冨安 隆徳

愛知県豊川市在住。ルアーで四季折々の魚を求め釣り歩く、アウトドアが大好きなサラリーマン。

主なターゲットは、九頭龍川の桜鱒、天竜川水系遠山川のアマゴ・イワナ等。


《 2019 遠州灘釣行記 その4 》


【2019のソルトシーズンを振り返り】

 これほどまでに青物が釣れる年はこれまで記憶がなかった。夏は久しぶりメッキが久しぶりに姿をみせてくれた。サーフでは45cmクラスのカンパチ(ショゴ)やツバス(アブ)が飽きない程度に釣れ続き、台風で水をさされることも多かったが、遠州灘サーフは秋まで好調に推移していた。
 11月に入っても中型までの青物は釣れつづいたが、肝心の大型はなかなか回ってこなかった。高水温が続き、海の中はなかなか秋から冬に季節は進まなかったようである。


【サーフにシフト】

 12月ともなると日の出は7時近くまで遅くなる。青物は夜明けから1時間程がいいと思っているのだが、この時刻では出勤前の朝活で伊良湖岬の先端でのトップゲームは大変厳しくなってくる。そのため12月中旬以降はいよいよ次なるターゲットに軸足を移すことになる。
 サーフにおける次のターゲットはプラッギングによるメーターオーバーの鰆である。幸い何とか今季の初物の鰆を獲ることができたが、小ぶりの個体ゆえに脂の乗りもいま一つ。美味しいけれどもお上品なお味であった。やはりこの時期は脂ののったメーターオーバーのトロ鰆が獲りたい。そこでベイトの接岸情報に注意し、鰆と鰤の2種のみを追い続けるサーフゲームを12月中旬から続けていた。
 流石に12月に入ると冬型の気圧配置の日も多くなり、北西の風とともに少しずつ大型魚がサーフに姿を見せ始めたが、相手は気まぐれな青物。なかなか好調は長続きせず、お祭りに参加できない日々が続いた。


【鰆はどこに】

 12月中旬を過ぎても鰆の群れの回遊ルートが絞り切れず、その情報を聞きつけては東へ西へと遠州灘を走りまわったが、季節が進むにつれていつもの動きを見せ始めた。12月第3週目の週末。散発的な釣果に未だエリアを絞りこむことができない私は、例年好調だった渥美半島中央部のサーフに出掛けることにした。
 このエリアには外洋に突き出した漁港があり、ここでは秋の初めから鰆が上がっていると聞いていた。近ごろこの魚がサーフを回り始めた気配があり、この日の朝は漁港近くのサーフに入ることにした。しかしこの日は大潮あとの中潮で潮位が低く、シャローに入るのを嫌った青物たちが接岸することはなかった。ならば潮待ちでもするかと海を一望できる高台で上げ潮が効くまでこのサーフで待ち続けたが、残念ながらここでは何の変化も起きなかった。
 潮位の高くなる夕方の満潮前後に入り直そうとポイントを先端地区に移し、近頃好調な磯に隣接するサーフエリアに移動した。


【磯に隣接するサーフ】

 このサーフは東側に地磯があり、沖から入ってくるベイトは磯に行き先を阻まれ、サーフのワンドに溜まることでしばしば大爆釣が起きるポイントである。近頃好調のようなのでまずはこのポイントの状況を確認しようとやってきた。駐車場に車を止め、準備を始めると浜から突然大きな鰤を持った釣り人がやってきた。
「大きいですね。」
と思い声をかけると、
「たった今沖からイワシの群れが接岸し、周囲はお祭り騒ぎになっている。」
と早く釣り場に入ることを勧めるので促されるように浜に向った。
「正面左がいいですよー!」
彼は親切にポイントまでレクチャーしてくれた。大型を獲った釣り人は余裕があるな!と感じながらもそのご厚意に甘えることにした。
 すでに熱い群れは何処かにいってしまったようで、いつものサーフに戻っていた。鳥もベイトの気配もない浜では、10名程度の釣り人が思い思いのルアーをキャストしていた。平目やシーバスらしき魚が転がってはいたが、たった今釣れた様子はなく、想像していた大爆釣とまでにはなっていなかった。ただ朝からある程度の魚が釣れていた好調なサーフであったことは間違いなさそうだった。恐らく少し前に突然ベイトが接岸し、その一瞬のチャンスを見事に先程の彼が射止めということだろう。ただここは魚の溜まりやすいワンドである。ベイトや大型魚がこの付近を回遊している可能性はある。潮は動いているので何かのきっかけでスイッチが入るか、再びベイトが差してくるかもしれない。そこで多くの釣り人が叩き続けたポイントから距離を置き、礒方面に少し歩いて手つかずのワンドを探り始めた。



【またもドラゴンサラナに】

 まずは表層をハルカ145Sで広範囲に探り、反応が得られなかったので次は中層を狙い始めた。ドラゴンサラナのシルバーピンクをフルキャスト後、少し沈めたのちにリフト&フォールで縦方向に変化を加え魚にアプローチしていった。次にカウントダウンで更に沈め、そこからスローリトリーブで少し沈み気味の魚からの反応を待った。そしてドラゴンサラナに変えてから数投目。手前のブレイクの20m先でいきなりの衝撃とともに、そのまま沖に向って10m以上ラインを出されてしまった。ただ最初の衝撃と魚の重量感やスピードに対し、ラインの出され方が少ないことに違和感を覚え、ハンドドラグで設定を確認してみた。
「少し固いな。締め過ぎだな。」 若干強い目に設定されていたのにその後何度もラインを出され、時には竿先が持って行かれるほどの力強さを感じたために、何か大きな魚が喰ったことをここで改めて実感した。ラインブレイクのリスクを感じ、ここで初めてドラグを緩め、まずは充分走らせてからファイトに持ち込むことにした。


【何が喰ったのか?】

 魚はなんとなく青物系で、大型の鰤かな?と思っていた。喰ったあとで首を振るような動きはないためやはり鰆では無さそうだ。いずれにしても何か大きな魚が喰ったようで、ドラグを少し緩めると次々とラインが引き出されていった。ラインは1.2号のPEでリーダーは40lb。フックはカルティバのST-56の2番の純正使用。掛かり処さえ良ければ伸ばされることはないだろうが、フッキングの状態がわからないので無理はできない。サーフなので無理をしなければ獲れるだろう。そう考えて慎重なファイトを続けた。
 鰤にしては力強く速い引きに、一瞬サメではないかと思った程の目の覚めるような見事な走りであった。ヒット直後から既に30m以上ラインは出されているだろうか?
 時間の経過とともに魚に疲れが見え始め、ここでやっとドラグを締め込み、少しずつ寄せていったただシーバスロッドなのでこれ以上のプレッシャーを掛け続けることはできなかった。5分程度一進一退を繰り返し、ようやく岸際のブレイクまで引き寄せると、魚はこのかけあがりを越えるのを嫌って、今度はこのかけあがりに沿って右に走りはじめた。これには為す術も無く、そのまま波打ち際を引きずられるように魚を追いかけるしかなかった。
 隣の釣り人の前に入らせてもらいながら糸絡みを避け、走りが止まるや直ぐにプレッシャ−を掛けて頭をこちらに向かせた。そして再び手前のかけあがりを切ろうとすると、またも右に走り、遥か遠くに見えていた二人の釣り人の前まで届く勢いであった。
「ごめんねー!ごめんねー!」
と声をかけると私がファイトしていることに気付いたようで、手早くルアーを回収し、私のファイトを見守るような素振りをみせてくれた。
「ありがとう。」
とお礼を言うと
「大きそうですね〜。ガンバってください。」
と励ましてくれた。ありがたかった。お礼の意味で手で合図を送り、さらに右に走る魚を追いかけていった。10分程のやりとりで掛けたところから50m以上も引きずられ、多くのギャラリーの中でファイトすることを余儀なくされた。しかしよく引く魚だった。ショアジギロッドであればここまでてこずることもなかったのかもしれないが、シーバスロッドではやはり止められなかった。ただタックルバランスが良かったのでなんとかここまで凌ぐことができた。


【自己記録魚  101cm】

 ここにきてやっと魚の動きが穏やかになり、疲れがきていることを感じとっていた。此処からはゆっくりと魚の動きを注視しながらゆっくり寄せ入っていく。幸い波も穏やかだ。これに引き波の水圧が加わるようでは厳しかったが、この状態ならばなんとかなる。そこで波の周期を読みながら一気にずり上げ、尾鰭を持ってランディング。



 もし波が高かったならば恐らく一人ではランディングは難しかったかもしれない。好運だった。沖から差してきたベイトを追ってワンドに入った大型が、フィーディングのために小さな群れで回遊していたようだ。 101cm 8.5kg ショアからの自己最高記録の魚であった。

 重さは10kgを越して欲しいところだが、大きさは選べないので贅沢は言っていられない。少しスリムな魚だからこそ、巨鰤の重量感のある引きと鰆のような瞬発力を持ち合わせていたのだろう。波打ち際に打ち上げられた大型の鰤の周りにギャラリーが集まってきた。その中に先程情報をくれた彼も祝福にきてくれ言葉を交わした。
「大きいですね。居ましたね〜。」
「あなたのお陰で獲らせてもらいました。ありがとう。」
見ず知らずの釣り人と釣り場で知り合いになり、お互いの健闘を讃え合い交流が始まる。情報だけでなく画像にまで納めて貰い、随分お世話になってしまった。釣りの楽しさや悦びは魚との出会いだけではない。そう感じさせてくれる瞬間であった。
その後再び小規模なベイトの群れが接岸し、シーバスが一尾、そして先ほどの彼もその脇でロッドを曲げていた。
「やりますね〜。」
「ベイトが」入ってきたね〜。そこでもボイルしてる!」
「横入っていいですか?」
「どうぞどうぞ!」
青物らしき魚とファイト中の彼の直ぐ横に入らせてもらい、ブレイクの向こうの小さなイワシの群れに向ってボイルしている魚を狙ってキャストをしたが、その後私のロッドは曲がることはなかった。今日2尾めの彼の魚はワラサで、僅か1時間の間に90cmオーバーの80cm弱のワラサを仕留めてしまった。今日のこのワンドの魚種は、青物に加えヒラメやシーバスも混じる混成の群れだったようだが、このワンドの破壊力を改めて見せつけられた。これが磯に隣接するサーフのワンドの凄さなのだろう。貴重な体験をすることができた。


【これからの遠州灘、伊良湖岬】

 いよいよ年末が迫ってきたが、今季の遠州灘はこれからピークを迎えそうな勢いである。朝の気温も一桁になることは殆どなく、深場に落ちる前に荒食いするはずのシーバスは、青物の勢いに負けてほとんど姿が見られない。青物が先に喰ってしまうのか?それとも遅れているのか?結論は2020年に持ち越しになりそうだ。


● マイタックル

◇ロッド スミス ブローショットボロン サーフェッサー BSB103SF
ショアジガー SJS100/60 100/80
ブローショットロングキャリー BS-LC100
◇リール シマノ ツインパワーSW 4000XG 6000HG
◇ルアー スミス ドラゴンサラナ  A-CUP 
飛烏賊HF  サーディンランSS・F 
ハルカ 145F・S  サラナ147MAX 
ベイブル90HS  ハイパーブレード 
メタルフォーカス 28g 40g 60g 
◇ライン ヨツアミ G-soul SUPER JIGMAN X4 1.2号 1.5号 2.0号
          G-soul WX-8  1.2・1.5号
◇ショックリーダー バリバス ナイロン 40・30・35・40lb
◇スナップ     クロスロックスナップ ♯3



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