冨安 隆徳

愛知県豊川市在住。ルアーで四季折々の魚を求め釣り歩く、アウトドアが大好きなサラリーマン。

主なターゲットは、九頭龍川の桜鱒、天竜川水系遠山川のアマゴ・イワナ等。


《 2013 九頭龍川の桜鱒釣行記 その2 》


■ 今年の九頭龍川釣行

 久し振りの如月桜鱒を手にし、気持ちも楽になった今年の櫻鱒釣行。例年ならば下流部のフレッシュを意識しながらも、釣趣に欠ける広大な下流域での釣りを選択することは少なかった。そのため遡上量の少ない早期の中流域でのゲームを展開し、悪いパターンに嵌ることが多かった。しかし今年は肩の力が抜けていて、川の状況を冷静に分析し、その時々の一番可能性の高いポイントを淡々と攻めることができた。この気持ちの切り替えが、久しぶりの2月の釣果につながったと考えている。

 このいい流れを維持できたことで、2本目の櫻鱒をそれほど苦労することなく手にすることができた。大切なのは活性の高まるタイミングを見逃さず、気負うことなく可能性のあるポイントを攻め続けることなのだろう。


■ 3月の九頭龍川

 3月に入り水位は大きな変化はなかった。寒さは例年以上で吹雪に出会うことも珍しくなかった。今シーズンの遡上スピードの遅れの原因とも考えられるこの水位も、春分の日を前にまとまった雨が降り、久しぶりの増水となりそうだ。チャンスだ。魚が動く条件が整った。

 さてどのタイミングで川に入ろうか?様々な情報を分析し、今回の日帰り釣行を決行することにした。


■ 3月20日 春分の日

 増水後の下げ水。最高の条件の中釣りができるのだから、普段とは違うアプローチをすることにした。祝日ということで週末よりも人出は少ないだろう。活性の高い魚だけを狙い、勝負の速いポイントをランガンしよう。

 最初に入ったのは通称「水道管(すいどうかん):水道局と土管の間の中州左岸」に、ロッドはインターボロンIBXX-83MSDとともに入川することにした。まだ日の出前。今年初めて早朝の釣りのため、昂ぶる気持ちを抑えながら土手を歩いていくと、すでにライトをつけたアングラーが居るではないか。しかたなく先行者から50mほど距離をとり、下って行いくことにした。水色は濃いささ濁りだったが夕方までにはいい色に落ち着くだろう。

 期待に胸膨らませ、ゆっくりと瀬の落ち込みからルアーを流していく。チェリーブラッドMD90Sチャート。濁りが入った早朝はこのカラーと決めている。増水による濁りを釣るこのゲームでは外せない色で、経験豊富なコアなアングラーから高い支持を得ているアピールカラーだ。

 活性の高い魚が定位しそうなかけあがりをテンポよく流したが結局反応はなかった。本当は日が昇ってから攻めたかったのだが、それではフィッシングプレッシャーが高まってしまう。魚は着いているだろうが口を使わなかったのだろう。早めに見切りをつけ移動することにした。


■ さらに上流をランガン

 次に水道局。今年は流れの芯がやや左岸よりになり、この水位では開きのテトラ前は厳しい状況であったため、開きの終盤数か所の流れのヨレだけチェックしたが反応は無く、さらに上流に向った。

 しばらく歩き福松大橋からの左岸分流と、右岸本流との合流点を攻める。昨年スリリングなファイトの末、フレッシュランを獲った場所で、活性の高い魚が足を止めそうなポイントである。しかし流し方が難しく、万一掛けてもランディングはさらに難しいポイントだ。さっそく本流からの分流と左岸寄りの分流によりできる流れのヨレ、水中のテトラが作り出す複雑な流れにルアーを流していく。足場が高いのでディープを引きたくなるのだが、敢えてここでもMD90Sをアップでキャストしながら送り込み、沈みテトラの前後や、地形の変化でターンをさせながら誘っていく。足場の悪いテトラを移動しながら、トレースラインを変えて誘っていく。

 しばらくするとこのエリアの本命と思われるポイントにアングラーが入った。やられた。ここを釣り下がりながら攻めたかったのに・・・・・。しかたなく釣り下るのを待ったが、いっこうにその気配はない。これ以上接近するのは嫌なので、ポイントを移動することにした。


■ リフレッシュ

 午前8時。福松大橋下流の左岸からトロ瀬のテトラ帯まで足を延ばしたが、深夜の運転によると睡眠不足も加わり、睡魔が襲ってきた。日も高くなり、水温も上昇していく絶好のタイミングであったが2時間ほど仮眠ののちに再開することにした。

 目覚めると10時を過ぎていた。再び水道局上流の合流点に向かうと先ほどの釣り師がまだ攻め続けていた。「ああだめだ・・・。」ここまで攻められては相当なプレッシャーだろう。残念な気持ちを堪えながら、福松大橋下流に移動する。いま思うとこの釣り師の存在が、その後の釣果に結び付いたとも言えなくはない。


■ 福松大橋下流左岸

 福松大橋下流左岸の流れは、少し早いがいい感じになっていた。明確な流れの芯があるわけではないが、地形の変化と水中のストラクチャーにより水面にはヨレが出ていた。下流の左岸側の分流も流れがあり、増水時にサクラマスが左岸寄りを遡上する可能性は十分ある。遡上し終えた魚が小休止する要素がこのポイントには備わっていた。

 まずは手前のかけあがりとテトラ回りにルアーを流していく。このポイントは足場が高いため、DEEP90でゆっくりとナチュラルドリフトで流していく。最初にパール系のチャートで活性のある魚を、次に赤金といずれもアピール系。濁りが入っているため、ナチュラル系はほとんど使わず、手前のテトラとそこからはじまるかけあがりを丹念に攻める。流れは速過ぎず,遅すぎず、今すぐ喰ってきそうな雰囲気のある最高の流れ。あとは魚が着いているか?これだけだった。

 数投のキャストでカラーチェンジをし、反応がなければ下流に下る。このアプローチを続け、20分程経過したころだった。十分に水を掴ませゆっくり流し切ったチェリーブラッドDEEP90(赤金)が、手前のかけあがりにさしかかるとリトリーブが止まった。ニゴイかな?まるでニゴイの背がかりのような感触が伝わってきた。ああやってしまった。このポイントでスレ掛かりは寄せるのが大変なためがっかりしていたところ、魚は一気に流れのなかに走っていく。「なんだよー。ルアーをロストするかもしれない。」そう不安がよぎった。

 沖に走るラインを目で追うと、魚が水面に姿を現した。「あれ。おかしいな。」ニゴイの背掛けならこの流れで浮き上がるはずがない。」当たりが全く無かったことからこの時点でもニゴイと確信していた。しかし魚は若干ローリングし、白くも見えた。「え!まさか。」魚はトルクフルな走りでラインを引きずり出していく。仕方なく少しドラグを締め、ロッドでこらえながら徐々に寄せてくる。この流れでも、ロッドに不安を感じなかった。引きは本当に強く何度もラインを出されたが、まだサクラと確信していなかったので、慌てることなく落ち着いてファイトができた。これがよかった。なんとか手前に寄せると今度は上流に向かって泳ぎだした。未だに疲れていないのだ。ラインテンションを保ちながら、魚が疲れるのを待つ。ただ手前はテトラと柳の枝など危険がいっぱい。少し沖に走られれば増水気味の強い流れ。これに乗られたのでは都合が悪い。魚の正体を確認したうえでじっくりと勝負に出たい。サクラならば大きな個体に違いない。

 掛けてから3分以上経過しただろうか。徐々に魚の姿が確認できるようになった。ニゴイの背掛けと思っていた魚は、実は大きなサクラマスだった。それも太い。小さな当たりだったので針掛かりが不安だったが、ベリーのフックがガッチリと蝶番に掛かっていた。恐らく外れることはない。長期戦を覚悟し、無理をせずにサクラが疲れて浮き上がるのを待つことにした。大きな個体であったので、むやみに水面には出ることはなかったため、水面での危険なローリーリングやジャンプを避けることができた。傾いたテトラに立っているため、移動することさえできない。静かに魚を誘導しネットに入れるしかない。チェリーネットを用意してランディングの準備をし、覚悟を決める。

 リーダーが目に入ってきた。サクラは徐々に横になりながら、白銀の魚体を水面に横たえ無抵抗になった。本当に大きかった。体高のある魚体は眩しく、思わず足が震えてしまった。ここで慌ててはいけない。刺激を与えずゆっくりとネットに誘導するが、最初はアプローチが悪く断念。再度体制を整え、魚を上流側に誘導したのち、流れに乗せるようにロッドを送りこみ、テールから一気にランディング。入った!獲った!でかい!久し振りの大型に心臓の鼓動が高鳴る。無意識に拳を突き上げていた。興奮を抑えきれなかったのだ。




■ 雄 65cm

 何本もの大型を獲ってきたが、これほどのプロポーションの素晴らしい魚は無かった。よく見ると顔つきが違っており、鼻が少し曲がっている雄の個体であった。フレッシュではなかったが、白銀の美しい魚体。今回の増水で水道局を遡上し、この比較的シャローのこの開きで小休止していた個体と思われる。

 今回私の地元、豊川市から知り合いのアングラーが九頭龍に来ていることを聞いていたので、連絡を取り写真を撮ってもらうことにした。彼もこの日下流域で、サクラマスを獲っていて、まずはお互いの釣果を報告しあったのち撮影をしてもらった。カメラが趣味ということで迫力のある素晴らしい写真を撮ってもらうことができた。


■ これからの九頭龍川

 本格遡上を迎える九頭龍川。遅れ気味の遡上も、今回の水で上流部からの釣果も聞かれるようになってきた。いよいよ2013年の櫻鱒も遡上のピークを迎えることとなる。下流はもちろんのこと、中流や上流にも魚が入り、釣り師がそれぞれのアプローチで思い思いのフィッシングプランを展開できるようになるだろう。寒さの厳しかったウインターシーズンから、いよいよ活性の高まるハイシーズンになっていく。瀬に着く魚が増え、スリリングなプラッギングゲームが楽しめる最高のシーズンがやってくる。

 このハイシーズンを迎える九頭龍川で、最高のターゲット サクラマスに挑戦してみてはいかがでしょか。チェリーブラッドとともに。


● マイタックル

◇ロッド  スミス インターボロン IBXX−83MSD 77MSD TRBX−C84
◇リール  シマノ ステラ 4000 カルカッタコンクエスト200
◇ルアー  スミス チェリーブラッド DEEP90 MD90S MD90 MD82 MD83S ピュア18g バッハスペシャル18g他
◇ライン  ヨツアミ PE G-soul WX8 1号
◇リーダー リーダー バリバス ショックリーダー 20LB
◇ネット  スミス チェリーネット



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