冨安 隆徳

愛知県豊川市在住。ルアーで四季折々の魚を求め釣り歩く、アウトドアが大好きなサラリーマン。

主なターゲットは、九頭龍川の桜鱒、天竜川水系遠山川のアマゴ・イワナ等。


《 2014 九頭龍川釣行記:その4 》


■ 濁りの前に

 濁りの影響を受けず、いいコンディションで釣りができる4月最後の週末。水田への導水は始まり、水位は低下傾向であった。低水位は嫌いではないが、今後厄介なのは田植えの代掻きである。濁りで魚の反応や釣り人の集中力も低下し釣果は下がるが、全く釣れないわけではない。 この濁りは5月上旬まで続き、その間我慢の釣りになることも多い。

 

 誰もが濁りが出る前に結果を出したいと考えるだろう。幸い私はなんとか結果を出していたので冷静に5月を迎えられるが、ノーフィッシュの釣り人はいよいよ追い込まれていく。気がつけば早いもので今年も残り1ヶ月程になってしまった。



■ 1日目

 今回は週末だけの釣り。初日の土曜日は北西の風も強く寒い1日で釣り人は少なかった。これまで好調だったので悪天候の中で釣りをする人が少なかったのか?だとすれば今釣りをしている人は釣果に恵まれていない人なのか?早朝からダウンを着て釣り場に立ったが、何の成果も得られず初日は日暮れとともに終了した。


■ 幼稚園裏を目指す

 5時起床。コーヒーを沸かし軽い食事を取りながら車を上流に走らせた。目指すは幼稚園裏。 堤防道路から川を眺めると、既に8号線下流の瀬では数名の釣り師が竿を振っている。さすがに盛期の九頭龍川。これが早朝の光景だよな。

 

 目指す幼稚園裏は後半戦の1級ポイント。長い瀬が続き、釣り下れば多くの釣り人でポイントを共有できる大場所。最初に核心部を攻めることは難しいが、待つことができればポイントには入れる。第2日曜日は人ばかりで釣りができなかったと聞いていたので、人気ポイントだが釣りが組み立てられる幼稚園裏を目指すことにした。



■ 車の無い水道局

 福井大橋(8号線)から上流側を眺めると思いのほか釣り人が少なかった。念のため水道局へ向うと車が止まっていない。混雑を警戒したのか?「これはチャンスだ。中州の瀬を攻めよう!」急遽目的地を変更し釣り場に向った。

 

  しかしこの期待は見事に裏切られた。高まる気持ちを抑えながら川原に立つと中洲にはフライマンの姿があった。「なんだよー。何処へ車を止めたんだ?」行き先を変更してまで入った水道局で、最初にポイントに入れなかったことが非常に残念だった。いつもなら誰も入っていない水道局の開きに移動するのだが、この時はそうしなかった。プレッシャーよりもポイントを重視したのだ。フライマンが1人なので、日が差したころに瀬の開きを攻めることができる。そう考えた。先行者がルアーマンなら間違いなく水道局に移動したが、今回は少し待つことにした。



■ 待ち時間を有効に

 ポイントが空くまで川の状況を観察した。前回よりも60cmほど低かったため、地形の変化がよく解った。

 

 今年は1本調子で攻めどころが少ないと考えていた水土管だが、実はそうではなかった。流れ出しからの緩流帯は去年よりも狭くなった。しかしすぐに緩やかな開きが続き、その下には深場が確認できた。この深場は去年までなかったもので、流れにメリハリがつき魚が溜まり易そうな雰囲気があった。水が高い時は押しの強い表層の流れでルアーが届かないだろうが、少し落ち着けば充分チャンスがある。人気ポイントなので簡単には入れなかっただろうが、ノーマ−クだったので少し後悔している。

 

  早朝のいい時間をポイント待ちに費やしたが、今後に繋がるいい情報が得られた。これで魚に出逢えればもっといいのだが。そう思いながら、ラインシステムやフックポイントを確認し、万全の体制で水土管に入ることにした。



■ 水土管(水道局〜(中洲)〜土管)

 30分くらい待っただろうか。100mほど釣り下ったフライマンに続き、いよいよキャストを開始した。まずは瀬頭にチェリーブラッドMD90Sを流し、流芯の脇と手前のかけあがりで小さな誘いを入れながら様子を覗う。流れ出しは少し速かったものの、開くにつれて魚が好みそうな緩流帯が続いていた。流芯は右岸寄り。芯から手前はいい感じの流れで水深も適度にある。この水深と流れならばMD90が丁度いい。早朝なのでチャートやゴールド系を中心に、中層を流すイメージで続く開きを探っていった。


■ 張り出し

 手前の緩い流れは下流に向ってゆるやかに深くなった後に、右岸に向って張り出したかけあがりに沿って右に向って下っていく。右岸寄りの流芯は、張り出しの先端で左岸よりの緩い流れと合流し瀬に続いていた。フライマンは張り出しを攻め切って早々と川を上がったようだが、そこに下流からルアーマンが入り、張り出しの周辺のかけあがりを攻め始めた。何の迷いもなくここだけを攻めるところから、ここは実績のあるポイントだと確信した。流れや水深、地形も変化もあることから彼がピンポイントで攻める理由は良くわかる。

 

 合流した2つの流れは張り出しの先端から続くミオ筋に沿って土管の瀬に流れている。このミオ筋と浅場の張り出しのかけあがりに沿って魚は遡上してくると考えた。ルアーマンは張り出しのかけあがりを先端まで撃っていたようだ。憶測の範疇だがミオ筋まではロングキャストはしておらず、白いルアーだったのでナチュラルカラーを使っていたと思われる。 そこで飛距離と流れを考え、フローティングからシンキングのMD90Sに変更し、カラーも先行者とは異なるチャートオレンジで合流周辺やミオ筋を探っていった。ただミオといっても水深1mほどでそれほど深いわけではない。静かに張り出しの浅瀬をウェーディングしながら、先端部分の筋を扇状に丹念に流していった。


 

 緩やかだった張り出し周辺の流れも、土管の瀬に向って序々に勢いを増して流れていった。ロッドで水深とトレースコースをコントロールし、ナチュラルドリフトで魚の反応を見ていく。

 

 少しずつ流す角度を替えながら流し始めた数投目。サクラマス特有の首を振るような当りとともに、サクラマスが水面に姿を現しローリングを始めた。「喰った。」

 

 だいぶ遠くで掛けたので確認できないが、しっかり見せたので今回も腹のフックをしっかり喰っているだろう。ただ浅瀬で無理なファイトはしたくない。ローリングで底石にルアーが触れるとフックが外れることもある。このまま流れに乗って土管に下られても厄介だ。そこで少しドラグを締め、ゆっくりと水深のある所に誘導しながら、慎重に寄せてランディングに持ち込んだ。大きな魚ではなかったが、この魚も体高のあるいいプロポーション。鱗もしっかり付いており、暫く川で過ごした個体であることがわかる。長さは55cmと小ぶりだが綺麗なサクラマスだった。





■ 喜びを共有

 同じ頃直ぐ上流の水道局で福井の友人も魚を獲っていた。釣り雑誌のカメラを従えての釣行だったが、昨年に続き2年続けて取材で結果を出した。実力は誰しも認めるところだが、なにより強運の持ち主だ。その彼から私の魚も撮影したいと連絡があったので写真を撮ってもらった。

 

 プロの撮影風景は非常に興味深く、機材や光の使い方などが非常に参考になった。さすがに凄い装備で、釣りの取材は大変だなと思われた。サクラマスの取材は大変で、なかなか思うようにいかないようだ。今回も初日不調で諦めムードの中で、取材対象の友人を含め2匹のサクラマスの画像が撮れることはあまりないと感謝された。

 

 友人と喜びを共有でき、プロに撮影してもらえた今回の釣りはいい思い出になった。プロはどんな画像を創るのか今から楽しみだ。「雑誌発行までメディアへの活用は控えてください。」とのことだったので私の魚も雑誌に使ってもらえるのかな?



■ キーワードは「水温」

 遡上のピークを越えた5月に入ると魚との出会いは少なくなる。これからのキーワードは「水温」。水温上昇とともにサクラマスが流れ(瀬)に付くことは知られているが、私は単に流れを好むとは考えていない。水温が上昇する中、居心地の良かった場所がこの時期が流れのある瀬であったと考えるようにしている。

 

 反対に流れはないが水深のある下流域や淵は日差しが届きにくく、水温が表層よりも低く安定している。また伏流水も水温に影響があると考えており、これらの水温に影響のある要素を流域でどれだけ把握できているかは釣果に影響があると思われる。 また朝夕まずめの流れの緩い浅瀬でサクラマスが掛かることがあるが、この時間帯は日差しが弱くなり過ごし易い水温になる場合があり、釣り人からのプレッシャーも低いからだと考えている。 これからは朝夕を中心に、日中であれば「水温」や人的プレッシャーを意識して釣りを組み立て、シーズン終盤のサクラマスに挑んでいただきたい。きっといい出会いがあるはずです。



● マイタックル

◇ロッド スミス インターボロン IBXX−83MSD
◇リール シマノ ステラ 4000
◇ルアー スミス チェリーブラッド DEEP90 MD90S MD90 MD90S、MD82 MD82S、SR90
   DDパニッシュ 95F 80S
   バッハスペシャル18gベイティス17・22gピュア18g
◇ライン ヨツアミ PE G-soul WX8 1号
◇リーダー リーダー バリバス ナイロン 20LB
◇ネット スミス チェリーネット サクラ




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