは水深のある淵の頭と淵尻。道路脇の踏み跡のない斜面に分け入り、熊笹や竹薮をかき分けながら崖を下る。大岩を乗り越え、岩盤をヘツリながら、ゆったりと流れる静かな淵に入っていく。水深のある淵だがこれまでのように表層からは攻めず、ジェイドMD-Sやウェイビー50Sを流れに馴染ませながら中層に送り込み、イレギュラーな動きで反射喰いさせるのだ。ロッドはインターボロンXX IBXX-60MT。大型との出会いを確実にものにするため、バットパワーのあるこのモデルを選んだ。ジャークやトゥイッチの操作性を重視するならばもう少し張りのあるラグレスボロンTLB-63DT D-twitcher63といった選択肢もあるが、小型プラグのドリフトの釣りもするので、オールマイティーなXXが使いやすく、この時期の秋鱒狙いのマストになっている。
 さて午後最初に入ったポイントは、浅瀬も深場も全く反応は無かった。まだ午後3時過ぎ。渓魚達にはまだ日差しが残る流れは少し眩しかったようだ。
 次の日陰を求め、やっとの思いで降りた斜面を再び昇っていく。大汗をかきながら一旦脱渓し、車でさらに上流部を目指した。時刻は午後5時前。恐らく次が今日最後のポイントになるであろう。今日も何もないまま終わってしまうのか?そんな不安を抱きながら、何処から入ろうか迷い始める。夕方の日暮寸前に実績のある大岩と流れがつくりだす地形変化に狙いを定めるか?それとも今日攻めてきたが全く結果が出せていない水深のある淵から入るか?迷ったあげく、最後のポイントに選んだのは水深のある淵が連なるポイント。この淵は両岸から岩盤と大岩がせり出し、流れが絞られているポイント。適度な落差と木々に囲まれたシェードは午後から大型が身を寄せるには最適な流れ。岩盤の上からは石清水が流れ込み、涼しいというよりは少し肌寒さを感じるほどだ。
 まず手始めに入渓点から下流に連なる落ち込みに、ジェイドMD-Sを送り込み、中層を探っていく。次にDDパニシュ65SPでサイズに変化を持たせながら誘う。ジェイドMD-Sの「静」に対しDDパニシュの「動」。それぞれの個性を引き出しながら、魚を擦れさせないようにルアーを通したが全く反応がない。

 次に落ち込みの上流の淵尻。対岸の切り立った岩盤から川面に垂れる木々の下にタイトにルアーをキャストし、一旦沈めたのちに同様に「静」と「動」で反応をみていく。このポイントでは岸際にタイトについていることが多く、岩盤に平行に引きたいのだが、流れが緩くドリフトは困難だ。そこでDDパニッシュ65SPをアップクロスでキャストし、素早く中層に送り込んだのちにポーズを入れ、その後激しくトゥイッチングでリアクションバイトを誘っていく。左右、上下にルアーを躍らせ、ストップ&ゴーを交えながら反応を待つ。すると良型のアマゴたちがいつものようにルアーを追ってきた。しかしそのまま口を使う気配はない。「何かが足りないんだな?なんだろう。追いはあるのだが?」
 悩みながら立ち位置を変えたり、ルアーを変えたりしながら進み、この淵の最深部までやってきた。川幅、水深ともしっかりあるので、ここから潜行能力の高いチェリーブラッドDEEP70 アユカラーを使うことにした。


【チェリーブラッドDEEP70】

 これまでは里川エリアでは使うことが殆どなかった。しかし今年本流で尺に満たないアマゴたちが、なんの躊躇いもなく喰ってくる姿に自信を持ち、上流部の大型狙いで使い始めたルアーだ。DDパニッシュ65よりもさらに深いレンジを引くことができ、レンジキープ力に優れ、ロッドからの入力に敏感に反応する素性の良さは、この淵でも威力を発揮してくれるはずだ。
 このポイントにはいって夕まずも近いためか、魚たちの反応も良くなってきた。水の中は大岩や岩盤が複雑に連なり、「複雑な地形」「水温」「日影」「水深」「穏やかな流れ」等々、大型が身を隠すための条件はぼぼ全て満たしている。さて今日はどうだろう?
 チェリーブラッドDEEP70アユカラーに再び結び直して数投目。少し狭まった流れから黒い大きな影がルアーを追った。
「でかい!」
と思った瞬間、残念ながら深みに引き返してしまった。
「喰ってくれよ!」
と心のなかで叫びながらフォローを数回入れたのち、静かに岩盤をへつりながらポイントを移動した。
「擦れさせたくなかった。」
 足場の悪い苔の生えた岩を静かに歩き、上流からダウンで狙えるポイントに立ち位置を取った。


【まさかのバイト】

 実は大型が追ってくることは今季も何度もあった。しかし2度目は無い場合が多いので、「まただめか?」とすぐに諦めてしまうことが多いのだ。しかしこの時は違った。上流からダウンで流し直そうと淵の先に突き出た岩盤の岬に静かに乗り移り、ここから再びチェリーブラッドDEEP70をキャストした。ダウンで足元の岩盤際の深みをフルダウンで探り始めた。その2投目。少し下の大岩の足元を通過しようとしたとき、突然何かが喰ってきた。
「おっ!」
 魚の最初の引きに大型の魚であることは理解した。先ほどの黒い魚か?相手との間合を図りながら慎重にやりとりを続けた。静かな淵で障害物もない。時間をかけてゆっくりやりとりをしようと思った瞬間、その魚は水面に急に浮き上がり、ローリングを始めた。
「でかい!アマゴだ。」
 おそらく先ほどルアーを追ってきた魚に違いない。水面で暴れたあとに上流にジャンプをしながら流れの中に逃げ込もうと抵抗を見せた。魚の動きに合わせロッドを操り、二度とジャンプさせないようにティップを下げていなしていく。無理なプレッシャーかけないように慎重に寄せると、予想に反し素直に足元に寄ってきた。ただ油断はできない。ネットを準備しながら魚の動きを確認し、暴れる様子もなかったので岩盤の岬の先まで降りてランディングの体勢に入ると、流石に人影に驚いたのか、最後の力を振り絞り激しくローリング。この時チェリーブラッドのベリーのフックがしっかり蝶番に入っていたことを確認できので、その後は余裕をもってやりとりしネットに収めた。
 苦労が報われた瞬間だった。時刻は午後5時30分を過ぎていた。これ以上釣りをしていては画像を押える時間がない。後ろ髪を引かれる思いでこのポイントに別れを告げ、ライブウエルに魚を丁寧に納め、魚とともに一緒に岩場を下っていった。


【至福の時】

 素晴らしい!この一言に尽きる魚だった。数年前に手にした遡上鱒は、鼻が大きく垂れ下がった秋鱒で、ブナの入った魚体は美しいと言うよりは、気高さと圧倒的な生命感に溢れ、畏敬の念さえ抱かせるような魚体だった。今回の魚はそこまで成熟した個体ではないが、均整のとれたプロポーションの美しい雄。鼻も少し曲がり始め、側面は赤く色づいた40cmの伊達男。すでに西の空に日は沈み、いくら絞りを開けようが、感度を上げようが思うようにシャッタースピードが稼げない。ボケないように両手でしっかりカメラを押さえ、両腕はブヨや蚊にさされようとも必至にシャッターを切り続け、薄暗い河原でしばし至福の一時に浸たった。





【これから】

 本流遡上鱒を狙って今年は釣りをしてきたが、釣行を重ねた本流域ではなく上流の里川で見事な遡上鱒に出会うことができた。これまで打ちのめされて釣り場へ足が遠のいたこともあったが、これがあるからこの釣りはやめられない。今季はまだ本流域で良型を仲間が確認しているので、川の状況次第で、「本流」「里川」「上流域」とその時々のベストの流れの中で大型遡上鱒を追い続けたいと思う。


● マイタックル

◇ロッド スミス インターボロンXX IBXX-60MT IBXX-66MT IBXX-72MTマジカルトラウトMT-S56ULM/3
◇リール シマノ ステラ C2500HGS  C3000 ツインパワーC2000HGS
◇ライン  DUEL HARDCORE X-FOUR PE 0.6号
よつあみ G-Soul WX-8 0.6〜0.8号
◇リーダー フロロカーボン 1.5〜2.5号
◇ルアー スミス  チェリーブラッドDEEP70 MD82S MD82 MD75 MD70
ジェイドMD-F MD-SP MD-S MD-Sシェル
パニッシュ70 70SP DDパニッシュ65 65SP
バルサハンドメイドミノー 50〜65mm F・SP・S
D−コンセプト48MD  D−コンタクト50・63 D−コンパクト48
D−インサイト44・53  D-ダイレクト55
バック&フォース 7g  バック&フォース ダイヤ 4・5g
ドロップダイヤ 5.5g  ピュア5g日本アワビ
◇スナップ スミス SP♯0



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