冨安 隆徳

愛知県豊川市在住。ルアーで四季折々の魚を求め釣り歩く、アウトドアが大好きなサラリーマン。

主なターゲットは、九頭龍川の桜鱒、天竜川水系遠山川のアマゴ・イワナ等。


《 2016 飛騨川釣行記 (その5) 》


■ 過ごしやすくなった高山

 9月に入り高山で過ごす週末は本当に秋らしく、過ごしやすくなってきた。日中は30度近くまで上昇しても夜は上着が欲しい。本格的な秋の到来だ。垂れ下がる稲穂。飛び交う赤トンボ。飛騨の秋を楽しみながら、流れの中に秋を探しに今週も高山に向かった。

 前回の釣行で思わぬ秋色の良型イワナに出会うことができた。しかし遡上アマゴはなかなか姿を見せてくれない。
何処にいるのか?
いつ会えるか?
今年は出会えないのか?
 間もなくやってくる祭りの終わりに少し焦りを覚えながら、少しずつ色づき始めた広葉樹の中、インターボロンIBXX60MTを携え渓に向かった。


■ ダム遡上を求めて

 今回は少し上流にダム遡上の秋色を求め、バックウォーターの周辺で釣りをしようと考えていた。攻めたかったポイントには既に数台の車が止まっており、餌釣師が淵の前後を陣取っていた。だれも狙いは同じだった。やむを得ず少し川を遡った辺りに入った。 川の状況は悪くなかったが、釣り人は多くポイントも思う様に確保できない。そのため一旦反応がなかったとしても、ルアーローテーションやトレースラインを積極的に変えていった。釣り人側の工夫で限られたポイントを攻め切り、限られた魚からの僅かな反応を拾うことに心がけた。ポイントもこの時期の魚達の付き場になりそうな要素である。

@穏やかな流れ
A適度な水深
B身を寄せることができる+α(遮光性・ストラクチャー・深場等etc)
を意識し、リアクションの釣りを展開していった。

大きな岩が横たわる流れの中で、上流を目指す秋色が潜んで居そうな水深のある流れや落ち込みを中心に、ジェイドMDSを送り込んで様子を伺っていく。
流石に禁漁前の9月の週末。釣り師からの猛攻で警戒心が強くなっているだろう。狙いの魚はなかなか姿を見せてくれない。特にこの日のバックウォーターは渋かった。

攻められた後なのだろうか?
それともプレッシャーなのか?
あまりの人の多さに気力を失い、混み合うダム上流部を諦め、反対に魚止まりとなるダム下の流れに釣り場を大きく変えることにした。


■ 少し怯えながら

 この支流は数年前に熊に出逢った渓だ。強い日差しを遮ることができる薄暗いこのポイントは、真夏の日中でも釣りが成立することが多く、駆け込み寺のような存在だった。しかしあの日以来少し縁遠くなったこのポイントだが、今回は上流の人混みを避けるため意を決して攻めることにした。腰にクマスプレーを携え、鈴を鳴らして周囲の物音にビクビクしながら林道を奥に進んでいった。 V字の谷を慎重に下り川面に降り、増水後にイワナが溜りやすい落ち込みや、水深のある緩い流れを中心に秋色アマゴを求めルアーを打ち込んでいく。水量は多くない。流れも細く魚との至近距離の攻防が中心となった。口元までルアーを送り込むことができるので、ここではアピールよりもしっかりルアーを見せる釣りでこの支流の釣りを展開した。

 パニッシュ55F、ウェイビー50Sで表層から中層にルアーを通し、最後にジェイドMDSで中層から下の深場を攻め切り釣り上がっていく。林道には新しい車の轍が無かった。釣り人はあまり入っていないであろうと思われたが、相手をしてくれるのはここでも小型のアマゴやイワナたちばかり。打っては川を遡り、秋色を求めながら遠方に小さな堰堤下のプールが見えるところにまで来てしまった。

 生まれて初めて野生の熊に出会ってしまったのはこのプールの辺りだった。熊は人の気配に気づいていたのかは定かでないが、私と目を合わせることなく斜面を登って行った。真っ黒い大きな生き物の記憶は今も鮮明に脳裏に焼き付いている。今回も辺りにいないだろうか?周囲の物音にビクビクしながら、お昼前だというのに薄暗い流れの奥に足を踏み入れていった。

  木々に覆われ薄暗い小さな落ち込みにパニッシュ55Fのヒメカラーを送り込む。水深は50cm程度だろうか?魚が着いているとすれば、落ち込みの白泡の中か岩盤際の緩い流れの深みだろう。落ち込みの上流にパニッシュを打ち込み、流れに任せてドリフトさせながら反応を見ていく。


■ やっと出会えた秋色アマゴ

 周囲の物音を気にしながらのキャストであったが、上手く狙いのポイントに打ち込むことができた。思い通りのトレースラインをパニッシュは泳ぎ切り、落ち込みを何事もなく通過し、岩盤の前の還流帯に差し掛かった時、魚からの反応があった。暴れ方で魚は直ぐにアマゴであると解った。力強くボトムに張り付こうとする動きからある程度の大きさだろう。久しぶりの良型アマゴということで普段よりも慎重にランディングに入った。水深は浅い。無理をして浅瀬で暴れさせてはバラシの危険がある。流れの中でしっかりと泳がせ、静かに間合いを詰めて大人しく水面に浮いたところを一気にチェリーネットですくい上げた。

 大きさは尺クラス。驚くほどのサイズではないが、今年一番の良型アマゴだった。やっと今年初めての秋色のアマゴに出会うことができた。精悍な顔立ちから雄であろう。木々に囲まれた静かな流れの中でパートナーを待っていたのか?それとも秋の深まりをひっそりと待っていたのか?この時期ペアで行動していることも多いのだが、周囲にその姿は確認できなかった。やはりこの時期のアマゴは適度な水深と静かな場所がお好みのようで、今回も水深は浅いが、木陰の岩盤前の僅かな深みに身を寄せていた。

 水位の低い厳しい2016年。やっとシーズン初の秋色のアマゴに出会うことができた。手早く画像に収め、優しくもとの流れに帰した。「元気な子供たちを!」そう呟いた。

 久し振りのアマゴの姿をしっかりと脳裏に焼き付け、同時にこの支流の印象を新たに書き換えながらこの渓を後にした。





● マイタックル


◇ロッド スミス インターボロン IBXX−53MTH IBXX−60MT
マジカルトラウト ULフラッシュ MT-S56ULM/3
◇リール シマノ ステラ C2500HGS
シマノ ツインパワーC2000HGS
◇ルアー スミス  パニッシュ55F・SP  トラウティンウェイビー50S ジェイドMDF・SP・S
DDパニッシュ65SP    バルサハンドメイドミノー 50〜65mm F・SP・S
D−コンセプト48MD  D−コンタクト50  D−コンパクト48  D−インサイト44・53
D-ダイレクト55  バック&フォース 4・5・7g  バック&フォース ダイヤ 4・5g
ドロップダイヤ 3・4・5.5g  ピュア5g日本アワビ  ニアキス 4g・5g カナギジグ 5g
◇ライン  ヨツアミ PE G-soul WX8 0.6号
◇リーダー フロロカーボン 1.5〜2号
◇ネット  スミス チェリーネット ヤマメ
◇アクセサリー スミス  シュアーフックスーパートラウト1G クロスロックスナップ♯1



[ 戻る ]