冨安 隆徳

愛知県豊川市在住。ルアーで四季折々の魚を求め釣り歩く、アウトドアが大好きなサラリーマン。

主なターゲットは、九頭龍川の桜鱒、天竜川水系遠山川のアマゴ・イワナ等。


《 2013 飛騨川釣行記 7 》


■ 恵みの雨

 台風18号は私の住む愛知県東部を直撃し多くの爪跡を残していった。強風により住宅の屋根や看板などが吹き飛ばされたものの、幸いにも雨は短時間であったため水不足に喘ぐこの地方には恵みの雨となった。

 飛騨川上流部も増水はしたが大きな影響はなく、渓流釣り師には禁漁前のビックチャンスを与えてくれた。すぐに川に立ちたい衝動に駆られたが、そこはサラリーマン。自由になる筈も無く、この週末にその想いをぶつけることとなった。

 今年初めて婚姻色の魚を先週確認し、私のスイッチはすでにオン状態。この週末が待ち遠しく、今回は仕事を終えるや手早くタックルを詰め込み、その日のうちに高山入りした。いつも以上にやる気がみなぎる中、真剣モードの秋色アマゴ探索のスタートだ。


■ 勝負の朝

 朝5時。いつもならもう少し寝ているところだが、今回はそう言っていられない。増水後初めての週末。このタイミングを待っていた釣り師が準備をしていると思うと寝てはいられなかった。

 朝食も手短に済ませ河原に立ったのは6時前。まずは大型の遡上魚が足を止める深場をひかえた小さな落ち込み。岸寄りの流れには柳が覆いかぶさり、空からの天敵や眩しい光を遮断してくれるポイント。ゆっくりと流れに乗せてウェイビーを送り込み、オーバーハングした木や流木の際をチェックしていく。最初はナチュラルドリフト、次にアクションを加えて誘ったが反応はなかった。

 ここからしばらくは大岩がらみの落ち込み、合流点の深みを探ったが、今日は高水のため平水時の深場のポイントは水押しが強く、遡上魚が足を止めるような雰囲気ではなかった。予想以上の水量に早朝のベストタイムは、小型ばかりの散発的な結果となった。


■ 待望の秋色アマゴ

 期待のマズメ時を外し途方に暮れながら森の支流と思ったが、あるポイントが頭に浮かんだ。今年はいい結果が出ずに足が遠のいていたが、久しぶりに行ってみることにした。
 時間は10時半。盛夏ならこの時間には入らないのだが、今日狙うのは秋の遡上魚。あの淵に潜んでいるかもしれない。一定の深場とシェードがあり可能性が無い訳ではない。そこで午前最後をこのポイントに賭けることにした。

 太陽は燦々と容赦なく悩める釣り人を照りつける。民家の脇をぬけ、浅い瀬を暫く歩きながら対岸に渡り、狙いのポイントに向う。川は笹濁りで少し水量を増していた。渓流釣りには不釣合いの眩しい日差しの下、岩盤と沈み岩、小規模な流れ込みのある淵で釣りを開始した。中層からボトムまでをウェ−ビー、ジェイドMD D−コンタクトでレンジを下げながら攻めていく。

 核心部は流れが当たっている大岩の裏。この岩で二つに分かれた右岸側のシェードの下を通過する流れに狙いを絞った。大岩の周辺までアップで攻めたがこれまでのところ追いは確認できない。そう易々と魚からの反応があるとは思えないが、少ない確率であっても諦めず、可能性を1つ1つ潰して行くしかない。そこで大岩裏だけは念のためダウンクロスでフォローを入れることにした。


 対岸の暗がりの中にウェイビーを打ち込み、しっかりとカウントダウンさせトゥイッチでゆっくり誘ってみる。数回流したが反応はなく、次により深い棚を攻められるジェイドMDにルアーチェンジ。手に取ったのはブルーピンク。シェードの大岩の際に落とし、水を掴ませボトムに送り込んだ後に、レンジキープを意識しながらアクションを加える。

 そして2投目。緩流帯をボトムに向って潜行していたジェイドが、手前の流れに差しかかり動きに変化が加わると、すこし重いあたりとともにステラのドラグが小さく鳴った。アマゴのような鋭さではなく、トルクフルな引きで魚はゆっくりと下流に走り始めた。インターボロンXXのバットでいなしながら最初の走りに耐え、止まったところをこちらに引き寄せる。するとゆっくりと向きを変えた魚は抵抗しながら水面にその大きな姿を現した。「でかい!」側面にシロザケを思わせる虎模様が浮き上がり、うっすらと赤く色付いた大アマゴだった。尺クラスのようにジャンプをすることは無かったが、大型ならではの重い引きに思わず笑みがこぼれる。

 ジェイドのテールフックは魚の下顎にしっかりと掛かっていた。しかし化研の細軸なので無理はできない。ネットに手を伸ばしたが思うように外れないため、岸にズリ上げることにした。弱るのを待って距離を詰めると、浅瀬に入るのを嫌った魚が突然岸際のブッシュに向って走り出した。仕方なく強引にそのブッシュの横に誘導し、魚の逃げ道を足で塞ぎながら何とかランディング。お世辞にも美しいランディングではなかったが、背中のネットをなんとか外し上に被せて魚を確保。「やっと獲ったぞ!」その瞬間、そのまま河原に跪き、しばらく余韻に浸った。




■ 鼻まがりの雄

 堂々とした婚姻色の入った39cmの大アマゴ。これまでの自己記録。鼻が僅かに曲がり、威厳すら感じられる雄の固体。昨年この秋色アマゴを見てからは、この魚だけを釣りたくて高山まで通い続けた。下流域から上流の支流まで様々なポイントをチェックし、やっと手にしたこの魚。これまでの苦労が報われた瞬間であった。

 自分なりに分析すると、18号台風による増水で遡上スイッチの入った魚が、上流を目指す途中にこの淵に足を止めた。オーバーハングした木々が作り出すシェード、適度な流れと水温、大岩裏の適度な深みが魚にとって居心地がよかったのだろう。そこにダウンクロスでゆっくりとボトム付近に送り込まれたジェイドMDのトゥイッチングによるトリッキーな動きに誘発され、リアクションバイトしたと考えている。またもジェイドMDに助けられた。それもブルーピンクに。



■ 禁漁をひかえ

 いよいよ禁漁まで1週間。既に高原川・宮川・小八賀川は9月上旬で禁漁になった。それ以後飛騨川を訪れる釣り人も増えてきているようだ。とくに遡上魚が差すであろう支流絡みのポイントは、ら多くの釣り人により思うような釣りができなくなってきた。大型のチャンスもあるが、外す可能性も高いリスクの多い時期でもある。

 今回今年の目標は達成できた。これでシーズンを終えることも出来た。ただ「より綺麗な魚」「大きな魚」に出会いたいという釣り人の飽くなき欲望により、リスクが高くとも禁漁までここに通うことになるだろう。これが来シーズンの貴重な情報に、また釣り人としての経験値を高めることになるなら。


● マイタックル

◇ロッド スミス インターボロン IBXX−60MT
◇リール シマノステラ C2500HGS
◇ライン ヨツアミ G−SOUL PE0.6号
◇ルアー スミス ジェイドMD F・SP ジェイド F・SP
   トラウティンウェイビー50S AKM48
   Dコンパクト Dコンタクト Dインサイト44・53
   ピュア日本アワビ5g ハンドメイド50SP 65SP
   パニッシュ 55F・SP  DDパニッシュ65SP



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