冨安 隆徳

愛知県豊川市在住。ルアーで四季折々の魚を求め釣り歩く、アウトドアが大好きなサラリーマン。

主なターゲットは、九頭龍川の桜鱒、天竜川水系遠山川のアマゴ・イワナ等。


《 2013 飛騨川釣行記 4 》


■ 飛騨川 本流域(渚駅)

 今回は朝マズメを本流域で過ごすことにした。狙いは夏の本流アマゴ。鮎師が犇めき合う本流域でどんな結果になるのやら。

 国道257号から41号に合流する辺りで土砂降りの雨に遭う。国道から眺める霞んだ飛騨川は水量も充分で素晴らしい。天候以外の条件はすべて良好の条件のもとルアーマンらしき人影。ここは実績のあるポイントだとは容易に想像がつく。「出ればデカイだろうな。」そう呟きながら予定の上流部に車を走らせる。

 益田川上流漁協の最下流部に到着するころ雨は上がった。最初のポイントは飛騨川の淵と支流の合流点を攻めた。このポイントは、本流育ちの魚が潜んでいるのでは?と気になっていた。インターボロンIBXX−60MTを手に崖を下ると、残念ながら既に先行者の攻めていた。本流で始めて出会うルアーマンだったので、声を掛けようと降りていったのだが、彼は下流に下ってしまった。仕方なく地形を把握するため一通り攻めてみたが、小型のイワナが顔を見せてくれただけだった。

 淵の大きさと深さからみて、いい時期に当たれば魚はストックされるはず。地元ルアーマンらしき釣り人が入っていることからも、秋の大水の後か来シーズン攻めてみよう。


■ 支流で尺イワナ

 合流点からの帰り道、支流を遡って行く途中、多数のイワナを確認できた。この先には滝があり、下流の淵は本流からの遡上魚の魚止まりになっていた。攻められた様子も無かったので早速パニッシュ55Fで攻めてみることにした。

 大小二段の落差のある滝からの水が落ち込む淵の白泡を攻めてみたものの反応はない。次に手前のかけあがりにルアーを通すと、足元の深みからイワナが飛び出してきた。「よく引くな!」と思いながら寄せてみると尺イワナだった。

 その他グリーンバックのアマゴ、イワナからの反応もあり、小さな沢だったが数尾の渓魚の顔を見ることができた。



■ 夏の本流でイワナ?

 沢で尺イワナに癒された後、再び本流に戻る。日差しも強くなり夏本番。早朝の豪雨で濁りや増水を期待したのだが気配もなく、流れのある1級ポイントは鮎師で入れない。川原を歩き回り、なんとか大岩の落ち込みと淵の連なるポイントに出た。

 ウグイの気配を感じたので大型のパニッシュ70のグリーンゴールドで、大岩の落ち込み周辺の流れをチェックしたが魚影は見えない。次にDDパニッシュ65SPを一旦ダウンで送り込み、流れの下の緩流帯や沈み石周辺を探ってみる。大型魚が潜んでいるならこの深みなのだが、ステイさせたりシェイクで誘ってみたがこれにも反応しない。

 しかたなくルア−を回収すると、なんと大岩の脇から良型のイワナが水面を割って飛び出してきた。ピックアップ寸前だったので、フッキングと同時に魚は宙を舞い、そのままフックアウト。アマゴ狙いに突然のイワナのバイト。夏の定番ポイントの水通しのいい落ち込み。今思えばあり得ないことではなかった。あまりの暑さに攻め方が単調になった人とアマゴの低いアマゴ。やる気のあるのは居心地のいいポイントに定位したイワナだけなのか?


■ 撮り逃がした魚は・・・・

 炎天下の本流ではアマゴの反応が薄いため、午後から支流に入ることにした。先週なんの反応も無かった淵。今日はどうだろうか?まずはパニッシュ55Fで様子を伺う。魚が潜んでいるとすれば水泡の下か張り出した岩の脇だろう。

 少し下流からアップで流れ込みにキャスト後、水泡の下をゆっくりと誘ってみたが反応はない。次に少し強めのトゥイッチでアクションを加えて様子をみると泡の中から赤茶けた大型の魚が追ってきた。「でかい!」喰う気満々の様子に、敢えてそのままアクションを変えずにバイトに持ち込んだ。冷静に掛かり処を確認し、無理なプレッシャーは加えず、優しくやりとりをしながらランディング。「でかい!」久しぶりの40アップのイワナ。ネットの枠を超える大型に思わずガッツポーズ。パニッシュをガッチリ咥え、プライヤーでなければ外せないほどの完璧なフッキング。とここまでは良かった。

 足場の悪い岩盤のバンクに生簀を作り、撮影場所を確保した。石で組んだ生簀に魚を移し、早速一眼レフで撮影を始めた。イワナも観念したようで、大人しく生簀に横たわり、あとはシャッターを切るだけだった。

 ファインダー越しの40イワナは迫力があり、いいアングルになるよう魚体に触れたのことで我に返ったのか?突然暴れだし、壁を腹ばいになってよじ登り、逃走してしまったのだ。カメラで手が塞がっていた私は、その光景を眺めるほか無かった。「あー!なんだよ〜。」流れに戻ったイワナは、私をあざ笑うかのように一旦手前でステイし、ゆっくりと深みに消えていった。「どうせリリースするんだから。」こう自分に言い聞かせても、画像に残せなかった悔しさは収まらない。今日は良型イワナと出会いはあるのだが・・・。


■ 上流部を攻める

 しばらく休憩をとって気持ちを落ち着かせた後に、上流のポイントチェックを続けた。蜘蛛の巣の残り具合から先行者がいたとは考えにくい。期待を込めてパニッシュを打ち込んでいくのだが、反応が良くない。幾分先週よりも水位が下がり、透明度は上がったようだ。川底がほぼ把握できる状況では警戒されてなかなか姿を見せてくれなかった。

 堰堤下の淵でもボトムを丹念に攻めたものの、アマゴの反応は得られなかった。ここでも追ってくるのはイワナばかりで、尺上を含む数尾のイワナはキャッチできたのだが。堰堤上流も水量が少ないため狙い処も多くなく、日が暮れ前に支流を下り、この日の釣りは終了にした。



■ 獣の棲む村で

 その夜道の駅で合流した釣友と夕食をとりながら近況や今日の釣果について情報を交換した。彼は山間の支流筋をまわってきたようで、熊と猪に遭遇したとのこと。特に猪は対岸の崖を猛スピードで下ってきたようで、その光景に「恐怖を感じた。」と話してくれた。

 たしかに朝日村の随所に熊の罠が仕掛けられ、川沿いはイノシシ避けの柵も多い。獣たちの住処である森に入る私たちは、そのリスクを理解した上で釣りを行うことを認識しなければならない。秋を前にそのリスクを再認識するいい機会になった。恐ろしい体験談から釣り、仕事に至るまで話題は尽きることなく、夜中まで酒を酌み交わしながら飛騨の夜を楽しんだ。


■ 朝寝坊の翌朝

 「水温が低い川では日が昇ってからが勝負!」と決めこんだ朝寝坊の釣り師2名は、ゆっくりと朝食をとり、無謀にも真夏の渓流を8時頃からポイントに入る。既に日は高く私たちを容赦なく照り付ける。日陰の少ないポイントであったため、たとえ流れのある早瀬でもアマゴからの反応は得られず、結局早めに昼を済ませ、またも森の中の支流域に入ることにした。


■ それぞれの攻め方で

 今回同じ支流に入ったが、上流の瀬をフライの釣友に譲り、ルアーの私は一旦下流に下り、流れの緩い淵に入ることにした。フライとルアーへの反応の違いを試すいい機会。ここからは別行動で、後で情報交換し今後の参考にすることにした。

 私はトロ瀬と淵が連続し、ゆったりとした流れの中に小さな落ち込みが点在するポイントに入った。日差しを避け、流れ・水深・地形変化のあるポイントを叩きながら釣り上がっていく。すると昨日あれほど反応が薄かったこの支流のアマゴたちが少しずつ姿を見せてくれた。居るべきポイントでは高確率で魚の反応があった。一方水深があろうとも流れの無いポイントではアマゴの反応は薄く、安定した水温と酸素が供給される流れのある日陰の居心地が良かったことが推測できる。



 盛夏では日の出とともに気温、水温とも上昇する。低すぎてもダメだが、高いのはもっとダメだ。とくに高山のように標高の高い山々に囲まれ、朝夕の温度差が激しく夏も短い地域では、魚の活性や付き場は、その時々で激しく変化するのではないだろうか?天候変化や季節に応じた渓流魚たちの行動パターンを整理し、居場所を突き止め釣っていく。この引き出しの多さが釣果に直結するため、様々な試行錯誤を繰り返し経験値を高めていく。

 今日はあまりの暑さと水位の影響により前回のトロ瀬よりも快適な、日陰の流れのある瀬や落ち込み周りに付き場を変えていたのだろう。昨日出合えなかった綺麗なアマゴ達の姿をカメラに収めることができたので、今日は彼より先に渓から上がることにした。

 帰りの道中で、上流部をフライで攻めた仲間からの電話。25cmまでだったが、これまで釣ったことのない程の多くのアマゴに遊んでもらったと興奮気味であった。イワナよりもアマゴの反応が良かったそうで、「今はフライの方がいいのか?」と釣果の違いに戸惑った。どうも私が退渓した後で水嵩が増したようで、この変化で活性が上がったのではと慰められた。

 僅かな変化で結果が左右される釣りというゲーム。自然相手で予測できないから難しい。また何が起こるかわからないから楽しい。こんな思いにさせられた7月末の飛騨川だった。


■ これから

 真夏の渓流は人にも魚にも厳しい時期。源流部まで行けば話は変わるのかもしれないが。近頃の猛暑では良型のアマゴに出会うチャンスは限られる。ただ狙うは大型のアマゴ。本流域で鮎を捕食し、産卵のために遡上行動に入ったその個体。この時期本流域は鮎師が多く、釣りが成立しないため盛夏のポイントチェックは暫くお休みにしようと考えている。盆休みが終わり、猛暑も少し和らいだころ、再度秋色を纏った大アマゴを求め、飛騨川の釣りを再開しようと考えている。

 今年こと何とか獲りたい。チャンスはあるだろうか?


● マイタックル

◇ロッド スミス インターボロン IBXX−60MT
◇リール シマノステラ C2500HGS
◇ライン ラパラ ラピノバ PE0.6号
◇ルアー スミス パニッシュ 55F・SP トラウティンウェイビー50S ルナ47S・SP
   AKM48 ジェイドMD F・SP ジェイド F・SP
   DコンパクトDコンタクト Dインサイト44・53
   ピュア日本アワビ5g ハンドメイド50SP 65SP他



[ 戻る ]