冨安 隆徳

愛知県豊川市在住。ルアーで四季折々の魚を求め釣り歩く、アウトドアが大好きなサラリーマン。

主なターゲットは、九頭龍川の桜鱒、天竜川水系遠山川のアマゴ・イワナ等。


《 2014 飛騨川釣行記 その4 》


■ 9月中旬

 9月中盤は遡上魚のハイシーズンなのだが、奥飛騨禁漁による釣り人の増加と変化のない水位で魚達へのプレッシャーの高まり、ここに来てあまりいい結果が出せないでいた。

 この日も早朝から釣りを始めたが、魚の活性が高まったのは午後からで、それも緩やかな流れの薄暗いポイントばかり。良型は夕暮れのトロ瀬でパニッシュ55Fに反応したアマゴ一尾であった。

 思えば昨年のこの時期もこうだったかもしれない。魚たちは産卵を控え、流れの静かな日蔭に潜んでいることが多かった。近頃遊んでくれるのは子供ばかりでお年頃の魚たちは全く相手にしてくれない。すこしボヤキながら初日の釣りは終了となった。



■ バックウォーター

 里川や本流に近いポイントでは反応が得られず、翌日は上流にポイントを大きく移すことにした。

 入ったのはダム湖のバックウォーター。堆積した砂利と澄み切った流れの中をしばらく進むと、前方には砂防堰堤。高巻しながら崖を降りると、魚止めとなる水深1mほどプールが待っていた。「間違いなく足が止まるな。」高まる期待を深い呼吸で落ち着かせ、手前から丁寧にパニシュ55Fで様子を伺う。小さなアマゴが反応をしてくれ、ますますランドロックへの期待が高まる。

 中央の落ち込みにパニッシュをキャストし、手前の駆け上がりをゆっくり引いてくると、先ほどとは比べ物にならないほどの力強い当たり。「喰った!」ローリングとともに大型の遡上アマゴ。こんな場面を想定していたが、姿をみせたのはスレンダーなイワナ。長さは十分だが魚種が違った。


 深みに良型が潜んでいないかと、今度はジェイドMDでボトム付近を丹念に探ったが何の反応も得られなかった。このまま本湖まで釣り下ったが、この筋は人も魚にも魅力的なものではなかったようだ。当然釣果も無かったが、この積み重ねによりポイントを見抜く力が磨かれると考えている。

 地形図を頼りに魚と渓との出会いを求め、森の中を進んでいく。歓喜も落胆も常に流れの中にあり、この作業で結果が出たとき、釣り人に至福の時がやってくる。今日は残念ながら後者のようだった。


■ 最終釣行

 禁漁前の週末。愛知県の山間部は雨量規制で通行止になるほどだった。しかし飛騨には期待の雨は降らなかった。

 水位の上昇による魚の遡上を期待したのだが、叶わぬ夢となった。いつもの流れは、普段と何ひとつ変わらぬ様子でそこにあり、早朝の岩魚の魚信に好釣果を期待したのだが、その後は厳しい現実を突き付けられ、状況が何も変わっていないことを思い知らされる。

 薄暗い流れの中で40オーバーの岩魚を見つけたが、喰わせることができずに初日は終了。リズムが掴めない。2週続きの里川エリアの貧果にいよいよ気持ちの整理がついた。このままプレッシャーの高いエリアで禁漁を迎えるのは我慢ができなかった。明日は上流を目指そう!確信があるわけではないが、さらに上流域へ釣友と足を延ばすことにした。


■ 気分転換

 狙いは遡上中のランドロックアマゴ。簡単に出会える魚ではないので期待はしていなかった。広い河原に瀬や淵が連続する渓相は、遡上しやすいが、開けているため魚の着き場は多くない。

 釣り友を先に行かせ、私は周囲の景色や地形を楽しみながらのフォトトレッキングを楽しみながら、上流を目指した。ロッドよりもカメラを手に。

 秋の渓とはいえ、さすがに日差しが眩しく、ひらきのポイントからは小型のイワナの反応しかなかった。良型のアマゴの姿はどこにもない。やはり日蔭や深みがないと厳しいよな。そう思いながらも入渓点から1kmほど過ぎたあたりから、私も釣りを開始した。

 青空の下、美しい景色の中での釣り。広葉樹は徐々に黄色や褐色に色づき、秋の到来を知らせてくれていた。釣果は何も無いのだが、気分は晴れ晴れとしていた。時折吹きにける秋風が心地よく、ここにいるだけで気分は癒されていた。


■ 美しい遡上魚

 しばらく進むと砂利の河原に先行者の足跡。魚たちの反応が鈍いのはこれが原因だった。しかし二人はそんなことはお構いなしに、今年最後の渓の釣り(キャスティング)を思う存分味わった。

 徐々に日が傾き始めたころにひらきのポイントにたどりついた。上流の落ち込みからコンクリート護岸の切り立った法面を洗うように水路のようなトロ瀬が続く。鏡のようなポイントに魚が潜んでいるとは思えなかった。何気なく上流をめざし歩き始めると、岩影から突然黒影が上流に向かって飛び出した。黒い影は一旦上流に走ったのち威嚇するように私たちの前を横切り下流に下ると、再び上流の流れの中に消えて行った。

「・・・・・!」

 写真では見たことがあったが、あまりの美しさに言葉を失っていた。赤い帯の入った遡上魚。尾鰭付近に白くカビが入り、軽く40cmを超えていた。やはりいた。こんなところにいた。魚に姿をみられてしまって今更どうしようもない。どうすることもできないもどかしさはあったが、出会えたことが嬉しかった。ここまで釣り歩いた駄賃なのかな?
「来年はあの魚を獲りたいね。」
お互い口に出してはいないが、想いが同じであることは容易に想像がつく。
「来てよかった。」
ほぼノーフィッシュの二人の釣り師は、晴れ晴れとした笑顔で秋深まる飛騨の渓から下っていった。


● マイタックル

◇ロッド スミス インターボロン IBXX−60MT
◇リール シマノ ステラ C2500HGS
◇ルアー スミス  ウェイビー50・65  ジェイドMDF・SP D−コンタクト50 D−コンパクト
   D−インサイト44・53 ピュア5g日本アワビ
◇ライン ヨツアミ PE G-soul WX8 0.6号
◇リーダー ダイワ D-FRON α フロロカーボン 1.75〜2号



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