冨安 隆徳

愛知県豊川市在住。ルアーで四季折々の魚を求め釣り歩く、アウトドアが大好きなサラリーマン。

主なターゲットは、九頭龍川の桜鱒、天竜川水系遠山川のアマゴ・イワナ等。


《 2017 遠州灘釣行記 その2 》


【ベイトの帯】

 今朝も先日サワラを獲った浜に入ることにした。ベイトが残ってくれれば青物のチャンスがあるはずだ。日の出直前に浜に入り、薄暗いうちはハルカ145Sで遠投しながら広く探っていった。今日も波打ち際に広範囲にびっしりとベイトの帯が広がっているが、薄暗いため鳥が激しく飛び交うほどではない。釣り人の集中もなく自分の釣りができるのがなによりいい。これなら大型の回遊魚が入ってきても、他の釣り人とのトラブルもないだろう。

 日の出とともにいよいよフィッシュイーターたちが、盛んにイワシを水面まで追いあげ始めた。水面をスキッピングするように逃げ惑うイワシたち。なんとか喰われまいと必死に水面を割って飛び出す小魚に空からは鳥が容赦なく襲い掛かる。そんな賑やかな水面をハルカ145Sのアカキンで切り裂いていく。しばらくするとヒラメ、シーバスが釣り上げられていく。これにブリやサワラが加われば申し分ないのだが・・・。
 連日この浜に入っているが、漁師の船が少ないことに気が付いた。10月頃はルアーの射程距離にまで岸に寄り、底引き網をする船が多かったが今は見られない。これもベイトがいつまでも岸際に居続けられ要因だろう。そんなことを考えながら釣りをしていると、薄暗かった浜に日が差し、いよいよ青物のプライムタイムを迎えた。


【タックル】

 ロッドは今回もショアジガー100/60クラス。ショアジギタックルだが、スミスのロッドは比較的しなやかなものが多く、このモデルならばプラッギングも難なくこなすことができる。ハルカのキャスティングであればシーバスロッドのロングキャリーが最適だが、メタルジグやヘビーウェイトのプラグのフルキャストはやはりパワーがある専用タックルが望ましい。私はランディング時に周囲の釣り人とのトラブルを避けるためにも、少し張りがあるこのモデルを使っている。リールはツインパワーSW6000番。万全のタックルで青物の回遊を待ちながらキャストを続けた。


【ボイルが続く浜】

日が昇り切り、小魚を突き上げるフィッシュイーターたちの行動はますます激しくなってきた。しかし鳥たちは遥か沖に移動し、岸寄りを飛ぶことはなかった。青物が寄ったとしても小さな群れだろうな。そうなると広範囲に攻め続けるしかない。そこでハルカ145S、マグナムサージャー、サーディンラン13F、ドラゴンサラナ、メタルフォーカスで一通り表層からボトムまでを広範囲に攻めたが、沖のブレイクの向うにも青物やベイトの気配はなかった。その一方で波打ち際には無数のベイトとそれを追う中型のフィッシュイーター。いくら意思の強い釣り人であっても、目の前で繰り広げられる激しいボイルに冷静でいられるはずもなく、ついつい回収の途中で無意識にイワシの帯でステイさせたり、ゆっくり引いてみたりと無意識にバイトを誘っていた。ただベイトやボイルの状況に対し、本当にバイトが遠かった。何か違うのだろう。どのパターンがいいのか?そう考え始めるといつの間にかターゲットが青物から波打ち際のフィシュイーター変わっていった。

 ハマチクラスの青物であればこの状況ならば躊躇なくルアーに喰ってくるだろう。この渋さは恐らく他の魚である。サゴシやシーバスか?シーバスならば大型を含め、波打ち際のブレイク沿いに回遊し、小魚を待ち構えていることが多い。そのためピックアップまで気を抜けない。ルアーサイズはベイトに合わせるのが基本だが、今回持ち合わせていないのでハルカ145Sのアカキンで代用した。今日の状況であればロングキャストの必要はなく、イワシの帯の向うにキャストし、波打ち際までを手返しよく探るのがいい。ベイトの動きが早いため、ついついルアーを動かし過ぎてしまうのだが、ここでは敢えてゆっくりルアーを見せることに徹した。ただ引きで漂うように引き、ベイトの帯の周りでステイさせ誘った。そして反応がなければ最後に波打ち際の引き波をリップで掴み、ステイや送り込みで足元のブレイクに潜んでいるシーバスにアプローチしていく。


【ハルカ145S】

 ベイトの帯の中にハルカ145Sアカキンを漂わせ、ゴツゴツ当たってくるマイワシを感じながら、攻め続けたが少し沖目ではシーバスからのコンタクトはなかった。そこで波打ち際でリトリーブをやめ、引き波の中でバタバタと泳がせていると、ブレイクから何かがハルカを襲った。激しい当たりではなかったのでロッドで優しく聞き合わせを入れ、しっかりウエイトが乗ってからフックング。中型のシーバスだった。波にまかれては厄介なので、一旦ドラグを緩めて沖に走らせ、再度追い合わせを入れてからランディングしていく。波を切ってからゆっくり寄せてランディングするとお腹に卵を抱いた65cmの平均的なシーバス。もうこれで満足だ。ボイルに対する興味は若干薄れ、再び鰤、サワラ狙いを再開したが、その後何の変化も起こらず浜を後にした。



【釣れる魚を釣る。】

 翌日も早朝から同じ浜に入った。昨日は全く青物の気配は感じられなかった。周りでも釣れている様子が無いことから、今日は少しライトなタックルで今一つ喰いが渋かったシーバスとのゲームを楽しむことにした。ロッドはブローショットロングキャリーLC-100。ルアーはベイトに合わせてサラナ125Fを持ち込んだ。
 この日まで大型青物のみを狙って釣りを続けてきたが、そもそも魚が回遊してこなければこの釣りは成立しない。頑なにターゲットを追い続けることもいいが、その日の状況にアジャストすることも大切だ。
 以前先輩からの教えの中にこんな言葉があった。「釣れる魚を釣れ。」今釣れている魚や旬の魚をまずは釣りなさい。という意味なのだが私は、「拘り過ぎることなく柔軟に釣りを楽しみなさい。」と解釈し自分への戒めにしている。
 この教えは「釣り人は魚を釣ることで精神的に充足し、視野も広がり、釣りに余裕が生まれる。この好循環こそが狙いのターゲットや大物への近道となる。」という考え方だ。思うような結果が残せず、思い詰めた状況でこの教えを実践することは難しいことだ。しかし歳を取ったこともあり、近頃は頑なに本命を追い求めることもなくなり、四季折々のターゲットや餌釣りなどをするようになった。またそこから教えられことも多いと感じている。
 話しは少し逸れてしまったが、この思いになったのは、先日のサワラを獲って気持ちが落ち着いたことが大きい。さらにあのボイルの中で自分のルアーに反応させられなかった悔しさもあった。大型の青物も回っていないようなので、今日はサラナ125Fを持ち込んで、「釣れる魚を釣る。」ことにした。


【恐るべし! サラナ125F】

 しかし実際に浜に入ると元来の大物釣り師の血が、いきなりサラナ125Fをキャストすることを許さず、まずはハルカ145Sのトウゴロウカラーで青物のご機嫌を伺った。やはり反応はない。ただこの行動にはもう一つの意味があった。同じ条件下でこの2つのルアーをキャストすることで魚からの反応の違いを浮き彫りにする必要があった。
 ベイトの情況は昨日と変わっておらず、種類、量とも昨日と同じ。ハルカ145Sで沖のブレイク、ベイトの帯の周りでリトリーブからのポーズ、ストップアンドゴーなど変化をつけて引いたのだが反応はない。そこでいよいよサラナ125Fのイワシカラーをキャスト。飛距離重視のハルカに及ばないものの、今日の状況であれば十分であった。なによりキビキビ動くローリング主体のアクションは秀逸で、引き心地も気持ちよい。水カミのいいリップはゆっくり引いてもしっかり動き、少し深いレンジを泳ぐためハルカとの使い分けも可能だ。
 キャストを始めて間もなく、ただ引きでいきなりのヒット。「サラナ恐るべし!」である。サイズなのか?レンジなのか?間違いなくサラナへの反応は違っていた。僅かな流れでもしっかり水を掴み、アングラーにその手ごたえを伝えてくれるこのルアーは、その泳ぎでセレクティブなシーバスの口をいとも簡単に使わせた。大きさはそれほどでなかったが、バラしたくないので慎重に寄せてランディング。動きが早いベイトとは真逆の、ゆっくりと引いてからのステイとその動き出しに溜まらずバイトしてきた。思った通りだった。


【波打ち際を専用タックルで】

 次に波打ち際を攻めた。昨日もここでシーバスを掛けたが、この荒れた水流の中ではサラナの少し立ち気味の大きなリップがいい仕事をしてくれる。手前のベイトの帯を通過させ、群れからはぐれた弱ったイワシをイメージし、立ち気味のリップで引き波をしっかり掴ませてアクションさせた。飛び出さないようにロッドを送り込み、その後ステイをさせると、吸い込むような小さなあたりがあった。強く合わせるとスッポ抜けそうだったので、ゆっくりロッドで聞いてみた。ティップに僅かな重みを感じたので、すぐさまロッドを立てて魚を掛けていく。ベイトを追って岸際のブレイクに入っていた良型シーバス。これも狙い通りだった。


 この僅かな当たりを感じられは専用設計のシーバスタックルだからだろう。少し張りのあるショアジガーならばバイトが取れなかっただろう。専用設計のいいタックルは釣り人をアシストしてくれるのである。思い通りのゲームができて、久しぶりのシーバスゲームを満喫した。
 ベイトが居るのに喰いの渋いこの情況の中で、シーバスを連発する私に隣の釣り人が声をかけてきた。「ルアーは何ですか?」 私が「スミスのサラナ125F」と答えると彼はボックスの中から同様のスリムミノーを取りだしキャストを始めた。「ルアーだけじゃないんだけどな〜。」と思ったものの、少し優越感に浸りながらしばらくこの釣りを楽しんだ。たまにはこういった楽しい釣りもいいものだ。そんな楽しい朝の釣りを満喫し、明日からの大型青物に向け、自分の釣りのリズムを高めていった。


【明日は本気タックルで】

 暫く鰤に引きを味わうことができない日々が続き、他魚に浮気をしてしまったが、魚とのファイトで、少しずつソルトの釣りの感覚が高まってきていることを感じ始めていた。やはり何事も事前の準備とウォーミングアップが大切だ。戦略により打ち出された戦術に加え万全の準備。これなくしていい結果は望めないだろう。「運」を否定する気はないが、「運」を引き寄せるにはやはり日々の努力と心構えが必要だ。「運」だけの釣りは再現性に乏しく、なにより長続きしないのである。ウォーミングアップは今日までだ。明日からは本気のタックルで勝負しよう。そう思いながら明日の朝活の準備を済ませ、早い床に就いた。


● マイタックル

◇ロッド スミス ショアジガー SJS100/60 SJS100/80
ブローショットロングキャリー BS-LC100
◇リール シマノ ツインパワー4000XG SW6000H ステラ4000XG
◇ルアー スミス  ハルカ 145S/F サラナ125F 147MAX  ドラゴンサラナ
  サーディンランSS/F  マグナムサージャー 飛烏賊HF  A-CUP  ベイビーランブオー
  アンダーバード1号  ベイブル90HS ハイパーブレード  バスタージャーク120S
  メタルフォーカス 28g 40g 60g 80g 
◇ライン ヨツアミ G-soul SUPER JIGMAN X8 1.5号
G-soul SUPER JIGMAN X4 1.2号
 G-soul WX-8 1.2号
◇ショックリーダー バリバス ナイロン 40/35/50lb
◇ランディングツール スミス スミスグリップ2700



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