冨安 隆徳

愛知県豊川市在住。ルアーで四季折々の魚を求め釣り歩く、アウトドアが大好きなサラリーマン。

主なターゲットは、九頭龍川の桜鱒、天竜川水系遠山川のアマゴ・イワナ等。


《 2019 遠州灘釣行記 その5 》


【空飛ぶヒラメ】

 ヒラメが空飛んでいる姿を見たことありますか?
正確には水面から全身をさらして飛びだし、ベイトを捕食している様を表しているのだが、あれほど激しく、かつ多くのヒラメを見るのは今回が初めてだった。
「渥美の海は凄いな〜!」
地元の方々に話かけると
「こんなことは滅多にない!」
とは言うものの、豊かな渥美の海を垣間見ることができた。
そこで年も押し迫った週末にマイワシの接岸に湧く、豊穣な渥美の海の釣行をレポートすることにした。


【浮気は裏目に】

 12月最期の週末は、渥美半島中央部に鰆を求めて大きくポイントチェンジした。通い詰めていた先端地区のサーフの状況がここ数日芳しくなかったためだ。半島中央部の漁港周辺では鰆が回っているようなので、そろそろサーフにも回遊してもいいはずだ。そう考え最寄りのサーフに入ったのだが、その期待は見事に裏切られた。青物が回遊し易い水深の有るサーフを選択したが、その日に限って隣の激浅のサーフ回遊したようだ。イワシを追って浅瀬に入ってしまったようで、ここでも回遊魚狙いの難しさを痛感させられた。
仕方なく日が上がり切った後は、これまで通い詰めたいつもの先端部のサーフに車を走らせた。現地に到着したのは9時過ぎ。正月休みに入り遠征組が目立つ今日の先端部だったが、何故かこの時刻にしては車が多い。手早く準備を整え浜に入ると、釣り人の多くが魚を持っている。アブ(ワカシ)からワラサ、ブリ、ヒラメに加え、なんと90cm近いサワラまでが浜に横たわっているではないか。
「エ〜!なんだよ〜!」
ポイントを変えたことが見事に裏目になってしまった。ここではマイワシの群れが接岸し、朝はお祭り騒ぎだったようだ。お祭りは長く続いたようで、多い人はヒラメ、ブリ、鰆の3種を数匹ストリンガーに掛けていた。
「ついてないな〜。」
心でそう思いながらもここでは平静を装い、ブローショットボロンサーフェッサー BSB-103SFでワンドの居残りを探しながら東の岩礁帯に向って釣り歩いて行った。


【空飛ぶヒラメ】

 諦め気味に砂浜を歩き回って魚の気配を伺っていると、岩場の前の小さなワンドに人だかりができていた。
「もしや?」
急いでワンドに向かうと地元の知り合いが私に向って手招きしている。彼等のところにも魚が回ったようで、周囲には複数の魚が転がっていた。ただ彼らは未だに夢中になってワンドに向ってルアーをキャストしている。水面をよく見るとベイトが黒くなってワンドに迷い込んでいた。何かが激しく追い上げているようで、どうせマダカ(シーバス)だろう?としばらく眺めていると、ボイルしていたのは50cm以上ある大型のヒラメであった。
「オッ! ヒラメ 空飛ぶんだ!」
思わず叫んでしまった。あれほどまでに彼らのスイッチを入れさせたベイトはなんだろう?と気になった。しばらくすると彼らのミノーに丸々と太ったマイワシが掛かってきた。15cmほどのマイワシだ。これなら反応はいいはずである。先ほどのサーフの好釣果も納得できた。普段なら青物に追われたマイワシはしばらくすると岸から離れてしまうことが多いが、このサーフのワンドでは岩礁帯に行く手を阻まれしばしばこのような状況になる。ベイトはワンドを回り続け、ボイルは長く続き、今は岩場付近の大型ヒラメが狂喜乱舞している。



【プラッガーの意地】

しかしこれほどまでにスイッチが入ったヒラメだったがルアーへの反応は今一つで、手を変え、品を変えて攻め続ける仲間のミノーにはなかなか喰ってこない。ほぼ全員が青物狙いのために流行りのワームではなく、ミノーで攻めていたこともあったのかもしれない。いずれにしてもあまりの反応の無さに彼らも痺れを切らしたようで、高活性の釣り場を後から来た私に譲ってくれた。
私も彼等同様、大物狙いのプラッガーである。普段ヒラメなどの砂物を狙うことはないが、あれほどのボイルを見せられると流石に我慢ができなくなった。折角のご厚意なのでミノーで結果を出してやろう!そう思いながらキャストを開始した。
当然ヒラメ用のサラナMD110Sはボックスにあるはずもなく、先ずは定番のサナラ125Fチャートオレンジで中層を探ってみた。多くのミノーがポイントに撃ち込まれても、ヒラメたちは御構い無しに数分ごとにジャンプを繰り返し、完全にマイワシに狂っている。私のサラナは全く無視されてしまっていた。そこで次にアクションとシルエットを大きく変え、ハルカ145Fのトウゴロウカラーで表層付近の反応を見ていくことにした。


【やっと喰わせた!】

しばらく沈黙が続いたのち、波打ち際でハルカがいい流れを捉えた。その小さなリップでも感じられる引き抵抗の中でリトリーブを止めてステイさせ、微振動でヒラメに誘いをかけると、抑え込むような感触が手に伝わった。すぐに竿先が入り、次に竿全体がしなやかに曲がり、何とも言えない重量感がグリップに伝わってきた。
「喰った!喰わせたぞ!」
手前のかけあがりでステイさせたハルカにまんまとヒラメが喰ってきた。サーフェッサーのしなやかな穂先で引き波を受けとめながら、打ち上げる波に乗せてそのままロッドを後ろに寝かせて後ずさりして浜に引き上げランディング。
「でかい!やった自己最高記録だ!」
砂浜に打ち上げられたのは50cm遥かに超える大型のヒラメ。急いで魚に駆け寄り、尻尾を掴んで波にさらわれないように浜の高い所に放り投げた。喰ってきたのは獰猛な顔をした63cmのヒラメ。



「何で喰わせたの!」
何を投げても喰わなかったヒラメを後から来た私が掛けたことに、慌てたようでこんな声をかけてきた。先程まで諦めて眺めていた釣り人たちも、時合が来たのかと急にロッドを手にしたようだが後が続かなかった。その後しばらくは反応の無い時間が続いたが、仲間が執念で肉厚のヒラメをもう一尾追加したところで、マイワシがワンドを離れてしまったために午前の時合いは終了となった。


【捨てる神あれば拾う神あり】

 朝のお祭を外してしまったのは残念であったが、空飛ぶヒラメに出会えたうえに、家族からリクエストのあったヒラメを正月用に確保できたことは何よりであった。
「捨てる神あれば拾う神あり。」
こんなこともあるんだな。2週続けて日中にいい魚に出会わせてくれた渥美の海と仲間に感謝!


【これからの遠州灘、伊良湖岬】

 このレポートがお届けできるころには2020年になっているだろう。水温、気温とも未だに高いために海は未だ晩秋から初冬の状況であり、青物はそれなりに釣れ続いている。徐々にベイトや青物の回遊も一部のエリアに集中する傾向は見え始めてきたものの、まだまだ今後も釣れ続く気配が無くはない。年末には巨大なオオニベの釣果も報告され、夢と出会えるフィールドになりつつあるのは喜ばしい限りである。このところ好調を聞きつけたのか?名古屋だけでなく、信州や関東方面の車も近頃目にすることも多くなり、この遠州灘も徐々にメジャーになりつつあるように感じられた。今季未だにサーフに姿を見せないマダカ(シーバス)の群れの動向も含め、まだまだ目が離せないのが今季の遠州灘である。さてこの状況、いつまで続くのだろうか?


● マイタックル

◇ロッド スミス ブローショットボロン サ−フェッサー BSB103SF
ショアジガー SJS100/60 100/80
ブローショットロングキャリー BS-LC100
◇リール シマノ ツインパワーSW 4000XG 6000HG
◇ルアー スミス ハルカ 145F・S  サラナ147MAX  ドラゴンサラナ  A-CUP
飛烏賊HF  サーディンランSS・F  ベイブル90HS  ハイパーブレード 
メタルフォーカス 28g 40g 60g 
◇ライン ヨツアミ G-soul SUPER JIGMAN X4 1.2号 1.5号 2.0号
         G-soul WX-8  1.2・1.5号
◇ショックリーダー バリバス ナイロン 40・30・35・40lb
◇スナップ     クロスロックスナップ ♯3



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