『2/11 千葉県某所釣行』


  池島 竜一(SMITH STAFF)



 水郷エリアにおける震災被害の本格的な復旧工事が本格化した2011年の年末。それまで復旧の遅れを指摘する声もあったようだが、台風などにより大水が出る可能性がある時期を避けての工事着手だったとの事だ。

 私自身は水郷の冬バス釣りが好きでたまらないのだが、復旧工事の妨げにならぬよう考えた末、工事が一段落するまでは現場周辺での岸釣りを自粛することにした。考え方は人それぞれだが自分はそれが一番いいと思ったからだ。

 ではどこに釣りに行こうか?私としては自身の水郷スタイルが通用するフィールドに可能性を見出したいと考えていた。「ポスト水郷」探しの始まりだった。

 その有力候補は早々に絞り込むことが出来た。
 冬場の有効なタクティクスの1つである枯れガマ撃ち。それに適した場所というのは水郷でさえも限られているのだが、千葉県某所には枯れガマが岸沿いの随所に生えているのが航空写真を見ただけでもすぐにわかったからだ。

 しかし千葉県某所はバスの釣り場としてはほとんど聞かない場所である。過去にバスが釣れたという話がいくつかあっても、ホームフィールドとして通っているという人は聞いたことがない。コンスタントに釣れるほどの個体数は生息していないのだろう。ちなみにこの場所、私自身は幼少の頃に父親に連れられてヘラブナや鯉釣りに何度も来た事のある馴染み深い場所だったりする。


 2012年2月5日。勇んで朝から現地にやってきたまでは良かったがまだ湖面が半分凍っていた。ひとまずは航空写真で目星を付けていた場所を一通り周ってみる。

 てっきり泥底の場所ばかりだろうと思っていたが、ところによってはテトラ、敷石、ブロック護岸等が入っており、想像していたよりも期待が持てそうな気がした。さらにこの時期の本命と目している枯れガマの生え方にしても、まさに「冬バスが釣れる生え方」をしている場所が幾つかあった。


 ハイシーズン中にバスが釣れる場所であっても、必ずしも冬バスが釣れる場所とは限らない。冬バスが釣れる場所というのは、風を避けやすい立地条件、水域の閉鎖性等が重要となる。さらに、枯れガマ、テトラ、オダ、ゴロタ、深い垂直護岸、矢板といった有望場所をどれだけ持ち合わせているかも見逃せない。そうした要素から判断すると、千葉県某所は冬バスを狙う上で間違いなく一等地と思えて仕方がなかった。問題は、果たしてどれだけの魚が居るのかどうか、だ。

 これだけ条件が揃っている場所ならばいつバイトが来てもおかしくない。そんな期待感から、夕刻の最後の1投まで気を抜かずに釣り続けた。しかし現実は厳しく、たった1度のバイトも得られぬままこの日を終えた。


 続いて2012年3月3日、前回の釣行で何箇所かの有望場所を見出せたため、期待満々での釣行。午前中は前回に周りきれなかった場所をチェックしに行き、午後からは自らが絞り込んだエリアで真剣にバスを狙った。
 撃っている場所は間違いない、今回はきっと釣れるとの自信があったのだが、結局はこの日も一度のバイトさえ得られずに終わってしまった。

 やはりここには狙って釣れるだけのバスは生息していないのか。確かにこのフィールドでは全くバスアングラーの姿を見掛ける事はなかった。フィッシングプレッシャーが皆無なのはプラス要素に違いないのだが・・・。


 やがて水郷周辺の復旧工事もそのほとんどが完了し、私もそれまで自粛していた釣り場に再び足を運び始めた。もはや「ポスト水郷」の必要性はなくなっていたのだが、二日間を費やしてチェックしたことにより、結果こそ得られなかったものの千葉県某所の狙い場所はかなり絞り込めているという確信はあった。

 バスとの距離は間違いなく縮まってきている気がする、もしかしたらあと一歩で結果は出せるんじゃないか?自分の読みを信じてもう一度だけやってみよう、そう思って一年振りに再チャレンジを決意した。


2月11日 千葉県某所

 朝の9時に現地に到着、一部の岸沿いはまだ凍っていたのでタイミングとしては丁度良かったようだ。

 午前中はこれまでの釣行では探り切れなかったエリアをチェックしに行く。結果、良さそうな場所もあったが、やはり前回までに絞り込んだ場所の方が条件的に上だと判断。昼過ぎからは絞り込んだエリアに点在する枯れガマをテナガホッグのテキサスリグで徹底的に撃ちまくっていくことにした。


 午前中はほぼ無風だったのだが昼から風が強まり、アッという間に爆風となってしまった。喰いの浅い状況を想定し3/16ozのシンカーを使っていたのだが強風下ではまるで歯が立たず、止む無く3/8ozにウェイトを上げた。

 枯れガマの隙間へテナガホッグが吸い込まれていくたびに「バイトが来るのではないか?」と期待するものの、この日も何もないまま時刻はとうとう16時を過ぎてしまった。陽も傾き、完全に終焉ムードである。

 さすがにここまで追い込まれると朝の期待感や自信はすっかり消え失せ、諦めの気分に完全支配されていた。どんなに条件的に良くたってバスがいなければどうしようもない。そんな現実を受け入れるしかないように思えていたが・・・


 そんな中、枯れガマの際にテナガホッグを撃ち込んだところ「グ、グッ」という違和感が伝わってきた。しかしこの日は強風によって枯れガマ自体が揺れており、時折紛らわしい感触があった。また揺れている枯れガマの感触か?とも思ったが、徐々に力強く引き込んでいくそれは忘れかけていた生命感以外の何物でもなかった。

 ハッと我に返ってフッキング、ロッドは大きく弧を描き、獲物がガマの中をダバダバッと激しく暴れ回る。その姿は紛れもないバス!しかもまずまずのグッドサイズだ。強引にガマの中から引きずり出し、最後は下顎をしっかり掴んでハンドランディングした。

 3度目の釣行にしてようやく獲ったそのバスは44cm。思わずその場で思い切り叫びたい衝動に駆られる。

 バスという魚は釣るたびに感動する。けれども今回キャッチした1尾はこれまで味わったことがないほどに感動し、計り知れないほどの嬉しさと達成感をもたらしてくれた。


 この1尾は、自力で考え、探し出し、結果手にした1尾だと自信を持って言いきれる。結果だけを求めるのならもっと安易で手堅い方法もあっただろう。

 情報が氾濫し、それに振り回されてしまう人も少なくないように感じる昨今だからこそ、自力で探し出す魚はますますその価値を高めているように思えてならない。


【使用タックル】

ロッド ツアラー STC-68TX
リール ABU REVO ELITE CB-L
ライン FCスナイパー 14lb.
ルアー テナガホッグ#358(テキサスリグ)
タングステンバレットシンカー3/8oz、シンカーロックM、ストレートフック#1



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