古谷 英一

スミスフィールドスタッフ



《 河川バチ抜けは送り込みで炸裂! 》


春のシーバスゲームと言えば、稚アユやバチ抜けなど、偏食パターンが多くなる。産卵後のシーズンだけに、荒食いするシーバスも多いが、より効率良くお腹を満たせるベイトが、特に好まれる傾向が強い。
私の住む鹿児島では、例年であれば1月後半にはアフターのシーバスが各河川へ戻ってくる。その時期に重なるのが、春の一大イベントとなる「バチ抜け」。まだまだ水温が低く、河川内もベイトが少ないので、このバチがポツポツ抜け出すと、それを狙う魚達も河川へと侵入を開始する。
このポツポツと抜けるバチは、意外と知られていないのが事実。バチ抜けと言えば、満月の大潮の満潮に起こるゴカイの産卵行動ではあるが、実際にはこれが全てではない。
私がよく通うフィールド、錦江湾内、特に湾奥河川では、比較的長い期間でこのバチ抜けが起こる。ただ、やはり抜け方には多い少ないのムラはある。ハイシーズンのバチ抜けともなれば、至る所で流れるバチが見られるが、それ以外では流れている姿を時折見掛ける程度。いや、流れている姿を見る事はなくとも、弱ったゴカイが川底に居たりする。
要するに、気が付かないだけで、バチは活動を行っているのだ。そして、シーバス達もその密かな活動に敏感に反応し、集まってくる。ピークに向かって、どんどんと河川内へ入ってくる。


そんなバチシーバスを狙い、今年も1月頭より湾奥河川へ通う。この1月中は、シーズンによってはプリスポーンのシーバスが残っている事もあり、それにも期待はしていたが、それは叶う事はなかった。ただ、セイゴはコンスタントに釣れる。
しかし、釣れなくともバチの姿を探す為に、フィールドへ通う事はやめられない。寒さのあまり人はほとんど居ないが、バチの動きを把握する為には欠かせない事。そして、よりバチを見つけやすい様に、日々ウェーディング。流芯脇をメインにライトを照らし、時には水中の石をひっくり返してゴカイを探す。
そして2月上旬、バチ発見!このゴカイ発見から、バチパターンにハマリだす。港湾部のそれとは少し違う、河川のバチパターンでヒットしだす。


ただ、釣っても釣ってもセイゴばかり。サイズは一向に伸びない。ただ、面白い様にパターンはドンピシャリとはまる。例年であれば、アフターが増える季節であるが、ここは我慢の釣り。
そして2月末にはバチ抜け本格化。そのタイミングと同じにして、フグやエイも河川内に大量に入ってくる。危険&お邪魔虫に悩まされる事になる。流されるバチに頻繁にライズにならないライズが繰り返される。河川のバチ抜け時の一つの特徴でもある。そして、バチの流れる筋に沿ってライズが起きる。流れてくるバチを狙うシーバスの姿が、目に見えるかの様に。



そこへしっかりとルアーをアプローチしてあげれば反応も帰ってくる。バチ抜けパターンとしては、この釣りが最も好きで、流れるバチを演出する事で反応がとにかく違うのだ。
これにアフターシーバスがしっかりと重なってくれれば、こんなに面白い釣りはないのだが・・・。今シーズンは、プリスポーンから全くもってシーバスの行動を見失ってしまい、アフターも掴めないままになってしまった。例年とは大きくシーバスの動きが変わってしまったのか?それとも、今シーズンの行動パターンが変わったのか?原因は不明。バチ抜けシーズンとしては、なかなか厳しいシーズンに。



バチ抜け時のシーバスのパターンとしては、もう多くのメディアでも取り上げられ、シーバスゲームのパターンとしては確立されている。それに対応する為のルアーも、そのニーズに合わせて多く販売されている。
しかし、それが全てのフィールドで通用するか?と言えば、そうでもない気がする。
私が通う錦江湾内の河川の場合、特に地域性からもオーソドックスなバチ抜け攻略のパターンでは通用しにくく、数を釣るためにはそれに合わせた攻略が必要。単に巻くだけでは簡単に食ってくれないのが現実。
この季節、バチ抜けが起こるのが河川内に集中する。大量にバチが抜ければ抜けるほどシーバスはそのバチばかりを偏食する様になる。この偏食が厄介な理由であり、バチの動きをしっかりと考えて狙えば簡単に食ってくれる理由にもなる。
完全なオープンウォーターでの釣りであれば、それほど気にする事はないのだろうが、私の場合は常夜灯のある橋を狙うので、このパターン一つで大きな釣果差が生まれる。
基本、バチ抜けパターンはとにかくスローなリトリーブで、ルアーを派手に動かさないのが定番。そして、水面近くのトレースがメイン。水面で引き波を立てて泳ぎ回るバチが多い時には、これで釣れる事は確か。潮の影響が少ない(流れの緩やか)場所であれば、こんな状況は多々ある。

しかし河川の場合は、確実に流れがある。ましてや、満潮時に抜けるバチは下げ潮と同時にどんどん流される。この流されるというのが、河川のバチ抜けパターンでは重要で、それをきっちりと演出する事でバイト数は格段に伸びる。
ましてや、橋であればシーバスも身を寄せるスポットが多く、そこで待ちかまえていれば口を開けているだけでもバチを捕食できる。追い回したり、競い合って食う必要性がなく、集まっているシーバス全てが安定してお腹を満たせる場所。
そこを攻略するためには、オーソドックスなスローリトリーブはいらない。いや、いくらスローに巻いたつもりでも、流れによって早すぎる移動をしてしまったり、アクションが激しくなったりするので、逆効果になる。特に大潮時の潮位差が大きい時には、潮の流れも早くなりスローはとにかく難しい。橋に対して平行にトレースする事も、さらにそれを難しくしている。
それを解決するために、リトリーブメインの釣りではなく、ルアーを流れに乗せて流す釣りに変えると、驚く反応がえられる。何故なら、バチは河川の流れに逆らって泳ぐほど遊泳力はなく、ただただ流されるのみだから。流れを横切ろうとする事さえほぼないのだ。 あとは、このイメージをしっかりと演出するのと、バチが多く流されているレンジを把握する。単に水面ばかり攻めていては、河川のバチ抜けパターンは攻略できないのも事実。よって、流しつつレンジを探るのも大切。
要するに、「流しつつ沈める」という事。もちろん、水深にもよって沈め方が変わってくるが、私がメインフィールドとしている錦江湾湾奥の河川はどこも浅い。これが、浅いとなかなか難しく、その浅い水深を如何に長くスローに流しつつ沈めるか?が大切になる。単に流しながら沈めても、すぐにボトムで根掛かり・・・もちろん、シーバスが捕食しているエリアも外れてしまう。如何にしてスローに沈めつつ、流れに乗せて流し、かつアクションを出来る限り抑えるかが、課題になる。しかも、明暗の境を出来る限りトレースする。これが全てクリアーできれば、バイトが多発するのがこのバチ抜け時の私の橋攻略パターン。


使用するルアーは、バチ抜けでは定番のシンキングペンシルをメインにシンキングミノー、水面近くに反応が多い時にはトップも使う。レンジを探る事と動かさないのが最優先となるので、主軸はシンキングペンシル。トラウト用ではあるがチェリーブラッドLL70Sが水深の浅い河川では最も扱いやすく、これがメインルアー。加えて、チェリーブラッドSR90SSやウェイビーS65・S85、チェリーブラッドCB70ドリフトやペンを使う。


基本はウェーディングスタイル。これにも理由が。この極寒期、いくら鹿児島とは言え夜は10度を切るし、氷点下になる事も。当然、水温も冷たく、根性のいる釣りに。
しかし、ウェーディングする事で橋に対して角度をつけてのアプローチが可能になる。さらに、流れに乗せて流し込む釣りを、よりやりやすくできる。ショアからでは限界があり、それを補う為のウェーディング。橋から潮上にポジションをとり、ダウンクロスでキャスト。流れの抵抗を受ける程度でロッドティップを下流側へ送り込む、ただこれだけ。
あとは、送り込むスピードを遅らせればルアーが沈む速度も流れの抵抗で遅くなるので、浅い河川でも十分にシンキングペンシルで探る事ができる。この時、出来る限りロッドティップは柔らかい方が、少ない水の抵抗も掴みやすく、ロッドを送り込む感覚も調整しやすい。

それともう一つ、送り込んだ後の対処法も大切。ロッドを送り込むには限界がある。送り込める所まで送り込んだら、その後は再び次の送り込みの準備をしなければならない。この際、ルアーも同時に水面近くまで浮かせ、さらに次の誘いの準備へ。この誘いと誘いの間は、出来る限り素早く行う必要があり、そのため食わせる事は考えない。一気に巻き上げるか、ロッドをジャーク気味に煽って一気に寄せるかで、次の送り込みへ繋げる。
わかりにくいが、ワーミング時のリフト&フォールのイメージだと思ってもらえれば。リフトが素早いあおりでルアーを少しでも潮上側へ移動させ、ロッドティップを下流側へ送り込んでいくのがフォール&食わせの重要な部分。これを、明暗の境目付近をしっかりトレースするために、ダウンクロスでアプローチした際、自分より離れている所では多少リーリングでルアーの移動距離を稼ぐ必要もあるが、誘いの部分でのリトリーブはほぼない。
これがしっかりとできれば、とにかくバイト多発!今年はアフターシーバスの戻りが行方不明なのでフグとセイゴばかりだが、とにかくフォール、送り込みでモソッとバチパターン特有の小さなバイトが現れる。ただ口を開ければ捕食できるバチ抜け時の典型的な特徴で、このバイトを逃さない為にも少し柔らかめでティップが流れの抵抗で入るくらいのロッドを使用し、流れの抵抗を感じながらロッドを送り込んでいく必要がある。


今シーズン、錦江湾湾奥の河川のバチはひとまずは終了に近い。しかし、河川によって多少のズレが生じる。錦江湾全体で見ると、湾奥がまず先に始まり、徐々に各河川へ移るのが例年。
これからは鹿児島市内の各河川でバチ抜けが始まる。そして、それと同時に港湾部のバチ抜けも活発化してくる。バチにも様々な種類がいるので、それぞれで抜ける時期が異なる。抜ける場所や種類でもパターンが変わり、シーズンを追って各地のバチ抜けパターンを攻略するのも面白い。
機会があれば、河川内以外のバチ抜けパターンもご紹介できれば・・・と思っているが、稚アユも始まり、その後は稚ボラ・・・何気に忙しいシーズンとなってくる。まずは、アフターシーバスの動向を探るのが最優先ではあるが。


【使用タックル】

ロッド・・・ソルト用ベイトフィネス7.8ft
リール・・ベイトリール
ライン・・・PEライン0.8号
リーダー・・・フロロカーボン3号
ルアー・・・チェリーブラッドLL70SCB70ペンCB70ドリフトSR90SSウェイビーS65・S85



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